昭和62年版 通信白書

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1 情報化における東京と地方

(1)東京における情報化の進展

 ネットワーク化の進展とコンピュータの情報処理能力の向上によって,コンピュータ処理になじむ定型化された情報は,一括集中処理が可能となった。この一括集中処理は,コスト面での有利さを生み,加えて,大量の情報を集中処理する過程で新たな情報が創出されるといった相乗効果により,東京への情報の集中がより促進されている。
 一方,企業活動において,経営戦略上重要な企画,行政,国際動向等に関する高度な情報も,東京への集中の度合いを高めている。これらの高度な情報は,企業の本社機能,情報の付加価値創出機能等の高度中枢管理機能が集積している東京で創出されるためである。

 ア 高度中枢管理機能の集中
  (本社機能の集中)
 企業の意思決定を行う本社・本店を東京に置いている企業数は,総務庁の「事業所統計」によると,61年7月現在,5万8,633社であり,全国に占める割合は,18.9%である。また,資本金1億円以上の法人企業に限ってみると,7,006社であり,全国の38.5%を占めている。
 東京に本社を置くメリットとしては,59年1月,国土庁が行ったアンケート調査によると,「他社や業界の情報収集に便利である。」と回答た企業が58.7%,また,「行政機関との接触に便利である。」と回答した企業が48.7%とそれぞれ1,2位を占めている(第3-3-1図参照)。
 これは,東京には,政府や他企業の本社機能が集積しているため,面談という直接接触によって,生の情報収集が可能であり,また,この情報収集が企業戦略の策定に当たって,最も重要視されていることを示している。
 (情報サービス業の集中)
 情報サービス業は,一定の情報に付加価値をつけて新たな高度情報を創出するソフトウェア業,情報の処理・提供等を行う業種である。したがって,情報サービス業は,企業等で行われる意思決定をサポートする機能を有している。
 東京における情報サービス業の事業所数は4,700社であり,全国(1万1,174社)、に占める比率は,42.1%である。従事者数をみると,全国(33万5,234人)の50.7%に当たる16万9,933人である。
 また,第二種電気通信事業者の本社所在地別分布では,全国の39.2%にあたる170社が東京に所在している(3-3-2図参照)。
 (東京の国際都市化)
 今日,社会経済活動は世界的規模で展開されており,東京はロンドン,ニューヨークと並ぶ国際的な都市として位置付けられている。同調査によっても,東京に本社を置くメリットとして「国際取引に便利である。」とした企業は,24.3%と高い回答となっている(第3-3-1図参照)。
 東京の国際都市化の進展について,まず,我が国における国際金融面からみると,東京に支店又は駐在員事務所を置いている外資系の銀行及び証券会社は,385社であり,これは全国の86.8%に当たる(第3-3-3図参照)。
 次に,通信メディアごとに東京が全国に占める割合を見ると,外国郵便は,差立数で全国の72.7%,到着数で86.3%を占めている(第3-3-4図参照)。また,国際電話の発信地域別比率は,約6割となっている。
 さらに,海外との人の移動を経由空港の所在地別にみると,出国者は,東京が61.0%,大阪が25.0%,名古屋,福岡がそれぞれ5.0%を占めている。また,入国者数は,東京が72.0%,大阪が18.0%,福岡が4.0%と,出入国ともに東京を経由しての移動が圧倒的である(第3-
3-5図参照)。
 以上のように,東京の国際都市化は,金融,情報交流,人的交流等の種々の局面から顕著であり,他の都市の追随を許さないものがある。

 イ 東京における情報化
 (高度機能の一層の集積が予想される東京)
 東京は,21世紀に向けて,情報,金融,国際機能等の一層の集積が行われると思われる。
 建設省が全国の上場企業に対して行ったアンケート調査によると,これら諸機能が「ますます東京区部へ集中する」と回答した企業は,80.9%に達している(第3-3-6図参照)。逆に,大阪,名古屋あるいは札幌等の地方中枢都市の集積を予想するものは,14.9%にとどまっている。また,「東京区部でなければやりにくい業務」として,「情報収集」を挙げている企業が69.7%,「販売企画・マーケッティング」という一種の情報活動業務も28.8%であり,企業の意思決定を行う際に必要な情報の集中が企業活動を東京に誘引している大きな要因であることが分かる(第3-3-7図参照)。
 さらに,「資金調達」(28.3%)又は「資金運用」(23.6%)という金融活動についても東京は,高い評価を受けており,金融の発達も東京への企業の集中を進める大きな要因であることが分かる。
 (通信基盤整備の必要性)
 以上のように,東京は,国内的な地位の向上にとどまらず,我が国産業社会のグローバル化と国際的地位の向上に伴って,諸活動の枢要な役割を担う,世界の中枢都市として成長しつつある。したがって,今後,東京は,国際・国内情報の受発信と情報の処理・加工・蓄積を行う機能
が,より一層必要となる。これらの機能を集約的に整備するためには,各種の情報通信ネットワークの拠点やコンピュータ等の設備を高度に備え,21世紀の東京の都市活動の基盤を提供する必要があるため,その一環としてテレポート等の構想を推進する必要がある。

(2)地方における情報化の進展
 地方における情報化は,東京に集中する情報の活用という面で進行しているが,その必要性,重要性は今後も変わらないと思われる。加えて,地方独自の情報の創造による地域の基盤の強化が求められていくことになる。

 ア 東京に集中した情報の利活用
 (地域経済活性化のために)
 地域別情報流通センサスにおける総供給情報量の推移を見ると,東京を除いた地方全体の占めるシェアは,50年の83.8%から60年には86.2%へと2.4ポイント上昇している。また,テレビジョン放送の地方における供給情報量のシェアは,同83.9%から3.1ポイント上昇しており,地方における供給情報量の上昇は,放送系の影響によるものである。
 これは,50年から60年にかけ,地方においては,民間放送事業者が13社開局したことにより,供給情報量が上昇したためである。しかしながら,前述のとおり,地方で放送される番組の内容は,依然,東京で制作された番組が多く,情報内容の東京の一点集中現象は否めない。
 また,放送に限らず,各種の情報についても東京に集積されていることから,地方においては,今後とも情報の受信機能の整備等により,東京に集中する情報を取り込み,地域産業の振興など地域経済の活性化に,十分,利活用する必要がある。
 (地方における情報の分有)
 また,危険分散の観点及び東京の都市としての各種機能の制約から東京圏の情報集積機能を補完する役割を地方が分担する必要性がある。したがって,東京圏に集中する情報を可能な限りデータベース化し,地方が分有することで,東京一点集中の持っ通信のぜい弱性を克服することが必要となる。

 イ 地方における独自情報の創造
 地方においては,現在,東京にある機能を単に分有するにとどまらず,東京ではできない機能を他の都市がそれぞれ独自の特性を生かしつつ,分担する必要がある。このためには,高度な情報通信システムを全国に展開することにより,地方が情報の集積機能を持つ必要がある。ま
た,地方の各都市が,東京の情報による一方的な支配下におかれることを防止し,独自の特性を生かして経済面,文化面,研究開発面等で情報発信基地となってゆく必要がある。
 (地方分散が進む国際会議の開催)
 国際会議は,その場で各種の情報が創造されるとともに,内外からの多数の参加者を通して,その情報が世界中に伝えられるため,独自情報の創造という意味で重要である。
 日本における国際会議の開催件数は,52年の251件から61年には514件と,この10年間で2倍以上に増加している。
 開催件数の推移を都市別にみると,52年は,東京が178件と全国の70%以上を占めていたが,61年になると,東京での開催は139件で,全体の30%以下となった(第3-3-8図参照)。これは,依然,全国で第一位ではあるが,相対的地位は低下しており,国際会議の開催の全国分散が進行していることが分かる。これは,地方都市の会議施設の建設が進んだこと,及び地方都市による積極的な誘致によるものと思われる。
 また,61年には,輪島における「漆文化フォーラム」,有田における
「有田国際ファインセラミックシンポジウム」等地域特性を生かした国
際会議も開催され,地域の独自情報の発信に寄与している。
 (研究開発機関の立地)
 産業の各分野で先端技術の利用が進むにつれて,それを生み出す研究開発が重視される。地域における研究開発機能は,地域産業が持つ技術力に差異をもたらすと同時に,地域独自の情報の創造をも可能とする。
 研究所の地域別立地件数を見ると,東京は78件で,全国に占める割合は16.1%であるものの,東京圏(東京,神奈川,埼玉,千葉及び茨城)全体でみた場合,全国の51.5%を占めており,必ずしも地方分散化は,進行していない(第3-3-9図参照)。しかし,建設省の調査による
と,「研究開発」部門を東京に立地する必要性は,5.2%と希薄であり,地方進出が可能な部門となっている。
 したがって,今後,研究機関の積極的な地方への展開,あるいは地方による誘致が期待されている。

 ウ 地方における情報化
 地域の活性化を図るため,各地域独自の特性を生かした新規事業の育成や独創的な研究開発,文化的事業の開催等,情報の創造を基礎とした新しい展開が重要である。
 有益な情報の多くは,抽象的な思考ではなく,人との触れ合いを通じた試行錯誤の過程で創造されることから,情報,人の集積を利用した新規事業育成のための場を,各地域に創出していくことが重要である。また,これを情報通信面からサポートする意味で,地域に高度の情報通信機能を集中的に整備,情報創造の場として人的交流施設の充実を図る必要がある。したがって,この施設で創造された情報が円滑に流通するシステムを作ると同時に,継続的に情報通信コストの低減化を図る必要がある。

第3-3-1図 東京に本社を置くメリット(複数回答)

第3-3-2図 第二種電気通信事業者の本社所在地域別分布(62年9月30日現在)

第3-3-3図 外資系金融機関の地域別分布

第3-3-4図 外国郵便の地域別取扱状況

第3-3-5図 海外旅行者の出入国地点別比率

第3-3-6図 東京への中枢機能の集中傾向

第3-3-7図 東京区部でなけれぱやりにくい業務(複数回答)

第3-3-8図 国際会議の都市別開催件数の推移

第3-3-9図 地域別研究所立地件数

 

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