昭和62年版 通信白書

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3 情報化の地域における効果

 郵政省では,テレトピア構想に基いて各地域で構築された情報通信システムの現状及び地域に与えた効果を把握するため,62年3月と同年6月に「テレトピア構想モデル都市におけるビデオテツクス事業の現状調査」及び「テレトピア指定地域における情報通信システムの運用状況調
査」を行った。本項ではこれらのアンケートの調査結果を基に,テレトピア構想に基づく情報通信システムの導入による地域における効果について分析する。
 (一般家庭へのニュース,娯楽情報の増加)
 ビデオテックスを使用した情報通信システムについては62年6月現在25システムが稼動している。今回の調査で回答のあった14システムの総蓄積画面数は,約5万2,000画面であり,システム規模等の差から各システムの蓄積画面数にはかなりの開きがみられるが,最大6,300画面,最少100画面であり,平均で3,700画面であった。内容別にみると,観光情報(24.7%),娯楽情報(24.3%),買い物・料理等に関する生活情報(24.1%)が多くなっている。
 これに対して,各システムに対する1か月間の画面アクセス回数(案内・検索画面以外の画面に対するアクセス回数)は,約264万回であり、内容別では,娯楽情報(57.9%)に対するアクセスが最も多く,次いで生活情報(11.9%),ニュース(9.3%),地域情報(7.9%)の順である。
 これを1画面当たりの月間アクセス回数でみると,ニュース(220回),娯楽情報(120回)に対する利用頻度が高く,逆に観光情報(15.2回),行政情報(22.9回)については蓄積画面数に比して利用は少ないことが分かる(第3-2-14図参照)。また,各システムの設置場所別の端末数では平均で,街頭用約40端末,家庭用約300端末,企業用約160端末となっており,これらのことから,ビデオテックスによる情報通信システムは,地域の一般家庭に対するニュース,娯楽情報の提供に効果を挙げているといえよう。
 各システムで利用されている生活情報の内容について,1画面当たりアクセス回数をみると,買い物情報(52.4回),料理情報(33.9回)が多くなっており,また,街頭端末で利用が多いのはデパート,スーパーマーケットに設置されたものである。北九州市は,「システムの運用開始直後と,開始1年後を比較すると,娯楽情報の利用が減少し,生活情報の利用が増加した。地域において,次第に役に立つ生活情報のニーズが増えている。」という点を情報化効果として報告しており,今後は主婦の生活情報に対する二ーズの増加も予想される。
 その他,「ビデオテックス端末から公民館を予約できる情報通信システムの運用開始により,子供の公民館利用が増加した」(松江市)という地域もあり,理解しやすい画像情報により,情報通信システムの利用者が子供にも広がっている例もみられる。
 (遠隔地の行政サービスの向上)
 データ通信による情報通信システムは,62年6月末現在22システムが稼動を開始しており,各地域の二ーズに合わせて,様々な情報化効果を挙げている。
 各地域が最も多く情報化の効果として挙げているのが,市役所と遠隔地をデータ通信回線で結び,住民情報や健康・福祉情報などを送ることによる,行政サービスの向上である。「山間地住民の住民票の交付については,従来,市役所まで来庁しなければならなかったが,住民情報オンラインシステムの運用開始により,支所,出張所で即時に交付を受けられるようになった。」(新潟市,静岡市),「健康診断の結果を受診当日に,受診者に通知できるようになった。」(熊本市)などの報告がなされており,情報通信の本来的なメリットの一つである“距離の克服”が地
域において行政サービスの距離的負担の解消という効果となって現れているといえよう。
 また,図書館情報サービスの導入により,「貸本業務の1冊当たり作業時間が従来の20分の1になった。図書データの整理時間が1万5,000時間から100時間になった。」(豊田市),「システムの運用開始後,1日当たりの貸出し冊数が2倍になった。」(呉市)といった,行政事務の効率化に対する効果や,「市況情報システムの導入により,青果の市況情報がオンライン端末から即時に得られるようになり,高い価格の際に出荷することで,高収益をあげている。」(沖縄県)などの情報の効率的な活用による農業の活性化等の効果が各地域から報告されている。
 (地域独自の情報発信機能の強化)
 CATVによる情報通信システムは,62年6月末現在,12施設で運用が開始されている。CATVによるシステムの場合,番組内容としてはテレビジョン放送の再送信が主であるが,各地域とも地域の自主制作番組の放送用に, 2〜3チャンネルを割り当て,タウン情報や行政・広報情報等を提供している。自主制作番組の内容は地域によって様々であるが,一関市のCATVシステムのように,災害時には自主放送チャンネルに防災情報を流せるようなシステムを構築しているところもある。
 各システムの視聴傾向に関する具体的なデータは回答されていないが,利用者の視聴状況について岸和田市の行ったアンケート調査では「見ている番組」として映画などの娯楽情報よりも郷土の歴史やタウン情報が挙げられている点が注目される。CATVは従来,難視聴対策に大きな効果を上げてきたが,それに加えて,地域文化・教育の向上という新しい効果を上げ始めているといえよう。
 (地域情報化施策の課題)
 以上のとおり,ビデオテックスやCATVによるシステムが地域情報・生活情報等の地域文化の向上という面で効果を挙げているのに対し,データ通信によるシステムは,行政における事務の効率化及び住民サービスの向上,地場産業の活性化等に効果を上げているといえよう。
 情報通信システムの運用開始による具体的な効果について全体的にみると,調査対象となった31地域のうち,主としてデータ通信によるシステムを構築している13地域が「行政機能の向上」,「住民の利便性の向上」を挙げており,その他では「コミュニケーションの活性化」,「住民
の情報化に対する理解促進」などが多くなっている(第3-2-15図参照)。
 これに対して,情報通信システムの発達を妨げている原因については,「端末不足」(10地域),「住民への情報通信システムのPR不足」(6地域)等が挙がっている(第3-2-16図参照)。これらはいずれも情報通信システムの発達段階における問題点であるが,その裏側にはソフトの未成熟,利用料金の高さ等の様々な問題があると考えられる。また,「端末不足」については主としてビデオテックスを導入している地域が回答しており,これらの地域の中には,システムの端末不足によって,情報提供収入や広告収入が伸び悩み,そのため,新たな設備投資ができず,端末数も増えないという悪循環に陥っている地域がみられる。
 今後のシステムの改良点については,「ソフトの改良」(13地域),「他地域とのソフトの交換」(9地域)が多く挙げられている。今回の調査においても,同程度の蓄積内容,画面数,端末数であるビデオテックスのシステムについて,1端末当たりのアクセス回数が,地域によって月間約800〜3,300回と大きな差がでており,蓄積情報内容や検索手順等のソフトの良否が,システムの利用頻度に大きな影響を及ぼしていることがうかがえる。ソフトの改良は,システムの発展にとって重要なことであるが,「市長・市議会議員選挙の際に,ビデオテックスにより開票速報を提供したところ,選挙情報だけで,1日1万回以上のアクセスがあった。」(岡山市)という報告もあり,情報化に対する地域のニーズはどこにあるのか,という基本的な点について,利用者の立場から更に検討した上で,システムの改良を図っていくことが必要であろう。

第3-2-14図 ビデオテックスにより提供される情報の利用頻度

第3-2-15図 情報通信システム導入による効果

第3-2-16図 システム導入により効果が上がらない理由

 

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