昭和61年版 通信白書

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1 通信経済の動向

  今日,社会経済及び国民生活において通信の果たす役割が増大し,通信に対するニーズも高度化・多様化している。こうした傾向を反映して,通信量・通信設備は着実に増加し,通信事業及び通信関連事業も大きな変化を遂げつつある。
 (1)通信量の動向
  ア.国内通信の動向
  国内通信の動向は,第1-1-3図のとおりである。
  60年度は,電報通数は減少したものの,ダイヤル通話総通話回数は大幅に増加して,全体として安定した伸びを示した。
  内国郵便物数は,51年度と56年度においては郵便料金値上げによる減少がみられたものの,ほぼ安定的に推移しており,60年度は,対前年度比3.6%増の171億通(個)となった。このうち,小包郵便物の取扱個数は対前年度比7.4%増の1億5千万個となり,昨年度(対前年度比6.0%増)を上回る増加率を示した。
  電気通信のうち,電報通数は52年度を境に微増傾向にあったが,59年度以降再び減少に転じ,60年度は4,066万通となった。ダイヤル通話総通話回数(公衆電話を除く。なお,ファクシミリ等電話以外の利用を含む。)は,52年度は通話料金値上げの影響により減少したものの,その後は順調な伸びを示しており,60年度は対前年度比10.9%増の632億回となった。
  また,電話1加入当たりの年間ダイヤル通話回数をみると,52年度までは若干減少がみられるものの,53年度以降は再び増加傾向を示し,56年度に50年度の水準まで回復し,その後も大幅に伸びている。1加入1日当たりのダイヤル通話回数でも,50年度の2.9回から60年度には3.8回と増加している。これは,社会経済,国民生活において,電話依存度が高まったことと,電話の積滞解消,全国の自動ダイヤル化完成という施設の整備を受けて,日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)が57年度ごろから,電話の増設のみならず,需要の開拓にも一層努めてきたためと考えられる。諸外国と58年度における電話機1日1台当たり通話回数で比較すると,我が国は2.2回であり,米国の5.7回と比べると少ないものの,他の欧米諸国(英国2.1回,イタリア1.9回,カナダ1.3回)と並ぶ高水準に達している(第1-1-4図参照)。
  次に,放送についてみると,60年度におけるテレビジョン放送の1日当たりの総放送時間は,民間テレビジョン放送の多局化が進んだことにより,対前年度比1.6%増の1,933時間となっており,この10年間の推移をみると,22.7%増加している。また,ラジオ放送の1日当たりの総放送時間は,対前年度比9.5%増の1,526時間となっており,この10年間の推移をみると,26.6%増加している。
  新聞発行部数は,主要メディアの中でもこの10年間伸び率が小さく,成熟化したメディアであるといえる。特に57年度以降伸び率が小さく,60年度は対前年度比1.5%増の4,823万部となった。
  このように,電話以外のメディアは近年成長が鈍化しており,このことは,これら主要メディアはほぼ成熟の域に達したことを示している(第1-1-5図参照)。
  イ.国際通信の動向
  (ア)国際通信の動向
  国際通信の動向は,第1-1-6図のとおりである。
  外国郵便についてみると,ほぼ横ばいで推移しており,60年度は外国あての物数が対前年度比0.1%増の1億1,680万通(個),外国来の物数が対前年度比3.7%増の1億2,726万通(個)となった。これを輸送手段別にみると,航空便83.7%,船便16.2%となっている。航空便の占める割合は年々増加しており,利用者のスピード指向が次第に高まっていることが分かる。
  次に,国際電気通信をみると,国際電報取扱数は減少傾向にあり,60年度は対前年度比17.3%減の153万通となった。国際テレックス取扱数は59年度まで増加を続けていたものの,60年度は減少に転じ,対前年度比3.7%減の5,017万度となった。これは,国際データ通信等他の通信手段への移行が進んでいるためである。近年,著しく増加している国際電話取扱数は,対前年度比38.8%増の9,563万度となった。
  国際テレビジョン伝送は,通信衛星を経由してテレビジョン放送番組の素材を提供するものである。59年度からは,米国から一定の期間,終日ニュース等を受信する国際テレビジョン長期サービスも実施されている。国際テレビジョン伝送サービスの伝送時間(59年度以降国際テレビジョン長期サービスを含む。)は著しい増加を示しており,60年度は,対前年度比35.3%増の21万分(1日延べ約10時間)となった。これを送受信別にみると,受信が送信を大幅に上回っており,また,伸び率でみても送信より受信が大きくなっている(第1-1-7図参照)。
  国際放送は,日本放送協会(以下「NHK」という。)がニュース,国情紹介等を短波放送により行っているものである。60年度の放送時間は,1日延べ40時間(地域向け放送が1日延べ23時間,一般向け放送が1日延べ17時間)であった。なお,61年10月からは,カナダのサックビル送信所から北米向けの中継放送が開始されている。
  (イ)国際情報通信交流
  国際化の進展の中で,我が国にとって国際相互理解の必要性はますます高まり,バランスのとれた情報の交流が必要となってきた。
  この観点から60年度の我が国における国際情報通信交流状況をみると,第1-1-8図のとおりである。
  情報流通量においてウェイトの高いパーソナルな通信メディア(外国郵便,国際電気通信)において送信・受信がほぼ均衡しているので,全体でも送信・受信が均衡している。ただし,マス系メディアである国際テレビジョン伝送及び外電については,受信が送信を大きく上回っている。
  また,全体では,時系列でみても,第1-1-9図のとおり,この10年間同様の傾向である。地域別にみても,パーソナルな通信メディアでは,60年度において,外国通常郵便物の差立が,アジア33.1%,北米31.5%,欧州23.7%等,到着がアジア28.4%,北米27.2%,欧州36.1%等であり,また国際電話取扱分数(発着信合計)も,アジア38.6%,北米37.0%,欧州16.7%等とほぼバランスがとれている。他方,マス系メディアについてみると一貫して大幅な情報の入超となっており,かつ,米国からの情報流入が多くなっている(第1-1-10図参照)。
  近年,我が国では,国際的な情報流通の不均衡とそれに基づく諸外国との相互理解の不足が指摘されているが,それは,マス系メディアにおいて量的にも,地域的にも顕著に現れている。マス系メディアを通じた国際情報流通は,その情報が国内のマス・メディアを通じて広く伝達されるので,国際テレビジョン伝送,外電の国民全般に与える影響は極めて大きいものと考えられる。
 (2)通信設備の動向
  ア.国内通信設備
  通信の進展を支える通信設備には,郵便局のほか,電話機・ファクシミリ・データ通信端末等の電気通信端末設備,交換機等の電気通信回線設備や,放送局・陸上移動局等の無線局,有線テレビジョン放送(以下「CATV」という。)施設等がある。
  通信設備数の推移は,第1-1-11図のとおりである。
  このうち,加入電話等契約数は毎年安定的な伸びを示しており,60年度末には,人口100人当たり38.0と高い普及率を示している。また,電話網及びファクシミリ通信網で利用されるファクシミリ端末の設置個数は,50年度の約1万1千個から60年度の約103万個(推計値)と,10年間で約90倍という目覚ましい伸びを示している。
  データ通信システム数は,関連技術の急速な進歩やこれを支える制度面の整備等により,10年間で7倍近い伸びを示している。
  放送局数は,57年度と58年度には著しい増加を示したものの,59年度以降は再び安定的な伸びを示している。
  CATV施設数は,順調な伸びを示しており,60年度末現在4万403施設となっている。中でも許可施設(引込端子数501以上)は,絶対数は少ないものの,10年間で約3.2倍という高い伸び率を示している。
  無線局数は近年著しい伸びを示している。これは,パーソナル無線に代表される個人的利用の急速な進展,MCA無線,タクシー無線等社会経済分野における電波利用の増大等によるものである。
  イ.国際電気通信設備
  代表的な国際電気通信設備である国際通信回線の数の推移は,第1-1-12図のとおりである。国際通信に対する需要の増大により,全回線数は10年間で5.1倍となっている。我が国の国際通信回線は,通信衛星,海底ケーブル,対流圏散乱波及び短波の四つの伝送方式により構成されている。近年では衛星及び海底ケーブルが中心となっており,60年度末現在では両者で97%に達している。
  ウ.設備投資の動向
  (ア)通信関係設備投資の状況
  主な通信事業体である郵便,第一種電気通信事業者,放送事業者の60年度の設備投資総額は,1兆9,075億円であり,対前年度比5.0%減となった。新規参入第一種電気通信事業者が加わったにもかかわらず,減少に転じたのは,全体の約80%を占めるNTTの設備投資額が前年度に比べ約1,400億円(8.2%)減少したことが大きな要因である。
  (設備改善の進む郵便事業)
  郵便事業では,局舎事情の改善を図り,郵便局の増置を行ったほか,郵便物の処理の近代化,効率化の一環として,60年度においても郵便番号自動読取区分機等が増備され,引き続き機械化が推進された。しかしながら,局舎の建設,増・改築等の設備面での改善作業が一巡しつつあることから,設備投資額は対前年度比2.5%減の1,173億円であった。このうち,831億円が自己資金で,342億円が財政投融資(簡易保険資金)からの借入金である。
  (ディジタル化を進めるNTT)
 NTTの設備投資額の推移は,第1-1-13図のとおりである。NTTの設備投資額は52年度から56年度までは増加傾向を示したものの,その後はむしろ減少傾向を示している。これは,電話の積滞解消により,工事内容が基礎設備の拡充から既存設備の維持,改良へと大きく変化してきたこと,建設工事への新技術の導入により,工事単価が下がったことなどによる。
  この結果,減価償却費の設備投資額に占める比率も,50年度の52.9%から60年度には92.6%へと39.7ポイント上昇し,設備投資額の大部分が減価償却費で賄われるに至っている。
  60年度の設備投資額は,対前年度比8.2%減の1兆5,805億円であった。これにより,既存電話網の維持及び非電話系サービス等の提供地域の拡大が図られたほか,電話網のディジタル化推進のため,ディジタル交換機,ディジタル伝送路の建設が行われた。
  また,61年度における設備投資計画額は,1兆6,000億円となっている。
  なお,61年度中に1,500億円程度の追加投資が行われる見込みである。
  (第3太平洋横断ケーブルの建設を進めるKDD)
  国際電信電話株式会社(以下「KDD」という。)では,60年度において,光海底ケーブル方式による第3太平洋横断ケーブル(63年度末完成目途)の陸揚げ用地の取得が行われた。また,60年6月に完成した小山国際通信センターに最新鋭のディジタル電話交換機・テレックス交換機等が設置されたほか,大阪新中央局の建設,中央局交換設備のディジタル化が進められた。その設備投資額は,568億円である。
  なお,61年度の設備投資計画額は,635億円となっている。
  (設備の建設進む新規参入第一種電気通信事業者)
  第二電電(株),日本テレコム(株)及び日本高速通信(株)の地上系3社では,61年度の東名阪地域での開業を目指して,光ファイバケーブル,マイクロウェーブ回線の通信設備,センター局の建設が行われた。
  設備投資額は,3社合計で196億円である。このうち99億円が自己資金で,97億円が借入金である。
  (実用放送衛星の整備を進めるNHK)NHKでは,476億円の設備投資が行われた。これにより,衛星放送設備については,BS-2及びBS-3の製作,打上げ等に関する業務が通信・放送衛星機構への委託により推進された。地上設備については,BS-2a,BS-2bの運用のために,送受信局の補完整備が行われた。
  テレビジョン放送局については,難視聴解消等を目的として13局が開局された。テレビジョン音声多重放送局については,235局が開設された。一方,中波放送局については,外国電波の混信対策として2局が開局された。また,FM放送局については3局が開局された。
  このほか,良質放送を確保するため,放送設備の改善,老朽設備の更新が進められた。
  (開局進む民間放送)
  民間放送では,857億円の設備投資が行われ,新たにテレビジョン単営社1社,FM単営社6社,文字放送単営社4社が開局したことなどにより,テレビジョン放送局194局の開設等が行われた。
 (3)通信事業経営
  電気通信の自由化の中で,通信事業の動向は従来にも増して注目を浴びている。ここでは,通信事業者の数及び経営状況を概観することとする。
  ア.通信事業者
  60年度末における通信事業者数は,第1-1-14表のとおりである。
  第一種電気通信事業者は,NTT,KDDをはじめ,8社となっている。NTT,KDD以外の6社のうち,61年8月に日本テレコム(株)が専用サービスを開始しており,第二電電(株),日本高速通信(株)及び東京通信ネットワーク(株)も順次サービスを開始している。
  特別第二種電気通信事業は,61年9月末現在9社が登録を済ませており,このうち6社が既に事業を開始している。
  また,一般第二種電気通信事業については,61年9月末現在279社が届出を済ませている。これを前年同期と比較すると,約120社の増加となっており,新規参入が目覚ましいことが分かる。一方,放送事業者は、NHK・放送大学学園のほか, 一般放送事業者(民間放送)が前年度より11社増加して140社となっている。民間放送140社の内訳は,ラジオ・テレビジョン兼営社36社,テレビジョン単営社67社,ラジオ単営社33社(中波放送11社,短波放送1社,FM放送21社),文字放送単営社4社である。
  また,CATV事業者のうち,許可施設に係るCATV事業者は,60年度において37事業者(54施設)増加し,60年度末現在,402事業者(550施設)となっている。このほかの届出施設(引込端子数500〜51)及び小規模施設(引込端子数50以下)の39,853施設については,任意団体,地方公共団体等が事業者となっている。なお,CATV施設者から施設の提供を受けて自主放送を行っているCATV事業者は8事業者である。
  有線放送電話事業者は,電話の普及等により年々減少する傾向にあり,60年度末現在,対前年度末比3.8%減の658となった。
  イ.通信事業の経営
  60年度における通信事業者の経営状況は,安定した経済成長を受けて,おおむね安定した動向を示した。ここでは,郵便事業及び主要通信事業者の60年度の経営状況等を概観することとする。
  (ア)郵便事業の経営状況
  郵便事業においては,ニーズに即した新しいサービスの開始や事業経営の効率化に努めた結果,60年度は,収益は対前年度比5.3%増の1兆3,381億円,費用が同6.1%増の1兆3,369億円で,差引き12億円の利益を生じた。これにより累積欠損金は75億円に減少した。
  財務状況をみると,売上高は1兆2,071億円とNTTに次いで大きいものの,売上高経常利益率が0.1%と収益力は低い。また,労働集約性が高い事業の性格によるほか,特定郵便局について借入局舎が多いこと,輸送について外部委託を行っていることなどにより,労働装備率は533万5千円と他の通信事業及び全産業に比べ,低い値となっている(第1-1-15表参照)。
  (イ) NTTの経営状況
  NTTについては,60年度の経常収入は5兆1,341億円,経常支出は4兆8,179億円で,3,161億円の経常利益を生じた。また,当期利益は1,406億円,1株(5万円)当たりの利益は9,014円69銭となった。
  NTTの財務状況をみると,売上高が5.1兆円,総資産が10.9兆円と事業規模は通信事業者の中で最も大きい。また,設備産業という性格から,労働装備率も2,999万1千円と他の通信事業者と比較して最も高くなっている。しかしながら,売上高経常利益率,総資本経常利益率,総資本回転率はそれぞれ6.2%,2.9%,0.47回となっており,通信事業者の中では小さくなっている。
  NTTの財務状況を,同じ設備産業であり,公益事業である東京電力と比較すると,総資産・売上高・従業員数という企業規模では,NTTはやや東京電力を上回っている。しかしながら,経営効率についてみると,総資本回転率では,東京電力と並んでいるものの,売上高経常利益率,総資本経常利益率では東京電力より低くなっている。
  なお,全産業と比較すると,売上高経常利益率は全産業より高くなっているものの,総資本経常利益率,総資本回転率は全産業より低く,投資効率は必ずしも高くない(第1-1-16表参照)。
  (ウ) KDDの経営状況
  KDDについては,国際電気通信の需要の高まり等を背景として,60年度の経常収入は対前年度比2.3%増の2,222億円となった。一方,経常支出は同8.7%増の1,889億円で,経常利益は333億円であった。当期利益は172億円,1株(5百円)当たりの利益は308円46銭となった。
  財務状況をみると,売上高経常利益率が15.4%,総資本経常利益率が9.2%と他の通信事業者及び全産業の数字と比較しても非常に高く,通信事業者の中でも経営効率が高いことが分かる。
  なお,NTT同様,設備産業であることから,労働装備率は全産業を大きく上回っているものの,総資本回転率は全産業を下回っている(第1-1-16表参照)。
  (エ)NHKの経営状況
  NHKについては,60年度の経常収入は対前年度比1.6%増の3,480億円,経常支出は同3.9%増の3,311億円で,経常利益は169億円であった。このほか,特別収支を加え,最終的に161億円の事業収支差金を生じ,NHKでは,このうち84億円を放送債券の償還,借入金の返済等に使用し,77億円を翌年度以降の財政安定のための繰越金とした。
  財務比率をみると,59年度の受信料改定を受けて,売上高経常利益率,総資本経常利益率,総資本回転率がそれぞれ5.0%,5.3%,1.07回と高くなっている。また,民間放送と比較すると,設備投資/固定資産は18.6%と,NHKの方が3.9ポイント高く,放送衛星関係の設備投資の割合が高いことが特徴となっている(第1-1-16表参照)。
  (オ)民間放送の経営状況
  民間放送の収支状況は,広告料収入の伸びにより,経常収入が対前年度比3.0%増の1兆3,693億円を計上した。一方,経常支出が4.7%増の1兆2,812億円となり,差引き881億円の利益を生じた。
  民間放送全社の財務状況は,NHK同様,総資本経常利益率,総資本回転率がそれぞれ8.6%,1.18回と高くなっている。
  また,全産業と比較すると,固定比率は93.6%と低くなっている(第1-1-16表参照)。
 (4)通信関連産業の動向
  ア.通信機器製造業
  60年度の通信機器の受注額は対前年度比8.7%増の1兆8,812億円で,6年ぶりに1けたの伸びとなった(第1-1-17図参照)。
  これを需要先別にみると,NTTが対前年度比6.0%増の4,928億円,官公需が対前年度比4.5%減の1,150億円,民需が対前年度比11.1%増の6,318億円であった。
  イ.通信ケーブル製造業
  通信ケーブルには,従来からの銅線ケーブル(同軸ケーブル等)と近年登場した光ファイバケーブルがある。
  このうち,60年度の銅線ケーブルの出荷額は,(社)日本電線工業会資料によると,対前年度比4.6%減の1,128億円となった。需要部門別の内訳は,官公需は,対前年度比39.0%増の40億円,民需は同6.9%減の927億円,外需は対前年度比2.4%増の161億円である(第1-1‐17図参照)。
  また,光ファイバケーブルについては,今後そのウェイトが高まるものと予想される。
  ウ,電気通信工事業
  60年度の電気通信工事業の総受注額は,対前年度比15.5%減の4,621億円となった。これは,主な受注先てあるNTTにおいて,[1]初期投資の段階から設備の維持・管理へと工事内容が変化してきたこと,[2]直営工事の充実が図られるようになったこと,などによるものである(第1-1-17図参照)。
  電気通信工事業の事業環境は,NTTからの工事受注額の減少,技術力を必要とする改良工事等の複雑かつ小規模な工事の増加等により,一層厳しくなっている。
  エ.電子計算機製造業
  通商産業省の「生産動態調査」によれば,60年の電子計算機の生産額は対前年比15.9%増の3兆3,788億円となっている。
  オ.広告業
  60年の総広告費は対前年比2.3%増の2兆9,829億円と過去10年間で最低の伸び率となり,6年連続1けたの伸びとなった。
  このうち,放送系の広告費についてみると,59年に1兆円の大台にのったテレビ広告費は60年には伸び悩み,対前年比1.9%増の1兆503億円となった。これは,構成比の大きな「食品・飲料」,「化粧品・洗剤」,「薬品」の減少や伸び悩みが影響している。また,ラジオ広告費は,対前年比3.8%増の1,558億円となった。中波放送は相変わらず低迷を続けているが,FM放送は,新規局の開局も加わり,好調であった。
  一方,郵便関係についてみると,「DM・屋外・その他広告費」は,対稍年比2.3%増の6,441億円となり,このうちDMは約20%を占めている。新聞広告費は,59年以降伸び悩みを示し,60年も対前年比1.0%増の8,550億円と新聞,雑誌,テレビ及びラジオのマスコミ4媒体の中で最も低い伸びであった。雑誌広告費は,創刊ブームを背景に58年には2けたの伸びを示したが,59年以降再び1けたの伸びとなり,60年においては,対前年比5.8%増の1,965億円となった(第1-1-18図参照)。
  カ.その他
  (社)日本新聞協会の会員である新聞社の発行する一般日刊紙の総発行部数は,60年10月現在4,823万部で,前年同月に比べ72万部,1.5%の増加となった。これは1世帯当たり1.25部,人口1千人当たり402部であった。
  一方,通信社の60年度における1日平均のニュース供給量は,新聞向けが27万字,放送向けが3.2万字,また,写真は,新聞向けが105枚,放送向けが16枚といずれも前年度をやや上回った。外電においては,受信が71万語,送信が25万語で,送信が前年度に比べ1万語減となった。
  60年度における書籍及び雑誌の推定実売金額は,対前年度比6.3%増の1兆7,418億円となった。内訳をみると,書籍の推定発行部数は12億9,948万冊で7,123億円,雑誌では月刊誌が21億2,352万冊,週刊誌が16億8,888万冊で合わせて1兆295億円となった。

第1-1-3図 国内通信の動向

第1-1-4図 1加入当たり年間ダイヤル通話回数の推移

第1-1-5図 主要メディアの利用数の推移

第1-1-6図 国際通信の動向

第1-1-7図 国際テレビジョン伝送サービスの伝送時間の推移

第1-1-8図 国際情報通信交流状況(60年度)

第1-1-9図 国際情報通信交流の推移

第1-1-10図 マス系国際情報通信交流の推移

第1-1-11図 通信設備数の推移

第1-1-12図 国際電気通信回線数の推移

第1-1-13図 NTTの設備投資額の推移

第1-1-14表 通信事業者数(60年度末)

第1-1-15表 郵便事業の財務状況(60年度)

第1-1-16表 通信事業者の財務状況(60年度)

第1-1-17図 通信関連産業の動向

第1-1-18図 メディア別広告費の推移

 

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