昭和61年版 通信白書

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2 電気通信主任技術者制度

 電気通信主任技術者(以下「主任技術者」という。)は,電気通信事業体における電気通信ネットワーク全体の監督者として,質の良い電気通信サービスを維持するための直接の責任者である。
 事業法は,第一種及び特別第二種電気通信事業者に対して事業用電気通信設備の工事,維持及び運用に関する事項を監督させるため,主任技術者を選任することを規定している。
 事業法の施行以前は,NTT及びKDD内部の技術基準により,電気通信サービスの提供が確保・維持されてきたが,競争原理の導入を基本とする事業法の施行により,国が一元的に技術基準を規定することとなった。電気通信事業者が自主的にその事業用電気通信設備を技術基準に適合させることを担保するための制度として,主任技術者制度が国家資格として創設された。
 (資格の種類)
 主任技術者は,そのかかわる設備に応じて第一種伝送交換主任技術者,第二種伝送交換主任技術者及び線路主任技術者に分類されている(第3-2-3表参照)。
 (国家試験)
 主任技術者の資格を得るためには,郵政大臣から試験機関として指定された(財)日本データ通信協会が実施する電気通信主任技術者試験に合格するなどの方法がある。
 電気通信主任技術者試験は,電気通信設備の工事,維持及び運用に関して必要な専門的知識及び能力を問う国家試験であり,最低年1回実施される。試験は,年齢,学歴,実務経験年数等の受験資格は設けられておらず,自由に受験できる。試験科目は,「電気通信システム」,「専門的能力」,「伝送交換設備(又は線路設備)及び設備管理」及び「法規」の4科目であり,そのすべてについて一定の水準を上回る成績を得ることが必要である。合格した試験科目については,2年間受験を免除される。
 (付与資格数の推移)
 電気通信主任技術者試験の実施状況をみると,60年7月に実施された第1回試験の受験者数は,総数で約9,000人,全体の合格率は26%であった。このうち,第一種伝送交換主任技術者は,受験者数,合格者数とも高い数字となっており,合格率も32%と平均を上回っている。同年12月に実施された第2回試験では,受験者数は約1万6,000人と第1回の約2倍に増加し,この制度が着実に社会に定着してきていることを示している。また全体の合格率は25%であり,第1回試験とほぼ同様の結果となっている。このうち,第二種伝送交換主任技術者の合格率は28%と前回の13%に比べその伸びが著しい。また,61年6月に行われた試験の実施結果をみると,受験者数は第2回試験とほぼ同様であり,合格者数及び合格率は,過去最高の数値となった(第3-2-4図参照)。
 61年6月現在で主任技術者の資格を有している者は,1万人を超えており,各電気通信事業者の事業用電気通信設備をもれなく監督するのに十分な数の主任技術者が選任されている。
 (養成課程)
 電気通信主任技術者資格の養成機関として,郵政大臣の認定を受けた約1,000時間の授業を行う養成課程を修了すれば,電気通信技術者資格者証の交付申請を行うことができる制度がある。なお,現在該当する養成課程はない。
 (ネットワーク化を支える主任技術者)
 社会のネットワーク化の進展に伴い,電気通信ネットワーク全般な監督する能力のある技術者として,主任技術者に対する関心は非常に高まっている。今後,データ通信,VAN等の多種,多様で高度な電気通信サービスを実現するため,能力ある電気通信技術者としての主任技術者の重要性も高まっていくことが考えられる。

第3-2-3表 電気通信主任技術者の種類

第3-2-4図 電気通信主任技術者試験の実施状況

 

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