昭和61年版 通信白書

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4 放送ネットワーク

 放送は,即時に,かつ,不特定の者に対して,同時に情報を供給するメディアである。ここでは,放送のうちテレビジョン放送を中心に概説するとともに,ラジオ放送についても言及する。
 (1)テレビジョン放送網
 (ネットワークの構成)
 テレビジョン放送のネットワークは,基本的には,放送番組を制作し,これを送信するセンターとしての機能をもつ放送局と,これを受信する端末としての機能をもつテレビジョン受像機から構成されている。
 放送ネットワークは,電波を媒体としているため,簡単な網構成となっている。この結果,安価にネットワークの構築を行うことが可能である(第2-2-33図参照)。
 テレビジョン放送に用いられる電波は,いずれも波長が短く,直進性が強いので,主に見通し範囲内でしか伝搬しない。このため,放送の及ぶ地域を拡大するため,放送局の番組を中継して放送する中継局が開設される。
 なお,電波法上の放送局とは,番組を制作し,これを送信する放送局と,中継のために設置される中継局の両方を指し,60年度末現在,1万3,178局となっている。
 (テレビジョン放送の周波数割当)
 放送局は,周波数割当計画(以下「チャンネルプラン」という。)に従って置局される。放送局には,番組を制作し,これを送信する局として,チャンネルプランの第1次割当計画表に基づいて開設される放送局(以下「1次プラン局」という。)のほか,中継局としてチャンネルプランの第2次割当計画表に基づいて開設される放送局(以下「2次プラン局」という。2次プラン局の中には,一部,番組制作能力をもつものもある。),微小電力テレビジョン放送局及び極微小電力テレビジョン放送局がある。これらの局数の推移は,第2-2-34図のとおりである。
 チャンネルプランでは,放送の対象地域を単位として周波数の割当てを行っている。放送の対象地域は,原則として各県一つとなるように定められている。しかしながら,地理的あるいは経済的理由から,複数の都府県をまとめた地域をもって一つの放送対象地域としているところもある。
 チャンネルプランでは,NHKについては,総合番組局の放送及び教育・教養専門局の放送がそれぞれ全国的に視聴できるように,また,放送大学学園については,関東地方において視聴できるように周波数の割当てを行っている。民間放送については,60年度末現在,各県で視聴可能なチャンネル数は,第2-2-35図のとおりとなっており,チャンネルプラン上,民間放送を4チャンネル以上(NHKと合わせて6チャンネル以上)視聴できることとなる世帯は,全世帯の約8割となっている。郵政省では,今後,全国各地で民間放送を最低4チャンネル視聴できるように周波数の割当てを行うこととしている。
 (番組の制作と送出)
 放送局では,様々な形態で番組が制作される。制作された番組は,すべて主調整室(番組送出コントロ-ルルーム)に送られ,ここで放送スケジュールに従って送信所に送出される。演奏所(本社)と送信所とは,有線又は無線回線で結ばれている。また,中継局へは,一般に放送波による中継が行われているが,一部ではマイクロウェーブ回線等による中継も行われている(第2-2-36図参照)。
 (テレビジョン放送に用いられる電波)
 テレビジョン放送に用いられる電波は,主としてVHF(90MHz〜108MHz及び170MHz〜222MHz,
 1〜12チャンネル)とUHF(470MHz〜770MHz,13〜62チャンネル)が使用されている。このほか,都市受信障害対策用としてSHF(12GHz帯,63〜80チャンネル)が使用されている。
 (NHKの全国向け放送の中継)
 NHKでは5地域放送以外の全国向け放送について,NTTのテレビジョン放送中継回線等により,各地の放送局(1次プラン局)を結び,放送番組を伝送している。
 NHK総合テレビジョン放送の中継回線の系統図は第2-2-37図のとおりであり,基本的には東京から出発し,各放送局を結んだ後,最後に再び東京に戻ってくるループ形である。これは,地方からの全国向け放送の送出を行う場合に,ループに割り込む方法によれば,中継回線を別に設定する必要がなくなり,経済的な運用が図れるからである。さらに,番組の送受局や接続範囲が変わることが多く,端末回線と中継回線の接続変更を頻繁に行う必要がある。このため,NTTの東京テレビジョン中継センタには,自動回線統制システムが設けられ,全国的な回線制御を行っている。
 なお,民間放送については,他の放送事業者から放送の供給を受けて,放送することがある。この番組の伝送にもNTTの回線が使用されている。この回線は,(社)回線運営センターがNTTから借り受け,その運営に当たっている。
 また海外からの番組素材は,KDDの国際テレビジョン伝送回線により中継が行われている。
 (難視聴の解消に向けて)
 テレビジョン放送では,難視聴対策が課題となっている。難視聴は,辺地難視聴と都市受信障害の2種類に分類できる。
 辺地難視聴については,これまで中継局及び共同受信施設の設置により解消が図られてきたが,その地域が散在・狭域化してきたことにより,解消効率が低下してきたため,NHKの難視聴については,衛星放送により,その解消を図ることとしている。また,民間放送については,引き続き中継局の設置により解消を図っている。
 都市受信障害については,主として有線による共同受信施設が利用されているほか,SHF帯の周波数による放送が行われている。
 (2) ラジオ放送網
 ラジオ放送網は,テレビジョン放送網と同様,放送局及びラジオ受信機から構成されている。
 ラジオ放送の種類には,中波放送,短波放送及びFM放送がある。それぞれに用いられる電波の特徴は,第2-2-38表のとおりである。
 (カバレッジの拡大が図られてきた中波放送)
 中波放送は,AM放送とも呼ばれ,サービスエリアが広く,受信機が小型で簡便なため,ニュースや生活情報等の情報番組を中心に広く普及している。
 中波放送のチャンネルプランは次のとおりである。NHKについては,各分野の番組を放送する第1放送と,全国同一の数育・教養番組を放送する第2放送の2種類の放送を行うこととしている。また民間放送については,主要な地域においては複数の放送が,その他の地域においては一の放送が可能となるようにしている(第2-2-39図参照)。
 また,53年には,周波数のわずかな違いから発生する外国電波による混信及び同一周波数の外国電波との混信の解消と各国の放送局新設の要望にこたえるための国際協定に基づき,周波数割当がそれまでの10kHz間隔から9kHz間隔に切り替えられた。
 (広範囲がカバーできる短波放送)
 短波放送は,極めて広い範囲がカバーできる。現在,我が国では,民間放送1社による国内放送と,NHKによる国際放送が行われている。
 国内放送は,2局で全国をカバーしている。
 国際放送は,KDDの八俣送信所から,世界各地に向けて放送が行われているが,このほかにアフリカのガボン共和国モヤビ送信所を利用した欧州,中東,北アフリカ向けの中継放送も行われている。さらに,61年10月1日からは,カナダのサックビル送信所から北米向けの中継放送が行われている。
 (普及が進む民間FM放送)
 FM放送は,高品質な伝送と臨場感のあるステレオ効果を特徴とし,音楽放送を中心に放送されている。
 FM放送のチャンネルプランは次のとおりである。NHKについては,全国1系統の放送の実施が可能となるようにしている。また民間放送については,県域放送を原則として,早い機会に全国普及を図る方針に基づいて周波数の割当てを行っている。60年度末現在の周波数の割当地区は,40地区(41都道府県)となっており,東京及び大阪地区においては,2波目の周波数の割当てが行われている(第2-2-40図参照)。
 さらに,放送大学学園については,関東地方において放送の実施が可能となるよう周波数の割当てを行っている。

第2-2-33図 テレビジョン放送網の構成

第2-2-34図 種類別放送局数の推移

第2-2-35図 民間テレビジョン放送のチャンネルプラン(60年度末現在)

第2-2-36図 放送の中継の概要

第2-2-37図 NHK総合テレビジョン放送の中継回線の系統図(61年3月現在)

第2-2-38表 ラジオ放送の種類と特徴

第2-2-39図 民間中波放送のチャンネルプラン(60年度末現在)

第2-2-40図 民間FM放送のチャンネルプラン(60年度末現在)

 

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