昭和61年版 通信白書

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1 無線従事者制度

 無線従事者とは,無線設備の操作を行う者であって,郵政大臣の免許を受けた者のことをいい,原則として無線局の無線設備の操作を行う場合には,無線従事者でなくてはならないと電波法で定められている。電波を利用する場合は,常に混信その他の妨害を排除する必要があり,国際的な強い統一性等が要求される。このため,無線局に割り当てられた電波の有効かつ能率的な使用を図る見地から,無線設備の運用・保守・管理は,原則として一定の資格を有する者でなければ行ってはならないこととされている。
 (資格の種類)
 無線従事者は,社会的需要に応ずるため,無線設備の種類,規模等に対応してその資格は細分化されている(第3-2-1表参照)。
 無線通信士は,主として無線設備を操作して,実際の通信を行うための資格であり,その操作できる無線設備の種類,規模等に応じて第一級,第二級,第三級,航空級及び電話級に分類される。
 無線技術士は,通信が確実に行われるように,無線設備の調整や保守等を行うための資格であり,無線設備の規模等により第一級と第二級に分けられている。
 特殊無線技士は,八つの資格に分けられ,操作できる無線設備の種類等が限定されており,他の資格に比べ,空中線電力が小さく,操作が簡単なものに限られている。
 アマチュア無線技士は,アマチュア無線局の空中線電力等に応じて四つの資格に分類されている。
 (資格の取得)
 無線従事者の免許を得るためには,国家試験に合格するか,又は郵政大臣が認定した養成課程を修了する必要がある。
 国家試験は,特殊無線技士並びに電信級及び電話級アマチュア無線技士を除き,各資格とも年2回定期的に行われており,特殊無線技士並びに電信級及び電話級アマチュア無線技士の国家試験については,電波法の規定に基づき,試験機関として指定を受けた(財)無線従事者国家試験センターが試験の実施に関する事務を行っている。
 また,一定の無線従事者,電気通信主任技術者及び工事担任者の資格を有する者が他の資格の試験を受ける場合,一定の業務経歴者が他の資格の試験を受ける場合,又は郵政大臣の認定を受けた電波や通信に関係ある学校等を卒業した者が受験する場合は,一部の試験科目が免除される制度がある。
 養成課程は、特殊無線技士並びに電信級及び電話級アマチュア無線技士の資格に限り,地方電気通信監理局長が認定した養成課程の講習を修了した者に対して,国家試験によらないで免許を付与している。
 (付与免許数の推移)
 資格別の付与免許数をみると,無線通信士及び無線技術士は,この10年間安定した推移となっている。特殊無線技士は,年度ごとの増減はあるものの,全体としては増加傾向にある。アマチュア無線技士は,毎年度著しい伸びを示しており,特に54年度からは急激に増加し,60年度は,50年度の免許付与数の1.5倍近くとなっている。
 これらの国家試験あるいは養成課程を経た有資格者は,現在,無線通信士が約11万5,000人,無線技術士が約3万7,000人,特殊無線技士が約112万人、アマチュア無線技士が約137万人であり,合計260万人以上となっている(第3-2-2図参照)。
 (電波利用の促進と無線従事者)
 無線通信は,移動通信,大量同報通信,非常災害時の通信等に不可欠なものであり,高度情報社会といわれる今日,量的・質的にも変化が著しい。
 従来,我が国における電波利用は,電波の希少性を背景に,海上の遭難,安全通信や人命,財産を保護するための重要通信,通信インフラストラクチャーとしての公衆通信の分野を重点に進められてきた。
 しかしながら,最近の著しい技術開発により今まで利用することが困難であった高い周波数帯を利用する技術が開発され,長波,中波,短波帯から超短波帯へ,更にマイクロ波,ミリ波へと利用可能な周波数の領域が拡大した。また,端末技術等の進展による既利用周波数帯の利用効率が向上し,電波の利用は大幅に拡大されている。その結果,電波は,120万局を超えるパーソナル無線に代表される個人的利用の急速な進展,タクシー無線,MCA無線,自動車電話等による社会経済活動の効率化,活性化に大きく寄与している。
 さらに電波は,移動通信の唯一の手段であると同時に,固定通信でも安全性,信頼性,経済性の点で優れた面をもっていることから,今後も引き続き,宇宙通信から汎用無線機に至るまで一層の有効利用が図られていくものと思われる。
 このため,郵政省では,より一層受験者の利便を図り,電波の利用促進と無線通信の健全な発展を期すため,業務経歴による試験免除科目の拡大,一定の資格を有する無線従事者が他の資格を受験する場合の試験科目の免除の拡大,養成課程の授業時間の短縮等を骨子とした無線従事者規則の一部改正を行った。
 今後とも無線通信分野の利用に対応した無線従事者の資格として,近年における電波利用の多様化とネットワーク化の進展を考慮したものとしていく必要がある。

第3-2-1表 無線従事者の資格の区分(1)

第3-2-1表 無線従事者の資格の区分(2)

第3-2-2図 無線従事者免許付与数の推移

 

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