昭和61年版 通信白書

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2 企業における人材

 (新たな電気通信事業者への人材の供給)
 電気通信分野への競争原理の導入に伴い,この分野に新たに参入した事業者への人材の供給が大きな課題となっている。
 高度情報社会の実現に向けて,健全な競争を実現し,利用者ニ一ズに合致した通信サービスが展開されるためには,すべての電気通信事業者において必要な人材の充足が必要である。
 (企業における人材の必要性)
 ユ一ザにおいても,通信システムの構築と高度な利用に当たって,そのノウハウを有する人材が不足しており,その充足を図る必要がある。
 首都圏における資本金1億円以上の企業420社をアンケート調査し,企業の全国における技術者数等を推計した(社)日本情報通信振興協会の「情報通信関連の技術者に関する実態調査(59年10月)」(以下「実態調査」という。)によれば,資本金1億円以上の企業における情報通信に関連する技術者の数は22万3,000人であり,現在の不足数は6万8,000人,不足率(現在の必要数に対する不足数の割合)は23%である。また,5年後には,必要な技術者数が約32万人になると予測されており,その充足のためには,今後年8%の伸びで技術者を確保する必要があるとされている。中でも,通信ソフトウェア技術者やデータベース関連技術者,ハ一ドウェア技術,ソフトウェア技術及び基礎技術を統合する企画技術者等の必要性が今後増大するものと見込んでいる(第3-3-3表参照)。
 高度情報社会を早期に実現するために,情報通信に関連する技術者はその推進役ともいえる重要な役割を果たすもめであり,技術者の量的・質的な不足は,今後ますます深刻な問題になると考えられる。
 ここで,大学,大学院,短期大学,高等専門学校,専修学校及び各種学校の通信に関連する学科・課程等の卒業者数をみると,59年度で合計約5万4,000人となっており,今後,企業における人材不足を解消するためには,これらの労働需給のミスマッチを防ぎつつ,高等教育及び専門教育機関から情報通信分野への就業者の一層の増加が望まれる(第3-3-4表参照)。
 また,実態調査によれば,情報通信に関連する技術者の65%が従業員1,000人以上の企業に集中しており,企業規模による人材の偏在が顕著となっている。中でも,従業員の規模が100人から299人程度の中企業における不足率が高く,将来的にも需要が高い。また,従業員が49人以下の企業においても,将来的に必要性が増大する可能性を示している(第3-3-5表参照)。
 高度情報社会においては,企業における通信ネットワークの構築が効率的に推進されるとともに,その技術水準の向上が図られることが重要である。しかしながら,そのために必要な人材が総体としては量的・質的に確保できたとしても,人材が特定の企業に集中するならば,高度情報社会の調和ある発展は望み得ない。このため,今後,企業内において情報通信に関連する技術者の育成を推進するとともに,企業間における技術者の偏在を量的にも質的にも是正していくことが必要である。
 一つの方策としては,研究機関,通信事業体,民間企業等における情報通信分野の人材を登録し,企業が必要とする場合に専門家を派遣する人材派遣業を有効に活用していくことが考えられる。
 また,社内教育体制の充実が困難な中小企業等においては,企業が共同で各種の訓練・研修や教育研究機関への派遣を実施することで,必要な人材の育成を図っていくことも考えられる。

第3-3-3表 情報通信に関連する技術者の種類別不足状況

 

第3-3-4表 通信に関連する学科・課程等の卒業者数(59年度)

 

第3-3-5表 情報通信に関連する技術者の企業規模別不足状況

 

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