昭和61年版 通信白書

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2 充実する郵便サービス

 (1)郵便利用の現況
 ア.郵便物数の動向
 60年度における総引受郵便物数は,59年度に比べて5億9,000万通(個),3.5%増加して,171億9,000万通(個)と史上最高となった(第1-2-5図参照)。
 引受郵便物数の主な動きをみると,内国通常郵便物のうち,第一種郵便物は,6.7%の増加と,ここ数年来順調な伸びを持続している。
 第二種郵便物(年賀・選挙郵便物を除く。)は,0.6%減と2年連続して減少となった。
 第三種郵便物は5.4%,第四種郵便物は1.0%,書留通常郵便物は2.2%,普通速達郵便物等は0.6%それぞれ増加した。
 内国小包郵便物は,民間運送業者の小型物品送達分野への進出等もあって,その取扱数は55年度以降減少していたが,59年度に5年ぶりに前年度比増加に転じ,60年度においても対前年度比7.4%の増加となった。
 年賀郵便物は,9千万通,3.0%増加して,31億1,800万通(葉書31億400万通,封書1,400万通)と史上最高となった。
 外国あて郵便物は,通常郵便物が0.1%,小包郵便物が2.9%それぞれ増加し,全体としては0.1%の増加と低い伸びとなった。
 イ.郵便の利用構造郵便物が,だれからだれに,どのような内容(目的)で利用されているかを知るため,48年以降3年ごとに「郵便利用構造調査」を実施してきており,60年9月には第5回目の調査を実施した。
 郵便物の約8割を占める普通通常郵便物についてみると,次のとおりである。
 (ア)私人・事業所間交流状況
 差出人,受取人をそれぞれ私人と事業所とに分けて,その交流状況をみると,第1-2-6表のとおりである。
 差出割合は,事業所が81.8%,私人が18.2%となっており,次第に事業所の差出割合が増加する傾向にある。一方,受取割合は,私人受取りが64.0%であるのに対して,事業所受取りが36.0%となっており,差出割合とは逆に私人受取りが多い。
 (イ)内容別利用状況
 郵便物の利用内容(目的)をみると,第1-2-7図のとおりである。
 「金銭関係」(23.6%),「ダイレクトメール」(23.4%)の占める割合が大きいのは,これまでと同様であるが,今回,「金銭関係」が2.5ポイント低下したのに対して,「ダイレクトメール」が1.7ポイント上昇したため,両者の差がほとんどなくなってきている。
 ウ.郵便物の地域間交流状況
 全国各地で差し出された郵便物が,どこあてに差し出されているのかを知るため,48年以来3年ごとに「あて地別引受郵便物数調査」を実施してきており,60年6月には第5回目の調査を実施した。その調査結果の概要は,次のとおりである。
 (ア)郵便物のあて地別割合
 全国の郵便局に差し出された郵便物全体についてみると,その60.0%が差し出しのあった同一の都道府県(以下「府県」という。)内にあてられており,その28.8%(全体に対しては17.3%)が,差し出しのあった郵便局区内で配達されている(第1-2-8図参照)。
 (イ)配達郵便物の引受地割合
 配達郵便物の自府県以外の引受地についてみると,33の府県で東京都が第1位となっている。また,埼玉県と千葉県では,自県引受(それぞれ配達郵便物の38.8%,39.2%)よりも,東京都引受(同44.7%,45.6%)の方が多くなっている。
 (2)郵便サービスの充実・強化
 ア.輸送システム
 59年2月,これまでの鉄道主体の郵便輸送システムを,郵便の流れに沿って自主的にダイヤの組める自動車主体のシステムに切り替え,郵便輸送のスピード化と安定化を図ったが,さらに,多様化したニーズ,取り分けスピード志向の高まりにこたえるとともに,郵便の効率的な輸送を図るため,自動車及び航空機による輸送システムの充実・強化を行った。
 これにより、全種別の郵便物について,同一府県あては翌日配達,その他の府県あては可能な限り翌日配達,翌日配達が困難な地域についても,一部離島を除き,翌々日配達体制が全国的に確立された。
 イ.集配サービス
 61年6月1日から,次のとおり郵便配達サービスの改善を行った。
 (郵便規則第85条適用地の改善)
 特に交通困難等であるため,通常の方法では郵便物を配達できない地域(郵便規則第85条適用地)を,道路事情等地況の実態に即して見直し,配達エリアの拡張を図った(従来の適用世帯数約9,200世帯,見直し後の適用世帯数約4,500世帯)。
 (速達取扱地域の拡大)
 速達取扱地域外世帯数は,全国に約211万世帯(全国総世帯数の約5%)存在していたが,このうち,前記の郵便規則第85条適用地を除き,全域を速達取扱地域に拡大した。この結果,速達取扱地域外世帯数は,周年適用となるものが,約1,400世帯,冬期等一定期間に限り適用となるものが約3,100世帯となった。
 ウ.窓口サービス
 地域におけるコミュニティの拠点でもある郵政窓口機関については,60年度には無集配特定局122局,簡易郵便局63局をそれぞれ必要性の高い所に設置した。また,61年3月には,駅,百貨店,スーパーマーケット等郵便需要の高い場所に郵便切手・はがき発売機12台を設置した。
 59年7月に開始した郵便切手類販売所における郵便小包の取次ぎサービスは,当初全国500か所でスタートしたが,その後順次拡大し,現在では約5万か所の郵便切手類販売所で実施している。
 さらに,61年7月から,郵便切手類販売所において,小包郵便物包装用品(ゆうパック)を販売している。
 エ.電子郵便サービス
 電子郵便(レタックス)は,送達の一部に電気通信(ファクシミリによる通信)を取り入れることにより送達速度を大幅に向上させた新しい郵便サービスとして,56年7月に東京,大阪,名古屋の3都市間で開始し,59年10月には,全国の主要局に端末機を設置してサービスネットワークを全国に拡大した。
 その後,更に充実したサービスとするため,端末機設置局の拡大によるネットワークの強化やポストによる引受け等の施策を実施してきた。
 電子郵便の利用は順調に増加し,60年度においては前年度の約4.6倍に当たる287万通の利用があった(第1-2-9図参照)。
 なお,61年7月には,利用の簡便化を図るため,利用者端末からの直接引受けを実施したところである。
 (3)郵便制度の弾力化
 61年4月の法律改正により,7月1日に次のとおり郵便サービスの改善が行われた。
 ア.普通小包郵便物の損害賠償制度の創設
 普通小包郵便物(書籍小包郵便物を除く。)の全部又は一部を亡失し,又はき損したときは,4,000円を限度とする実損額を賠償することとなった。
 イ.料金受取人払制度の改善
 小包郵便物及び特殊取扱とする郵便物についても,料金受取人払とすることができることとなった。
 また,超特急郵便物及び小包郵便物について,郵便物の料金及び特殊取扱の料金を受取人が納付してこれを受け取ることにつき,差出人が当該受取人の承認を得て,その者にあてて差し出すものは,料金受取人払の取扱い(いわゆる「料金着払」)ができることとなった。
 ウ.料金後納に係る担保を免除する者の拡大
 料金後納に係る担保を免除する者に,「1か月内における後納料金の概算額が10万円に満たない者で,その料金を納付すべき期日までに納付できないおそれがないと認められた者」が加えられた。
 エ.市内特別郵便物の転送
 市内特別郵便物についても,転送の取扱いをすることとなった。
 オ.郵便切手類販売所制度の改善
 郵便切手類販売所において,小包郵便物包装用品(ゆうパック)等郵便の利用上必要な物についても販売できることとなった。
 (4)ニーズにこたえる小包郵便サービス
 ア.好調を続けるふるさと小包
 ふるさと小包は,全国各地の名産品・特選品を郵便局が地元団体,農協,漁協,生産業者等とタイアップして,全国の利用者へ届けることにより,地域の産業振興に寄与するとともに,小包郵便の需要拡大を図るものである。
 このシステムは,全国の郵便局の窓口に全国各地の特産品,名産品などを紹介したカタログを配備し,利用者は,郵便振替で希望商品を申し込むと小包郵便で届けられるものである。
 58年度に取扱いを始め,同年度43万個,59年度100万個,60年度は293万個と順調に伸びている。利用者の人気が高く,61年度は380万個程度になるものと期待される。
 イ.ワールドゆうパック
 ワールドゆうパックは,輸入促進に寄与するとともに,小包郵便の需要拡大を図るため,ふるさと小包と同様のシステムで60年10月に始めたサービスである。これは,国内の輸入業者が輸入した商品の中から適当なものを選び,それらの品物を掲載したカタロを郵便局の窓口に備えて,容易に外国の商品を申し込めることとしたものである。
 ウ.小包郵便物の配達時間の延長
 小包郵便物の配達方法については,61年6月1日から次のとおり改善された。
 [1] 午前中に配達を受け持つ郵便局に到着した小包郵便物については,
 当日に配達する。また,午後に到着した小包郵便物についても,極力
 当日に配達するよう努める。
 [2] 不在で持ち戻った小包郵便物(書籍小包郵便物は除く。)について
 は,当日おおむね午後5時以降配達する。
 エ.小包郵便物の料金の減額率の改善
 61月10日から,小包郵便物を一定の条件の下に差し出す場合,これまでの減額率に5%を加算した率により料金を減額することとなった。
 この場合,一般小包郵便物については30%,書籍小包郵便物については最高13%料金が減額される。
 (5)多様化する郵便サービス
 ア.年賀封書の実施
 封書の年賀郵便に対する利用者からの強いニーズにこたえるため,60年度から定形郵便物,郵便書簡及び第四種郵便物のうち盲人用点字のみを掲げたものを内容とする郵便物であって,形状・重量が定形郵便物のそれらに準ずるものについても,年賀特別郵便としても取扱いを実施した。
 イ.くじ付暑中見舞葉書(愛称「かもめーる」)の発行
 60年度に,「お年玉つき郵便葉書及び寄附金つき郵便葉書等の発売並びに寄附金の処理に関する法律」(昭和24年法律第224号)が改正されたことにより,年賀葉書以外の郵便葉書にくじを付けて発売できることとなったので,61年6月から暑中見舞葉書にくじを付けて発売した。
 なお,くじ付暑中見舞葉書が国民に親しまれるよう,「かもめーる」の愛称を付し,一層の利用を呼び掛けたところである。
 ウ.配達日指定郵便の実施
 差出人が指定する日に郵便物を配達してほしいというニーズにこたえるため,61年10月1日から配達日指定郵便サービスを開始した。
 配達日を指定することができる郵便物は,第一種郵便物,第二種郵便物,第四種郵便物(盲人用に限る。)及び小包郵便物である。
 エ.コンピュータ郵便サービス
 事業所における大量郵便物の差出しを容易にするため,60年6月に,日本橋郵便局及び大阪中央郵便局を取扱局としてコンピュータ郵便サービスを開始した。
 その後,61年7月には,利用の簡便化を図るため,郵便物のあて先等のデータを記録する入力媒体として,磁気テープのほかフレキシブルディスクも使用できるようサービス改善を実施した。
 (6)充実する外国郵便サービス
 ア.外国郵便取扱局の拡大
 外国郵便利用者へのサービス向上のため,60年度中に2,624局の無集配特定郵便局において,外国郵便の取扱いを開始した。これにより,外国郵便を取り扱う郵便局は全国で約1万600局となった。
 イ.国際ビジネス郵便
 緊急の業務用書類等を迅速,確実に海外へ送達する国際ビジネス郵便は,順次取扱国を拡大し,61年10月現在44か国との間でサービスを実施している。また,取扱局についても,60年7月及び61年5月に計126局拡大した結果,61年10月現在320局において取扱いを行っており,取扱物数もここ数年急激な増加が続いている。
 ウ.国際電子郵便(通称:インテルポスト)
 国際間の電子郵便サービスは,59年11月に7か国との間で開始されたが,その後順次取扱国を拡大し,61年10月現在31か国との間でネットワークを形成している。60年11月には,利用者の端末機から郵便局の端末機に直接送信することにより差し出すことができる端末引受けサービスを開始した。
 エ.SAL小包郵便
 船便小包と航空小包の中間的サービスであるSAL小包郵便サービスを,西ヨーロッパ,北米,南米の主要26か国を対象に60年7月に開始した。SALとは,Surface
 Air
 Lifted(航空輸送する平面路郵便物)の略称であり,船便小包をある一定期間取りまとめ,それらを航空機の空きスペースを利用して航空輸送をする取扱いである。この結果,船便小包より大幅にスピードアップし(送達期間2〜3週間),料金も航空小包より割安なものとなっている。取扱国の拡大により,61年10月現在40か国との間でサービスを実施しており,利用も順調に伸びている。
 (7)積極的な営業活動の展開
 安定した良質なサービスを提供していくには,まず事業の経営基盤,取り分け財政基盤を確立する必要がある。
 このため,これまでも職員の営業意識やセールス技能の向上等を図り,積極的な営業活動を展開し,郵便需要の拡大を図ってきたところである。このほか、全国の主要局34局に郵便営業センターを設け,郵便市場の開拓,郵便営業情報の収集・分析,事業所を中心とした訪問活動を展開し,各種郵便サービスの利用勧奨に努めている。
 また,テレビ,新聞等マス・メディアの積極的な活用による効果的な宣伝活動を行うとともに,全国の郵便局においては,地域の行事,催物等に合わせ臨時出張所を開設し,切手類の販売を行うほか,季節に合わせた販売活動等により需要の拡大に努めている。
 さらに,今日,文字文化の見直しの必要性が唱えられているが,郵政省としても,「手紙を書くこと」の体験を通して,その気運を醸成していくため,郵便友の会の育成のほか,毎月23日を「ふみの日」と定め,特に毎年7月23日には「ふみづきふみの日」として特殊切手の発行,手紙教室の開催等を実施している。また,郵趣層の拡大についても各種の施策を実施している。

第1-2-5図 総引受郵便物数等の推移

第1-2-6表 郵便物の私人・事業所間交流状況

第1-2-7図 郵便物の内容別利用状況

第1-2-8図 自府県及び他府県あての郵便物の割合(郵便物全体)

第1-2-9図 電子郵便の取扱通数の推移
 

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