昭和61年版 通信白書

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2 通信ネットワークの構造

 (1)通信ネットワークの一般的構成
 ア.通信ネットワークの構成要素
 通信は一般に,情報の送信,伝達,受信により構成される。例えば,電話の場合は,発信者が電話機に対して発声し(送信),その情報がケーブル等により受信者の電話機に伝達され(伝達),受信者の耳に到達する(受信)。ここで,送信においては情報の伝達に適した形態への変換,また,受信においてはその逆の変換が行われている(第2-1-2図参照)。
 このような通信を行うためには,送信及び受信において情報の形態を変換する機能をもつ端末及び伝達機能をもつ伝送路が必要となる。
 また,通信が社会経済活動において大きな役割を果たすためには,人々が相互に時と場所を選ばずに通信を行えることが必要である。このように不特定多数相互間の通信を可能とし,しかもこれを効率的かつ経済的に実現するためには,端末相互を結ぶ伝送路を切り替える機能をもつ交換機が必要である。
 さらに,通信には,郵便や電話のように一対一で情報を送受する形態のほかに,放送のように同一の情報を不特定多数に送る一対多数の形態がある。このような形態の通信には,大量の情報を収集・管理・加工するとともに,これらの情報を不特定多数の端末に伝達する機能をもつセンターが必要になる。
 このように,通信を行うための基本的要素としては,端末,伝送路,交換機及びセンターがあり,これらが有機的に結合して通信ネットワークが構成される。
 イ.通信ネットワークの形態
 通信ネットワークには,特定の二者間で通信を行う単純なものから,不特定多数相互間の通信を可能とするために端末相互をすべて伝送路で結んだ複雑なものまで,各構成要素間の結合の仕方によって星形,網形,ツリー形,ループ形等いくつかの形態がある。これらは,通信ネットワークの構築に当たっての経済性,各構成要素の使用効率,安全性・信頼性等に関して,それぞれ特徴を有している(第2-1-3表参照)。
 (2)通信ネットワークを支える技術
 我が国の通信は,電子技術,通信技術の急速な進歩に伴い,高度な発展を遂げ,今日では世界のトップレベルに達している。また,利便性を求める国民の強いニーズにこたえるためには,常に技術開発が必要であり,通信と技術は密接不可分である。
 郵便,電気通信,放送の各分野には,それぞれのネットワークを機能させるための基本的な技術があり,その基本的な技術の発展が,今日まで,各通信サービスの向上に大きく貢献してきた。
 郵便に関しては,郵便物を効率的に区分,輸送,配達するための技術が基本となっている。また,近年においては,文字認識技術,選別技術等を駆使した郵便番号自動読取区分機,小包区分装置等の各種の機械が開発され,郵便局における作業の機械化が図られている。
 電気通信に関しては,各構成要素に対応して交換技術,伝送技術,端末技術及びセンター技術がある。
 交換技術については,電気通信ネットワーク機能の高度化・多様化に向け,また,ネットワークの安全かつ経済的な運用を図るため,その開発が行われてきた。クロスバ交換機,電子交換機の開発を経て,現在ではディジタル技術を駆使したディジタル交換機等が実用化されている。
 伝送技術については,伝送容量の拡大,通信品質の向上を目指して,その発展が遂げられてきた。近年,有線については光ファイバケーブル方式等,また,無線については衛星通信方式等に関する研究開発が積極的に行われている。
 端末技術については,情報を電気通信ネットワークを通じて効率的に伝送するための信号変換技術と通信制御技術が重要である。最近では,より高度な通信を実現するために,音声・文字認識技術,音声合成技術,図形入出力技術等が研究開発されている。
 センター技術は,コンピュータを駆使した高度な処理技術が主である。これには,データ通信における演算処理技術,情報を蓄積するためのデータベース技術等があり,近年のニューメディアの実現に欠かせない技術となっている。
 また,放送を支える技術には,センターにおけるVTR・カメラ・マイクロホン技術等の番組制作技術,送信所におけるアンテナ技術や多重化技術,端末における受信障害対策技術等がある。これらの技術は,近年の半導体技術,ディジタル技術,信号処理技術等の著しい進展を背景に,開発が進められ,放送サービスの高度化・多様化を実現している。
 (3)通信ネットワークの特徴
 郵便,電気通信,放送の各通信ネットワークはそれぞれ異なる特徴を有している。
 郵便ネットワークは,情報を物によって伝達するネットワークであり,情報の伝達は,交通及び人手による集配・区分・輸送によって行われている。これによって提供される通信サービスには,現物性,記録性,簡易性,経済性等の特徴がある。
 電気通信ネットワークは、情報を電磁的手段により伝達するネットワークである。これによって提供されるサービスには,即時性,双方向性,情報形態の多様性等の特徴がある。
 また,放送ネットワークは,情報をセンターで収集,加工し,電磁的手段により不特定多数に伝達するネットワークである。これによって提供されるサービスには,即時性,広域性,同報性等の特徴がある。
 郵便,電気通信,放送の各通信ネットワークは,国民生活における多種多様な情報ニーズにこたえるため,それぞれの特徴を生かしながら,相互に補完しつつ今日まで発展してきた。

第2-1-2図 通信モデル

第2-1-3表 通信ネットワークの形態別分類
 

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