昭和61年版 通信白書

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2 人材の育成

 通信を支える人材の育成は,通信事業体で行われる組織内訓練と,大学等で行われる学校教育により実施されている。
 ここでは,まず,郵便,電気通信,放送の各通信事業分野及び通信行政に従事する人材の組織内訓練について概観し,次いで,通信に関連する学校教育の現状について概述する。
 さらに,我が国は,国際協力を通じ,開発途上国における人材育成を支援しており,この国際協力の現状についても概説することとする。
 (1)組織内訓練
 我が国では,基礎的な能力や素養は学校教育においてかん養されるが,職業人としての職務遂行能力やその能力の再開発は組織内訓練で行われるのが通例である。組織内訓練は,人材に対する投資であり,組織の生成・発展に重要な役割を果たしている。
 社会的ニーズがますます高度化・多様化しつつある通信の分野においては,人材に対する投資を進め,国民のニーズにこたえ得る通信サービスの提供や行政の展開が重要である。
 ア.郵便事業
 郵政省職員訓練法に基づいて実施されている郵便職員訓練は,[1]日常業務に必要な知識と技能の付与を目的に職場で実施される職場内訓練,[2]郵政省の職員訓練所等で実施される職場外訓練に大きく分けられる(第3-1-26図参照)。
 (職場内訓練)
 職場内訓練としては,新規採用者や担務変更者等を対象に職場内で行われる職場訓練のほか,通信による訓練が実施されている。
 職場訓練における訓練項目として,[1]郵便職員としての心得,郵便事業の現況等を内容とする基本項目,[2]内国・外国郵便制度等を内容とする一般項目,[3]標準作業方法の習熟等を内容とする特別項目が設けられ,その職場において直接必要な業務に関する知識と技能の付与が図られている。
 (職場外訓練)
 職場外訓練は,職員訓練所における訓練と委託訓練に大きく分けられる。
 職員訓練所における訓練は,郵政大学校及び全国10か所に設置されている郵政研修所で行われる訓練である。これを分野別に分けると次のとおりとなり,それぞれ役職別階層別に訓練が実施されている(第3-1-27表参照)。[1]
 新しく採用された者や新しく役職に任用された者に対し,業務遂行に必要な知識と技能を付与する新任者訓練[2] 担当業務の遂行能力の向上又は専門的な知識と技能を付与する現任者訓練[3] 中等部訓練等の選抜試験合格者を対象とし,人材の育成・能力の開発を目的とする養成訓練委託訓練は,郵政省外で教育・訓練の専門機関が開催する各種講習会に職員を派遣して行われる訓練であり,職務遂行に直接必要な専門的な知識と技能の修得が図られている。
 (今後の課題)
 郵政省では,郵便サービスに対する利用者ニーズに積極的にこたえていくため,関係する法律等を改正して制度の弾力化を図るとともに,新たなサービスの開発,営業活動の強化,作業の機械化等の様々な施策を展開している。
 郵便事業を支える人材を育成する上で,今後は,こうしたサービスの高度化・多様化,作業の機械化等に対応し,営業要員の一層の育成と機械化に対応し得る郵便職員の育成を図るため,その訓練体制の一層の充実・強化が求められている。
 イ.電気通信事業
 ここでは,NTTとKDDを取り上げ,それぞれの組織内訓練の現状と課題について概観する。
 (ア)NTT
 NTTで実施されている職員訓練は,[1]役職別階層別に行われる訓練,[2]業務の遂行に必要な知識と技能の付与を目的に事業別に行われる訓練,[3]中央電気通信学園等で行われる養成訓練等の人材能力開発研修に大きく分けられる(第3-1-28図参照)。
 (NTTの業務に関する訓練)
 NTTでは,国内電気通信業務の遂行に直接必要な知識と技能を付与するため,全職員を対象に,電話,データ通信等の事業別に訓練が実施されている。この訓練は,さらに,[1]担当職務の遂行能力の向上を目的とする技能向上訓練,[2]新たな技術・サービスの導入に適応させることを目的とする新技術・新サービス訓練,[3]職務の変更があった職員を対象とする職種転換訓練に分けられる。
 61年度の技能向上訓練と新技術・新サービス訓練では,ディジタル交換機や光ファイバケーブル等通信設備の設計・建設・保守に関する各種の訓練が設けられ,通信関連技術の急速な進展に即応し得る技術者の育成が図られている。また,ソフトウェア開発担当技術者や通信端末機器等の営業販売要員の育成のための各種訓練も行われている。
 このほか,事業別訓練の一環として,無線従事者,電気通信主任技術者,工事担任者等の資格取得を目的とする講習コースが設けられ,業務の遂行に必要な資格取得者の育成が図られている。
 (今後の課題)
 NTTでは,電気通信の自由化や民営化に伴い,営業活動の強化,技術研究開発の推進を図るため,現在,教育訓練制度の見直しが行われている。NTTが今後も利用者ニーズに合致し,競争力のある高度で多様な電気通信サービスを提供していくためには,通信関連技術の急速な進展,通信設備におけるソフトウェアの比重の増大等に対応して人材育成を図る必要があり,その面から,訓練方法等の改革が求められている。
 (イ)KDD
 KDDで実施されている教育訓練は,[1]国際電気通信の発展に貢献し得る人材の育成を目的とする人材開発・育成訓練,[2]業務の遂行に必要な知識と技能の付与を目的とする業務・技術訓練,[3]職員の自己啓発を支援する自己啓発援助訓練に大きく分けられる(第3-1-29図参照)。
 (KDDの業務に関する訓練)
 KDDでは,国際電気通信業務の遂行に直接必要な知識と技能を付与する訓練として,業務・技術訓練が設けられている。さらに,この訓練は,配転者訓練,新業務新施設訓練,業務・技術専門訓練,外国語訓練,運用保守訓練等に分けられ,[1]国際電気通信の特定分野に必要とされる専門的な知識・技能,[2]新たに開発・導入された通信設備への対応に必要な知識・技能,[3]運用・保守等の日常業務に関する基本的な知識・技能の付与が図られている。
 訓練の内容をみると,業務専門訓練においては,特に営業活動の一層の強化を図るため,各種業務の販売担当者訓練,高度通信システムコンサルティング訓練等が設けられている。
 また,技術専門訓練と運用保守訓練においては,ディジタル伝送・交換技術等に関する訓練が設けられ,光ファイバ通信システム,ディジタル交換機等の運用・保守・試験や電話交換機ソフトウェアの管理・保守に必要とされる専門的な知識と技能の習得が図られている。
 このほか,業務・技術訓練の一環として,業務の遂行に不可欠な資格取得者の育成を図るため,従来の無線従事者に加え,電気通信主任技術者と工事担任者の資格取得を目的とする養成訓練が新たに設けられている。
 (今後の課題)
 我が国社会経済の国際化の進展に伴い,国際電気通信は飛躍的な発展を遂げ,利用者のニーズもますます高度化・多様化しつつある。
 こうしたニーズにこたえ,KDDがより良質で高度なサービスを提供していくためには,今後も,営業要員の育成強化,ソフトウェア要員の育成,通信設備の高度化等に対応し得る人材の育成を図ることが求められる。
 ウ.放送事業
 ここでは,NHKを取り上げ,その組織内訓練の現状と課題について概観する。
 (NHKにおける訓練)
 NHKで実施されている職員訓練は,組織的に行われる訓練とOJTにより構成されている。組織的に実施される訓練は,[1]新規採用職員を対象とする新採用者研修,[2]職務に必要な知識と技能の向上を目的とする職能研修,[3]管理職を対象とする管理者研修に大きく分けられる。これらのうちの一部は,60年8月に設立された(財)NHK放送研修センターに委託されている。
 職能研修においては,職務遂行に必要な基礎的・専門的な知識と技能の向上と新しい職務に即応する能力の向上を目的に,放送,技術及び営業・事務の職種別にそれぞれ必要な訓練が実施されている。さらに,この研修は,[1]担当業務の基礎的知識の再教育と技能向上を目的とする基礎研修,[2]担当業務の専門的知識の研究,習得及び技能向上を目的とする専門研修によって構成されている。
 また,約1年間の通信教育制度が設けられており,この通信教育制度の中には,無線技術士の資格取得コースが設けられ,放送業務の遂行に不可欠な資格取得者の育成が進められている。
 (今後の課題)
 NHKにおいては,進展する放送技術を駆使して,創造的でより豊かな番組を制作していくとともに,効率的な事業運営を図るため,積極的に職員の能力開発,技能向上に努めることが求められる。
 エ.通信行政
 ここでは,郵政省の電気通信研修所で行われている職員訓練制度を取り上げ,その現状と課題について概観する。
 (電気通信研修所における訓練)
 電気通信研修所における訓練は,[1]新規採用者を対象とする新規訓練,[2]選抜試験合格者を対象とする養成訓練,[3]電気通信に関する専門的な業務・技術知識を修得させる専修訓練,[4]役職者を対象とする特別訓練に分けられている。養成訓練と専修訓練の概要は,第3-1-30表のとおりである。
 (養成訓練)
 養成訓練の一つである本科訓練の1年目では,語学,電気通信法制及び通信工学を重視した広範囲にわたる基礎的な科目を学ぶこととしている。また2年目では,通信行政概論,通信工学,情報処理概論等の電気通信行政に必要な専門的な科目を学ぶほか,セミナー,業務実習の場を通じて訓練生の能力を開発することとしている。
 また,高等科訓練は,業務と技術のコースに分けて実施されている。この訓練では,二つのコース共通に,行政学,憲法,経済学,通信工学等の基礎的な科目と,電気通信行政に必要な国内電気通信法制,通信行政概論等の専門的な科目が設けられているほか,業務実習等の場を通じて知識を更に深めることとしている。
 (専修訓練)
 専修訓練は,目的に応じて,電気通信業務科,電気通信技術科及び電波技術科が設けられており,これら訓練科を通じ,電気通信の業務・技術と電波技術に関する専門的な知識の修得が図られている。
 (今後の課題)
 電気通信の自由化に伴い,電気通信分野は,VAN事業者等の新たな通信事業者の出現,通信システムに対するニーズの高度化・多様化,通信端末機器市場の拡大等の様々な変化が生じている。これに伴い,電気通信行政は複雑化している。
 このため,今後,通信行政に従事する人材を育成するに当たっては,通信行政の役割を認識し,また諸外国の通信行政の動向等をも考慮しつつ,訓練を充実・強化することが必要である。
 (2)学校教育
 ここでは,高度情報社会の実現に向け,通信を支える人材を育成する上での学校教育の果たす役割及び通信に関して実施されている学校教育の現状について概観する。
 ア.初等中等教育現在,小学校,中学校及び高等学校で行われている通信に関連する教育は,第3-1-31表のとおりである。
 新たな通信メディアの出現により社会・国民生活における情報化が急速に進展している今日では,国民の一人一人が豊かで実りある生活を送るため,「読み・書き・そろばん」の能力と同様に,情報及び通信を主体的に選択・活用できる能力を身につけることが不可欠となっている。
 小学校,中学校及び高等学校における普通教育は,このような能力を育成するために重要な役割を果たすとともに,通信に関連する専門的な技術者を育成する上においても,基本的な教育段階として大きく貢献することが期待される。
 また,高等学校の職業教育を主とする学科においては,工業に関する学科の電子関係学科(電子科,電子工学科等),情報技術関係学科(情報技術科等),商業に関する学科の情報処理関係学科(情報処理科等),水産に関する学科の無線通信関係学科(無線通信科等)で通信に関連する教育を行っている。
 これらの学科の数は,55年度の334学科から,60年度は374学科へと増加しており,入学者数も55年度の17,698名から60年度は22,929名へと増加している。これは,近年の情報処理産業の隆盛に伴う情報技術関係学科,情報処理関係学科の増加によるものである。
 イ.高等教育及び専門教育
 (大学における通信に関する教育)
 大学においては,現在,通信に関連する学科として,電気通信工学系の学科が設けられている。この学科では,電磁気学,電気回路理論,通信工学,情報工学,電子回路工学,伝送工学,交換工学,光波通信工学,集積回路工学等通信に関して幅広く知識の習得が行われている。
 電気通信工学系の学科への入学者数をみると,大学への入学者総数と同様に,全体的に横ばい傾向を示し,60年度では2万2,309人となっている(第3-1-32表参照)。
 また,大学卒業者
 (文科系を含む。)の産業別就職状況をみると,通信業への就職者数については,52年度から56年度にかけてほぼ横ばいとなっているものの,57年度から急激な伸びを示し,59年度では約2,400人となっている。また,通信端末機器等の製造にかかわる電気機械器具製造業についても,全体的に著しい増加傾向を示しており,49年度の1万551人から59年度の2万3,749人へと約2.3倍増加し,製造業全体への就職者数に占める割合も59年度では29%となっている。
 大学において専門的な技術教育を受けた人材は,高度情報社会を実現する上で重要な役割を果たすものである。今後は,技術分野と同時に他の分野にも深い知識をもち,通信関連技術の進歩を人間的側面からとらえて情報化社会の在り方を検討していくことのできる人材の育成が重要である。
 (大学院における通信に関する教育)
 電気通信工学を専攻する修士課程入学者数をみると,修士課程への入学者総数とほぼ比例し,50年度の1,465人から60年度の2,618人へと安定的な伸びを示している。一方,博士課程入学者数は,入学者総数が全体的に増加傾向を示しているのに対し,ほぼ横ばいに推移し,60年度においては183人となっている(第3-1-32表参照)。
 大学院修士課程修了者(文科系を含む。)の産業別就職状況をみると,通信業への就職者数は,49年度の173人から59年度の172人へとほとんど変化していないのに対し,電気機械器具製造業については,49年度の1,106人から59年度の2,510人へと2倍以上に増加している。また,博士課程修了者(文科系を含む。)の産業別就職状況も同様に,通信業は49年度の8人から59年度の11人へとほとんど変わっていないのに対し,電気機械器具製造業については,49年度の64人から59年度の101人へと約1.6倍に増加している。
 (短期大学における通信に関する教育)
 短期大学の電気通信工学系の学科数は,50年度の43学科から60年度の33学科へと減少している。しかしながら,同学科への入学者数は,短期大学への入学者総数が全体的にほぼ横ばい傾向を示している中で,50年度の2,592人から60年度の2,756人へと増加している(第3-1-32表参照)。
 また,短期大学卒業者(文科系を含む。)の産業別就職状況をみると,通信業への就職者数は,49年度で446人であったのに対し,59年度では744人となっている。電気機械器具製造業については,全体的に著しい増加傾向を示し,59年度では6,370人となっている。
 (高等専門学校における通信に関する教育)
 高等専門学校においては,通信に関連する学科として,電波通信工学科,電気工学科,電子工学科,情報工学科等の電気通信工学関係の学科が設けられている。
 これらの学科数をみると,高等専門学校全体の学科数がほぼ横ばいであるのに対し,50年度の62学科から60年度の75学科へと増加している。全体の学科数に占める電気通信工学関係の学科数の割合は,60年度で35%となっている。
 入学者数は,50年度の2,710人から60年度の3,325人へと増加している。なお,電波通信技術者の育成を目的とする電波通信学科については,その一部を時代の進展に対応して電子工学科や情報工学科に改組転換しており,50年度の276人から60年度の120人へと減少している(第3-1-32表参照)。
 高等専門学校卒業者の産業別就職状況をみると,通信業への就職者数は,全体的にほぼ横ばい傾向を示しており,59年度では160人となっている。電気機械器具製造業については,増加傾向にあり,59年度では1,699人となっている。製造業全体への就職者数に占める割合も,49年度の26%から59年度の38%へと高くなっている。
 (専修学校における通信に関する教育)
 専修学校においては,通信に関連する学科として電気・電子学科,無線・通信学科,電子計算機学科及び情報処理学科が設けられている。
 これらの学科を有する学校の数は,55年度の94校から60年度の225校へと約2.4倍に増加している。中でも,電子計算機学科を有する学校は13校から35校に,情報処理学科を有する学校は26校から122校へと著しく増加している。また,通信に関連する学科数は,55年度の191学科から60年度の448学科へと約2.3倍の増加となっている。
 さらに,通信に関連する学科への入学者数は,55年度の1万8,145人から60年度の3万4,638人へと大きく増加しており,特に電子計算機学科では約3倍,情報処理学科では約2.5倍となっている(第3-1-32表参照)。
 専修学校は,制度発足以来,教育に対する社会の様々な要請に的確にこたえて発展している。通信の多様化に対応し,専修学校が今後更にその特色を生かしながら,通信に関連する人材の育成に貢献することが期待される。
 (各種学校における通信に関する教育)
 現在,各種学校においては,通信に関連する課程として,電気・電子,無線・通信,電子計算機及び情報処理課程が設けられている。
 これらの課程を有する学校数は,各種学校の総数が減少している中で,55年度の10校から60年度の23校へと増加しており,60年度においては工業に関係する各種学校の53%となっている。
 通信に関連する課程数も,各種学校全体の課程数が減少する中で,55年度の12課程から60年度の35課程へと約3倍に増加している。これを課程別にみると,電子計算機及び情報処理産業の隆盛に伴い電子計算機及び情報処理に関する課程の数は著しく増加しているが,無線通信課程の数は減少している。
 通信に関連する課程への入学者数は,各種学校への入学者総数及び工業関係課程への入学者数が共に減少しているのに対し,55年度の950人から60年度の1,292人へと36%増加している(第3-1-32表参照)。
 各種学校は,技術革新を契機に生み出された多くの職種に対応する職業資格を与える上で,大きな役割を果たしている。各種学校が,通信に関連する各種の資格取得者を育成する上で,今後も大きく貢献していくことが期待される。
 (3)開発途上国における人材育成に対する協力
 開発途上国における通信関係基盤の整備のためには,通信ネットワークの構築というハード面のほかに,通信事業の経営・管理に当たるスタッフと通信ネットワークの運用・保守に当たる技術者の育成という人材面(ソフト面)の整備が不可欠である。開発途上国においては,このような人材が不足しており,大きな問題となっている。特に,電気通信分野は技術革新が急速に進んでいるため,技術者の育成が非常に大きな問題となっている。例えば,高度なディジタル機器を導入しても運用・保守が不十分なため,機器が十分に機能しないという事態が発生している。
 開発途上国が抱えている人材育成に関する主要な問題点は,次のとおりである。
 [1] 急速な技術革新と需要増加に伴う要員の育成が追いつかない。
 [2] 教官及び訓練設備が不足している。
 [3] 訓練を受けた技術者の定着率が悪く,また習得技術を個人化して,他に移転しない傾向がある。
 こうした問題点を解決するため,開発途上国は,新技術及び経営面における訓練に関して,先進国の協力を期待している。具体的には,[1]訓練センターの建設,訓練設備の供与,[2]海外研修に対するフェローシップの供与,[3]経営及び技術に関するセミナー,シンポジウム等の開催,[4]日本及び開発途上国における訓練コースの増設,等について開発途上国から我が国に対し要望が寄せられている。
 これらを踏まえて,我が国としては,長期的視点に立った効果的な協力を官民一体となって行い,開発途上国の期待にこたえることにより,これら諸国の人造り,国造りに貢献していくことが重要である。
 こうした協力の一層の推進を図るため,具体的には次のようなセミナー,シンポジウムが開催された。
 [1] アジア諸国の電気通信技術者養成に関するセミナー
  アジア諸国の電気通信技術者養成の責任者を招いて,60年10月,「アジア諸国の技術者養成の在り方に関するセミナー」が開催された。このセミナーにおいては,各国参加者から,各国における訓練ニーズ,訓練実施における問題点及び我が国に対する技術者養成の期待が述べられ,これを受けて今後の訓練の在り方について討議された。
 [2] アジア・太平洋ヒューマンウェア・シンポジウムITUの推進する電気通信分野の訓練の標準化活動(CODEVTELプロジェクト)の一環として,アジア・太平洋ヒューマンウェア・シンポジウムが,60年11月,郵政省等の主催により,アジア・太平洋地域15か国及びITUが参加して開催された。
  この会合においては,人材管理,訓練二-ズ,訓練分野におけるコンピュータの利用,訓練システム共有の4テーマに分けて討論が行われ,域内各国の訓練情報の収集,分析,訓練方式の共有化,コンピュ一夕利用技法の導入及び開発,訓練開発技法の標準化及び共有,ソフトウェアの共有化,域内訓練センターを相互に結ぶネットワークの設定等,域内の協力体制について勧告が作成された。
 (注)訓練分野の国際協力を,訓練の標準化を図ることにより推進しようとするために設けられたプロジェクト(Course Development in the Field of TeIecommunications)で,ITUでは1965年以来この活動を行ってきている。このプ1ジェクトでは,訓練コースのモジュール化を行い,訓練対象,目的に応じ効率的な訓練を可能にすることを目的とするとともに,作成された訓練コースは,各国が共用することを目指したものである。

第3-1-25図 通信事業体の研究者1人当たりの研究費(60年度)

第3-1-26図 郵便事業の職員訓練体系図

第3-1-27表 郵政大学校及び郵政研修所における訓練の概要

第3-1-28図 NTTの職員訓練体系図

第3-1-29図 KDDの職員訓練体系図

第3-1-30表 電気通信研修所における訓練の概要

第3-1-31表 初等中等教育で行われる通信に関連する教育の概要

第3-1-32表 通信に関連する学科・課程等の入学者数の推移

 

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