昭和61年版 通信白書

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3 電気通信ネットワーク

 我が国の電気通信ネットワークは,その面的拡大,機能の充実を目指して大きく発展してきた。ここでは,電気通信分野における基幹通信ネットワークとして,電報網,電話網,加入電信網,DDX網等を取り上げ,それぞれについて概述する。
 (1)電報網
 電報は,文字・記号を電気的手段により伝達するものであり,電報網は,電気通信ネットワークの中で最も古いものである。
 (電報網の構成)
 電報網は,電報文を中継するための電報中継交換装置,電報文をテープのさん孔により送受信するための加入局装置,電報の受付・配達を行う電報取扱局及びこれらを結ぶ伝送路から構成されている。その形態は星形と網形の複合形である(第2-2-10図参照)。
 (新電報そ通システムの構築)
 電報は,近年,加入電話の普及,ファクシミリ通信等の多様な通信手段の発展に伴い,その緊急通信手段としての性格が変容してきており,慶弔用としての利用は年々増加しているものの,利用通数は大幅に減少している。電話等の普及により,電報は,緊急通信手段という意味において,通信メディアとしては衰退しつつあると考えられる(第2-2-11図参照)。
 こうした電報通数の減少とともに,最近では,中継交換装置等の陳腐化,老朽化が著しくなってきたため,NTTでは,DDXパケット交換網を利用した新電報そ通システムを構築し,現在,北海道,北陸、中国及び関東の一部で運用中であり,62年度を目途に全国導入を行う予定である。
 新電報そ通システムは,第2-2-12図に示すように,電報自動処理装置,電報集信装置,電報受付入力装置及び電報出力装置から構成され,従来の電報網とは大きく変わっている。
 新電報そ通システムの構築により,電報の受付と送信が同時に行え,従来の加入局におけるテープへのさん孔等の作業が不要になるとともに,日時指定の着信処理等がネットワーク内で自動的に行われるようになり,効率的な電報サービスの提供が図られている。
 (2)電話網
 電話は,今日では,日常生活や企業活動に欠くことのできない基幹的な通信手段として広く国民に利用されている。
 我が国の電話網は,一の加入区域内に形成されている市内電話網と,異なる加入区域の交換機相互を結んで形成されている市外電話網とに大きく分けられる。
 (市内電話網の構成)
 市内電話網は,電話機,交換機及びこれらを結ぶ伝送路から構成されている。
 市内電話網の形態は,地域の電話需要予測等に基づき,市内電話網を最も経済的に構築するよう,決定される。人口が多く,電話の需要が多い加入区域等では,交換機を複数設置して,交換機相互を更に接続した網形態を採っている。これに対し,人口の少ない区域等では,一つの交換機にすべての電話機を接続させる網形態を採っている(第2-2-13図参照)。
 また,加入区域は,時代とともにその規模が拡大してきている。47年には,それまで地域によって異なっていた加入区域の範囲を,原則半径5kmとする新設定基準が定められた。その後,電話機と交換機を結ぶ電話回線の伸長が可能となり,電電公社の第6次5か年計画(53〜57年度)においては,加入区域の半径は7kmに拡大され,ほぼ全国が加入区域としてカバーされるようになった。
 (市外電話網の構成)
 市外電話網は,第2-2-14図に示すように,総括局,中心局,集中局及び端局の4段階構成の形を採って交換機相互を接続している。それぞれの階位の局は上位局に集束される形で星形網を構成している。また通話量の多い局間は直接に結ばれ,全体としては星形と網形な組み合わせた複合形の網構成となっている。
 この網構成の原型ができたのは昭和10年ごろである。その後,経済性や信頼性を考慮したネットワークの整備,拡張が行われ,現在では,交換機相互を経済的かつ効率的に結んだ全国規模の電話網が形成されている。
 (電話網の中枢的役割を果たす交換機)
 電話網における交換機には,不特定多数の利用者相互を接続して通話を可能にする機能と,電話サービスの信頼性を確保する機能がある。例えば,電話回線が故障した場合でも,他の電話回線による接続を可能とするうかい機能がある。また,交換機には,通話中にかかってきた電話に応答できるキャッチホンサービスの実現等,電話サービスの高度化を図る役割もある。
 (交換技術の発展)
 電話の交換は,当初手動であったが,大正15年に最初の自動交換機としてステップ・パイ・ステップ交換機が導入された。その後,昭和31年に交換機内の種々の動作を集中的に制御するクロスバ交換機が我が国で開発された。また,半導体技術の著しい進歩とコンピュータ技術の発展に伴い,46年に蓄積プログラム制御方式による電子交換機が実用化された。さらに,ディジタル技術の進展により,57年に時分割多重化によって交換を行うディジタル交換機が実用化された。第2-2-15図に示すとおり,市内交換機は新しい交換機に移行しつつある。
 (全国に張り巡らされた電話回線)
 電話回線は,電柱に架設,地下に埋設,とう道内に敷設されるなど,外部要因の影響を受けやすく,また,一箇所でも故障が生じれば,通信に支障を来すため,その保守は極めて重要である。
 電話回線数は,経済成長と大都市への人口流入等による市外通話需要の急増に応じて年々増加しており,現在では,全国津々浦々まで電話回線が張り巡らされている。市外回線数の推移は,第2-2-16図のとおりである。
 (伝送技術の発展)我が国の電話回線は,有線,無線の両技術の開発により,伝送速度の向上,大容量化が行われてきた。有線については,31年に同軸ケーブル方式が実用化された。現在では,光ファイバケーブル方式の開発により,データ通信等において,一層の広帯域,高速の通信サービスが可能となっている。
 また,無線については,マイクロ波方式の開発により,大容量化が図られるとともに,58年からは,通信衛星による中継伝送が可能となった。衛星通信は,広域性,大容量性等,他の伝送方式に比べて優れた特徴を有しており,今後の電話,データ通信等の高度化に貢献していくものである。
 (多様なニーズにこたえる電話機)
 電話が全国的に普及している今日では,新規架設数は減少傾向にあり,加入電話等の契約数の伸びは緩やかになっている(第2-2-17図参照)。
 電話機の種類は、通信の自由化及び利用者ニーズの多様化により,次第に多くなり,今後,利用者の好みによる様々な電話機が電話回線に接続されることが予想される。現在では,従来から用いられている回転式電話機のほかに,押しボタン式ダイヤル電話機をはじめ,家庭や事務所内における電話利用の高度化を図った親子電話,ホームテレホン,ビジネスホン等が年々数多く市場に現れている。
 (電話網利用の多様化)
 電話網は音声伝送を目的としたものであるが,公衆法の改正以後,企業等において,データ通信やファクシミリ通信等の音声以外の通信が電話網を利用して盛んに行われるようになった。また,60年度には,パソコン通信サービスが開始されるなど,今後,企業のみならず,個人においても,電話網を利用した様々な通信の需要が伸びていくものと予想される。
 (電話網の成熟)
 電話網は,その規模,品質の両面で大きな成長を遂げ,基本的には,全国規模のネットワークとして完成をみた。さらに,電話網を基盤として,移動体通信網,ファクシミリ通信網,ビデオテックス通信網等の様々なネットワークが構築されており,電話網は電気通信ネットワークの中枢的存在となっている。
 今後とも,トラヒック変化やサービス多様化への対応と信頼性の向上を目指し,国民のニーズにきめ細かくこたえた電話サービスを提供していくことが必要である。
 (3)加入電信網
 加入電信は,文字伝送を電気的手段により行うものであり,一般に「テレックス」と呼ばれている。加入電信は,電報のもつ記録性や電話のもつ即時性という特質を兼ね備えているほか,不在時でも受信が可能になるなどの特徴を有している。また,公衆法の改正により,加入電信網によるデータ通信が可能になった。
 (加入電信網の構成)
 加入電信網は,電信を中継,交換するための交換装置,電信の送受信を行うための宅内装置,複数の宅内装置を集約させて中継線として交換装置に接続するための集信装置及びこれらを結ぶ電信回線により構成されている。交換装置と集信装置によって構成されている網形態は,市外電話網に準じているが,契約数が電話ほど多くないことから,総括局,中心局及び集中局からなる3段階構成となっている(第2-2-18図参照)。
 (加入電信網の発展)
 加入電信網の加入区域は,31年のサービス開始当初は,東京及び大阪の2地域だけであった。その後,名古屋,神戸,横浜,福岡,札幌等に相次いで交換装置や集信装置が導入され,現在では加入区域数1,045と,全国規模の加入電信網が形成されている。
 (需要が減少している加入電信)
 加入電信契約数の推移は,第2-2-19図のとおりである。サービス開始以来,契約数は加入区域数の増加とともに順調な伸びを示していた。しかし,データ通信,ファクシミリ通信等の発展により,文字伝送のメディア間の転換が進み,50年ごろから契約数の伸びは鈍化し,51年度末の7万6千加入をピークに契約数は著しく減少している。
 (DDX回線交換網との設備共用)
 最近では,このような契約数の減少傾向とともに,交換装置等の陳腐化,老朽化が進み,機能追加等への柔軟な対応が困難になってきた。
 一方、技術及びサービスの面で加入電信網と類似性のあるDDX回線交換網が構築されるようになった。
 こうした状況にかんがみ,NTTでは,加入電信網のDDX回線交換網との設備共用を図り,加入電信回線を集束,多重化してDDX回線交換網に接続するための多目的集線多重化装置等を開発し,60年度には,設備共用による加入電信サービスの運用を一部開始した。
 (4)DDX網
 DDX網は,高品質かつ高速なデータ通信を実現するためのネットワークであり,データ通信システムを支える基盤となっている。
 電話網や加入電信網を利用してデータ通信を行うには,通信速度や接続時間等の面において限界がある。そこで,ディジタル技術の進展を背景に,データ通信の発展に適した新しいネットワークとして,DDX網が構築されるようになった。
 (回線交換網とパケット交換網)
 DDX網には,回線交換網及びパケット交換網の二つの独立したネットワークがあり,それぞれ54年,55年にサービスが開始された。
 回線交換網は,利用者からのダイヤル操作により回線を設定し,データを送受するネットワークである。回線交換網は,第2-2-20図に示すように,回線交換機,加入者回線を集束・多重化するための集線多重化装置,利用者がデータを入出力するためのデータ端末装置,これらを結ぶディジタル回線等から構成されており,網形態は基本的には網形である。回線交換網では,高品質なデータ通信を実現するためにデータはすべてディジタル信号で送受信され,交換もディジタル信号のまま行う時分割交換方式が採られている。
 一方,パケット交換網は,送信すべき情報をパケットと呼ばれる一定の大きさのブロックに分割し,パケットごとに蓄積しながら空き回線を選択して伝達するネットワークであり,ネットワーク全体の回線の使用効率が高められる。パケット交換網は,第2-2-21図に示すように,パケット交換機,パケット多重化装置(データをパケット形態にし,かつ,加入者回線を多重化するための装置),データ端末装置,これらを結ぶディジタル回線等から構成されており,網形態は基本的には回線交換網と同様である。
 これらのネットワークは,第2-2-22表に示すように,それぞれ異なる特徴を有している。
 (利用が増大するDDX網)
 DDX網の契約回線数の推移は,第2-2-23図のとおりである。回線交換サービス,パケット交換サービスとも年々急増しており,特にパケット交換サービスの58年度以降の伸びは著しい。このように,DDX網によるサービスが急速に普及したのは,主として通信料金の遠近格差が電話網等に比較して小さく,また,特にパケット交換網においては情報量課金であるため,マンマシンインタフェースを必要とするデータ通信に適した料金体系になっているためである。
 利用者ニーズにこたえ,サービス加入区域も年々拡大している。サービス開始当初は回線交換網が4区域,パケット交換網が7区域であったが,60年度末現在ではそれぞれ215区域,461区域と,大幅な伸びを示している。
 また,パケット交換網の利用範囲を更に拡大するため,NTTでは,60年度から電話網とパケット交換網の接続(第2種パケット交換サービス)を可能にし,電話網の端末からもパケット交換サービスが受けられるようになった。このサービスのサービス区域は,60年度末現在,563区域となっている。
 DDXサービスは,製造業,金融・保険業,情報通信サービス業等において多く利用されている。また,利用形態としては,回線交換サービスでは預金・為替・信託処理,受託計算等が,パケット交換サービスでは販売・在庫管理,情報検索,保険業務処理等がそれぞれ多くなっている。
 DDX網は,今後のデータ通信,ファクシミリ通信等の非電話系サービスの発展を支えるものであり,今後とも提供区域の拡大と機能の拡充を図っていく必要がある。
 (5)ファクシミリ通信網
 ファクシミリは,文字や図形を伝送するもので,漢字を使用する我が国に適した,また,記録性を有する通信手段として用いられている。
 ファクシミリ通信網は,ファクシミリ通信サービスを効率的かつ経済的に提供するためのネットワークであり,DDX網と並ぶ非電話系通信の基盤となっている。
 公衆法の改正により可能となった電話網利用によるファクシミリ通信には,[1]大量の画面を遠距離に送る場合等においては通信料が割高になる,[2]端末の送受信速度を高速にするには,端末が高価になる,などの問題があった。さらに,ファクシミリ通信機能の高度化や多彩なサービス提供に対する社会の要望が年々高まってきたため,56年,電電公社により,新しくファクシミリ通信網が構築され,より効率的,経済的なファクシミリ通信サービスが開始された。
 (ファクシミリ通信網の構成)
 ファクシミリ通信網は,蓄積変換装置,ファクシミリ通信機能を有する交換機(以下「TS-FX」という。),ファクシミリ信号をコンピュータで処理するためのファクシミリ・データ変換接続装置,ファクシミリ端末,これらを結ぶ伝送路等により構成されている。網構成は基本的には星形である(第2-2-24図参照)。
 ファクシミリ通信網は,DDX網のように発信端末から着信端末まで独立したネットワークにはなっておらず,端末からTS-FXまでは電話網を利用する形態となっており,単独にネットワークを構築する場合に比べ,システムの経済化,サービス地域の容易な拡大が可能である。
 ファクシミリ端末の開発は,主として通信速度の向上を目指して行われてきたが,種々のファクシミリ端末が市場に出回ったので,これら相互間の通信を確保する必要性が国際的にも早くから認識された。現在ではCCITTにおいて,G1,G2,G3及びG4の4方式が標準化されている。郵政省では,これに基づき,G2,G3及びG4について推奨通信方式を告示している。
 (ファクシミリ通信網の発展)
 ファクシミリ通信網は,当初,電話網にTS-FXを介して蓄積変換装置をアナログ回線で接続させた簡易なものであった。その後,59年に,ファクシミリ・データ変換接続装置の導入,蓄積変換装置とTS-FXを結ぶ回線のディジタル化をはじめ,ネットワーク全体の機能の拡張が行われた。これにより,受信時にパスワードを用いる親展通信やプロトコル変換による異種端末間の通信が可能になるとともに,コンピュータとの接続により,データ通信の利便性を兼ね備えたファクシミリ通信が可能となった。
 (利用が増大するファクシミリ通信網)
 ファクシミリ通信網サービスの契約数は,サービス開始以来,毎年急激な伸びを示しており,60年度末現在,対前年度末比154%増の4万6,271となった(第2-2-25図参照)。
 また,ファクシミリ通信網サービスの提供区域もサービス開始当初の5区域から60年度末現在の536区域(都市)へと大幅に拡大され,全国主要都市でサービスが提供されるようになった。
 このような急速な普及の理由は,ファクシミリ通信が,[1]電話にはない記録性を有していること,[2]加入電信等に比べ端末操作が容易であること,などである。そのため,現物性を要しない記録性の通信として中枢的な地位を占める可能性を有しており,今日では,企業はもとより,個人事業所等にまで需要の層が広がりつつある。
 ファクシミリ通信は,一対一の通信がその基本形態となっているが,最近では,本店から支店への同報通信やファクシミリ端末をコンピュータの入出力機器として利用するデータ通信,LANの構成要素として用いる方法等,その形態も多岐にわたっている。
 (ファクシミリ通信網の高度化を目指して)
 ファクシミリが広く国民生活の各領域に普及するにつれて,ファクシミリに対するニーズは,画質の向上,付加機能の拡充等,より高度化・多様化している。こうしたニーズの充足を図るため,NTTでは,59年度のファクシミリ通信網の機能拡張に続いて,B4判の相互通信,テレホンサービスのファクシミリ版であるファクシミリ案内等を可能にすべく機能の拡充を進めている。
 ファクシミリ通信網の今後の発展のためには,画像処理技術を中心とした積極的な技術開発を行うことにより,ファクシミリ端末を極力簡素化し,端末機器のコスト低減を更に図るとともに,ファクシミリ通信網の一層の機能の高度化,経済化を進め,幅広いサービスを提供していくことが必要である。
 (6)専用線利用の電気通信ネットワーク
 専用線は,特定の二者間で通信を行うためのものであり,その構成は端末と伝送路からなる最も単純な直線形である。専用線によるサービスは,明治39年の東京-横浜間の電話専用サービスがその始まりである。近年においては,電話,電信のほか,データ伝送,映像伝送,新聞の紙面伝送等に広く利用されている。
 (増大する専用回線数)
 専用回線数は第2-2-26図のとおり,著しい伸びを示しており,60年度末現在53万6,774回線となっている。このように専用回線に対する需要が増加しているのは,専用線が企業等における特定地点間の頻度の多い通信に適しており,しかも専用線で扱える情報が文字,音声,画像等と幅広いためである。
 59年度には,伝送速度を一層向上させた高速ディジタル伝送サービス及び衛星通信サービスが電電公社により開始され,それぞれの回線数は60年度末現在で640回線及び4回線となった。
 (専用線を利用したデータ通信システム)
 専用線は,当初,その即時性に着目した利用が主であったが,専用線による様々な種類の通信が可能になった今日では,その位置付けは利用者が望む通信システムを構築するための一要素に変わってきた。
 専用線を利用したデータ通信システムの構築はこの現れの一つである。データ通信システムの網形態については,当初は,大型コンピュータを時分割で共同利用する方式が経済的に有利であったため,コンピュータを中心に端末を接続させた星形が主であった。その後,小型コンビュータが登場し,その性能の向上,価格の低減も図られたため,データやプログラムを使用頻度の高い場所に設置して管理を行いやすくすることなどを目的とした分散型システムが多く出現するようになった。
 電電公社の特定通信回線(データ通信のための専用回線で,60年度からは一般の専用線に包含された。)及びこれを用いたデータ通信システムのそれぞれの数の推移は第2-2-27図のとおりである。
 (高速ディジタル回線による通信ネットワーク)
 高速ディジタル伝送サービスは,その高速・大容量性から,電話,データ伝送,ファクシミリ伝送,高精細静止画伝送,テレビ会議等様々な種類の通信が同一の回線で可能になる。
 こうした特徴を有する高速ディジタル伝送サービスの開始と電気通信の自由化とがあいまって,企業等においては,高速ディジタル回線による社内ネットワークの拡大・統合,さらには,関連企業をも包含した企業間通信ネットワークの構築が進められている。その例としては,金融業等におけるコンピュータ間のファイル転送システム,本社-支社間のテレビ会議システム,LAN相互間通信システム等がある。
 また,マルチメディア多重化装置の開発により,高速ディジタル回線において,音声,データ等異なるメディアの多重化が容易になったが,最近では,この装置を更に機能拡張し,1台に複数の高速ディジタル回線を接続して多地点間を結ぶディジタル通信ネットワークを構築する動きがある。
 (専用線による電気通信ネットワークの今後の課題)
 専用線は,電気通信ネットワークの構築のために重要な手段となっていくと考えられる。このため,専用線の高信頼化の一層の推進,専用線利用技術の開発等が,今後重要である。
 (7)有線放送電話網
 有線放送電話は,有線ラジオ放送設備を用いて電話業務を行うものであり,農漁業地域において簡易な広報連絡手段として利用されている。
 有線放送電話網は第2-2-28図のとおり,多数共同加入方式による星形である。
 センターは,放送における番組送出機能のほか,電話における交換機能を兼ね備えている。また端末は,放送と電話の両方の機能をもつスピー力付きの電話機が使用されている。
 さらに,NTTと接続契約を結べば,オペレータを介して電話との通話が可能となる。
 当初,有線放送電話は,普及の遅れていた電話の代替メディアとして機能していたが,電話の普及が進むにつれて,機能の変化が生じてきている。今後は,コミュニティ放送,緊急放送等を低コストで提供できる,地域情報通信メディアとしての役割が期待されている。
 (8)国際通信ネットワーク
 国際通信ネットワークは,国内通信ネットワークとの接続部分と国際間を結ぶ伝送路部分の二つに分けることができる(第2-2-29図参照)。
 KDDの国際交換局は,国際間の回線の設定,相手国との間で必要な制御情報の授受等の機能を有し,円滑な国際通信を実現するための中枢的役割を果たしている。また,電話,テレックスのほかに,データ伝送サービスのVENUS-Pを提供するためのパケット交換機能をもつ国際交換局もあり,国際通信の高度化が図られている。
 一方,国際間の伝送手段として,現在,海底ケーブル,通信衛星,対流圏散乱波及び短波の4種類があるが,このうち大部分は海底ケーブル及び通信衛星である。
 (世界に広がる海底ケーブル)
 海底ケーブルによる国際通信は,2国の海底ケーブル陸揚局間を結んで行われる通信である。
 現在我が国には,二宮,直江津,浜田等の5か所に海底ケーブル陸揚局があり,これらの陸揚局から米国,ソ連,東南アジア等へ向けて8条の海底ケーブルが敷設されている(第2-2-30図参照)。
 また,世界的にも,海底ケーブルは増加しており,近年では,先進諸国間のみならず,東南アジア,インド洋海域の諸国も建設計画を推進しつつある(第2-2-31図参照)。
 海底ケーブルは,陸上で使用するケーブルに比べて建設,保守が困難であることから,長寿命の海底中継器の開発,波浪によるケーブルの移動や船舶の錨等による切断や損傷を防ぐためのケーブル補強方法の開発等が行われてきた。また,回線の大容量化を目指した研究開発が進められており,我が国では,現在,電話級換算2,700回線の容量をもつ海底同軸ケーブルが日本-韓国間に敷設されている。
 (大容量通信を可能とする国際通信衛星)
 衛星による国際通信は,赤道上空約3万6千kmの静止軌道上に打ち上げられた通信衛星を用い,地球局から発射された電波をこの通信衛星で中継することにより行われる通信である。地球局には,遠距離の無線通信を可能とするために,強い電波を送出するための大出力送信機,電波を効率的に送受信するためのパラボラアンテナ等が設置されている。
 現在我が国には,茨城と山口の2か所に地球局があり,それぞれが太平洋上,インド洋上の通信衛星を経由して世界各国との間で国際通信を行っている。また,山口の地球局は,太平洋及びインド洋上のインテルサット衛星を常時正常に作動させるための追跡・管制局の一つになっている(第2-2-30図参照)。
 世界的には,現在,インテルサット<4>-A号系衛星及び<5>号系衛星が中心となって,各地球局間の通信を実現している(第2-2-31図参照)。また,主な通信衛星の配置は,第2-2-32図のとおりである。
 衛星通信は,その広域性,大容量性から,多地域相互の通信,テレビジョン伝送等の広帯域伝送が可能であり,国際通信を飛躍的に発展させる大きな要素となっている。1965年,インテルサット<1>号系が大西洋上に打ち上げられて以来,通信衛星の大容量化を目指して開発が進められてきた。現在打ち上げられている<5>号系は,電話級換算約1万2,000回線〜1万4,000回線及びテレビジョン回線2回線と,<1>号系の50倍もの伝送容量をもっている。
 (国際通信の発展を目指して)
 増大し続ける国際通信に対する需要にこたえて,国際通信ネットワークを発展させるためには,光ファイバ海底ケーブルの実用化と通信衛星の大容量化が必要である。
 KDDでは,光ファイバ海底ケーブルによる第3太平洋横断ケーブル(TPC-3)の建設(63年度完成予定)を進めるとともに,通信衛星の大容量化を目指した周波数多重利用の研究,通信衛星の安全性・信頼性に関する研究等を行っている。

第2-2-10図 電報網の構成

第2-2-11図 電報通数の推移

第2-2-12図 新電報そ通システムの構成

第2-2-13図 市内電話網の構成

第2-2-14図 市外電話網の構成

第2-2-15図 市内交換機方式別端子数の推移

第2-2-16図 市外回線数の推移

第2-2-17図 加入電話等契約数と新規架設数の推移

第2-2-18図 加入電信網の構成

第2-2-19図 加入電信契約数の推移

第2-2-20図 DDX回線交換網の構成

第2-2-21図 DDXパケット交換網の構成

第2-2-22表 回線交換網とパケット交換網の特徴

第2-2-23図 DDXサービス契約回線数の推移

第2-2-24図 ファクシミリ通信網の構成

第2-2-25図 ファクシミリ通信網サービス契約数の推移

第2-2-26図 専用回線数の推移

第2-2-27図 特定通信回線数とデータ通信システム数の推移

第2-2-28図 有線放送電話網の構成

第2-2-29図 国際電気通信ネットワークの概要

第2-2-30図 我が国の国際電気通信伝送路

第2-2-31図 世界の国際電気通信ネットワーク(60年度末現在)

第2-2-32図 主な通信衛星の静止軌道上配置(60年度末現在)

 

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