昭和61年版 通信白書

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1 通信ネットワークの役割

 (国民経済に不可欠な通信)
 通信は,電力,ガス等のエネルギーや水道と同様に,社会経済活動のあらゆる場面で必要とされている。手紙を書く,電話をかける,テレビジョン放送の番組を見るといった私的なものから,企業活動におけるテレックス,ファクシミリ,データ通信等に至るまで,通信の利用は,極めて広範囲にわたっている。データ通信を例にとっても,全国の金融機関のシステム(新全国銀行システム等),「みどりの窓口」等の各種の座席予約システム,地域気象観測システム(アメダス),給水コントロ一ル,交通管制等,様々に利用されている。
 現在,我が国の情報化の進展には,目覚ましいものがある。今後,情報の価値は更に高まり,情報の生産・流通・消費活動が重要になっていくと考えられる。通信は,この活動を一層活性化させるとともに,国民経済にとってますます不可欠なものとなる。
 (情報流通を支える通信ネットワーク)
 通信ネットワークは,情報を流通させるために必要な種々の構成要素が有機的に結合したものである。ネットワークの一般的な例には,鉄道の線路,電力線,水道の配管等がある。通信ネットワークも,これらと同様に,財・サービスを,空間を越えて伝達するために構築されたものである。
 通信ネットワークの特徴は,[1]目に見えないため利用者に理解されにくい,[2]情報を伝達に適した形に変換する必要があるなどネットワークの制御が複雑である,[3]伝送路に有線,無線が利用できることなど多様なネットワークの構築が可能である,[4]ネットワークに入力される情報の発生がランダムである,などである。したがって,通信ネットワークの建設,保守等に当たっては,これらの特徴を十分に踏まえて行う必要がある。
 (通信ネットワークの重要性)今山通信ネットワークは,人と人とのコミュニケーションを行うにとどまらず,データ通信にみられるように,企業等に不可欠な社会システムとしての機能を有するようになった。さらに,通信ネットワークは,ニーズの高度化・多様化,技術の発展により複雑化し,座席予約システムのように,全国を一つのシステムでカバーする巨大な規模のものや,全国銀行データ通信システムのように,複数の通信システムが相互に接続され,一体化するものが現れている。企業活動等においては,複雑かつ大量の通信を行うことが必要とされ,社会の通信ネットワークに対する依存度は,極めて高くなっている。
 また,通信ネットワークが複雑化,巨大化し,これに対する依存度が高まると,通信ネットワークの一部に障害が起きた場合,それが社会全体に多大な影響を与える可能性がある。これまでに,電話局火災や通信ケーブル切断事故等によって,通信ネットワークに障害が起きているが,その時の社会的混乱は,極めて大きなものであった。
 (インフラストラクチャーとしての通信ネットワーク)
 通信ネットワークは,通信インフラストラクチャーの物的な基盤である。社会基盤の一つとして,通信ネットワークの整備を行うことは,通信インフラストラクチャーの充実につながるものである。
 今日,通信ネットワークは,新たな飛躍の時期を迎えている。通信ネットワークの目的は,量的充足の達成から,高度化・多様化する二一ズへの対応へと変化した。さらに,電気通信分野の自由化により,マーケット主導の通信ネットワークの構築が行われるようになった。電気通信市場は,独占から非独占へと構造が変化し,経済ベースによる通信ネットワークの構築が図られるようになった。
 こうした中で、今後,通信ネットワークは,利用者ニーズにこたえながら,多数の事業者の創意工夫により構築されることとなる。しかし,通信ネットワークの構築には,巨大な投資と長い建設期間が必要である。電気通信ネットワークを例にとると,日本電信電話公社(以下「電電公社」という。)の28年から59年までの設備投資累計額は約25兆円であり,全国自動ダイヤル即時網の完成までには約80年という期間を要した(第2-1-1図参照)。また,通信ネットワークがより良いサービスを目指し,高度情報社会を形成していくためには,それぞれの通信ネッワークが多様性をもちながら,調和を保ちつつ発展していく必要がある。
 こうしたことから,今後は将来を見通し,計画的な通信ネットワークの構築を図ることが一層重要である。

第2-1-1図 電電公社の設備投資額(28年度からの累計)
 

第2章第1節 情報流通と通信ネットワーク に戻る 2 通信ネットワークの構造 に進む