昭和61年版 通信白書

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第2節 通信政策及び通信サービス

 1 通信高度化のために


 (1)電気通信の研究開発と地域高度化の促進のための環境整備
 21世紀に向けて我が国は,情報化,国際化,技術革新(ハイテク化)等の大きな潮流に対応し,国民生活の一層の充実,産業構造の転換・高度化等を図っていく心要がある。こうしたことから,民間事業者の資金的・経営的能力を活用して各種の基盤的施設の整備を図るため, 「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」(以下「民活法」という。)が第104国会で成立し,61年5月30日に公布・施行された。
 当該民活法は,郵政省のほか、国際会議場・見本市場、港湾業務ビル等の整備のため,通商産業省,運輸省及び建設省の共管である。郵政省においては,民間事業者の能力を活用し,電気通信の研究開発と地域の情報化の促進の基盤となる施設の整備を行うこととしている。
 郵政省関係の民活法対象施設は,[1]電気通信分野の研究開発のすそ野を人的,面的に拡大していくための中核施設である電気通信研究開発促進施設(2号施設)及び[2]地域において電気通信の高度化の基盤を形成しその普及促進を促すための拠点施設である電気通信高度化基盤施設(4号施設:テレコムプラザ)である。
 民活法及び関係政令の施行を受けて,郵政大臣及び建設大臣は,上記の対象施設について民間事業者の能力を活用して,その整備を推進するに当たってのガイドラインとして,電気通信研究開発促進施設については6月30日に,また,電気通信高度化基盤施設については7月31日に,それぞれ基本指針を策定し,公表した。
 今後,具体的プロジェクトに対して民活法による税制等の優遇措置を講ずるため,整備計画の認定を行うこととなるが,各地域における民活プロジェクトの多くはいまだ構想段階にあり,その具体化を円滑に推進するための環境整備を図る必要がある。
 (2)地域の高度情報化の推進
 ア. 「テレトピア」構想から計画へ
 郵政省が推進している未来型コミュニケーションモデル都市構想(テレトピア構想)は,地域振興における通信の重要性を踏まえ,モデル都市に様々なニューメディアを導入し,全国的普及の拠点とするとともに,その実用的運用を通じて地域社会に及ぼす効果や影響,問題点の把握等を行い,地域社会の高度情報社会への円滑な移行を図ることを目的とした総合的施策である。
 [1] モデル都市の指定
  60年度においては,モデル都市の第1次指定の追加及び第2次指定が行われた。
  第1次指定については,基本計画が提出された全国52地域のうち20地域を59年度に「テレトピア指定地域」として指定したが,60年10月及び11月に14地域を追加指定したところである。
  また,これに続く第2次指定については,全国43地域から希望が出されたが,その後提出された基本計画(29地域)を指定基準に基づき精査し,61年3月に19地域を「テレトピア指定地域」として指定した。
  なお,10地域については,基本計画の内容,推進体制の確立等の点で,一層の充実・強化を図る必要性が認められるため,「テレトピア整備推進地域」としたが,今後の各地域の整備状況を考慮し,指定地域としていく予定である。
 [2] モデル都市構築の推進状況
  テレトピア指定地域のモデル都市では,各地域の特性に応じて,目標とするテーマやテレトピアタイプを設定し,様々なニューメディアを活用した高度な情報通信システムの構築を進めている。
  53の指定地域で導入が予定されているシステム数は,224システムと多数になっている。これらは,現在,各地域で構築が進められており,64年度までには,その大部分が運用を開始する予定である。61年3月末現在では,このうち29システム(部分運用を含む。)が稼働している。
  また,これらのシステムの構築・運用を行う事業主体は,地方公共団体(25%),第三セクター(29%),民間企業(18%),その他組合(17%),未定(11%)となっており,第三セクターでは,61年8月末で21法人が設立されている。
 イ.電気通信高度化基盤施設(テレコムプラザ)の整備促進
 テレコムプラザは,地域において高度な電気通信システムを運用するためのセンター機能を備え,かつ,地域の住民,企業等が,最新の電気通信システムを実際に体験し,活用するための「場」として電気通信の利用促進機能を併せ備えた複合型施設であり,地域において電気通信の高度で多様な利用の拡大,定着を促進するための拠点施設である。さらに,当該施設は,地域コミュニティの形成,既成市街地の活性化,都市機能の分散等の地域開発を進めるに当たって,当該地域の情報通信基盤整備の中核となり,市民生活及び企業活動等の活性化に大きく寄与するものである。
 (3)技術開発推進体制の整備
 ア.基盤技術研究促進センターの設立と出融資業務の開始
 基盤技術研究促進センターは,基盤技術研究円滑化法に基づき,民間において行われる基盤技術に関する試験研究の促進機関として,60年10月1日に設立された。
 同センターの主要事業は,民間において行われる基盤技術に係る試験研究に対し,出資及び貸付けを行うもので,その条件の概要は第1-2-1表及び第1-2-2表のとおりである。
 60年度における基盤技術の試験研究に対する出資は,合計25件20億円で,うち電気通信関係は14件10億円と報道発表された。電気通信関係の出資先の例としては,(株)エイ・ティー・アール通信システム研究所,(株)エイ・ティー・アール自動翻訳電話研究所,(株)エイ・ティー・アール視聴覚機構研究所,(株)エイ・ティー・アール光電波通信研究所やテレトピア推進法人等がある(第1-2-3表参照)。また,基盤技術の試験研究を行う企業等に対する融資は,合計60件20億円で,うち電気通信関係は26件10億円と報道発表された。
 イ.国際電気通信基礎技術研究所の設立
 電気通信分野の基礎的,創造的研究の推進により,我が国の自主技術の蓄積と研究開発面での国際的貢献を行うため,内外に開かれた電気通信の基礎技術を研究する研究所の設立構想が生まれた。
 この構想について,産業界,学会を中心に検討が行われた結果,総合的に研究推進事業を行うとともに基礎的研究を支援する「(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATRインターナショナル)」が61年3月22日に設立された。
 同研究所は,既に大阪市で基礎的研究を行う第1-2-3表に掲げる四つの会社を支援するなど暫定的に活動を行っているが,64年度には現在建設が進められている関西文化学術研究都市内に移り,その中核施設となることが期待されている。
 ウ.電気通信研究開発促進施設
 民活法の対象である電気通信研究開発促進施設は,地域における電気通信技術に関する研究交流を促進するとともに研究開発の効率化・経済化を図り,研究開発の人的・面的すそ野を拡大するため,電気通信技術に関する研究開発を行う者が広く利用できる施設として,研究開発施設と会議場・研修施設その他の共同利用施設とが一体的に設置されるものである。当該施設は,全国各地に整備されることが期待されており,具体的な候補としては,国際電気通信基礎技術研究所がある。
 (4)新しい電気通信システムの開発
 電気通信技術の発展,利用者ニーズの高度化・多様化,電気通信事業法(以下「事業法」という。)等の施行による競争原理の導入及び端末設備の自由化に伴い,インテリジェント化・複合化した端末機器や,高度な通信処理機能を有するネットワーク等の開発が進められている。
 こうしたことから,郵政省では,電気通信の高度化を図るため,高度情報社会において必要となる電気通信システムについて,推奨通信方式の制定等を通じて,その開発を推進している。
 ア.電子メール通信電子メール通信は,通信網の蓄積・転送機能を利用して,データ,文書,画像等のメッセージ情報を伝達するものであり,今後の普及が期待されている。60年10月には,電気通信技術審議会において,CCITT(国際電信電話諮問委員会)のメッセージ通信システム(MHS)勧告をベースにパソコン用電子メール通信プロトコルが取りまとめられ,60年11月からNTTにより実験サービスが実施されている。
 イ.ファクシミリG4機
 現在,アナログ電話網を利用するG3機が広く普及しているが,デイジタル網を利用し,より高速かつ高品質のファクシミリ通信を実現するG4機について,郵政省は,60年3月に推奨通信方式を告示した。60年12月には,G4機の相互接続試験が実施され,参加13社の装置が相互に通信可能であることが確認された。これに伴い,今後G4機の実用化,普及が進展するものと期待される。
 ウ.ホームバス
 家庭の分野においても,ニューメディアやホームオートメーション等の利用が進展している。家庭内情報通信路(ホームバス)は,電話,放送,CATV等の各種通信メディアと家庭内の情報通信機器を自由に接続できるものであり,家庭の情報化を円滑に進めていく上で,有効な手段になるものと期待される。こうしたことから,57年度から「家庭における情報化に関する調査研究会」が開催され,ホームバスの標準化に関する検討が行われてきたが,61年3月にホームバス仕様の標準案が取りまとめられた。
 エ.自動翻訳電話システムの開発
 我が国における言語の孤立性を克服し,より円滑な国際通信を実現するための自動翻訳電話システムの構築に当たっては,音声認識,機械翻訳,音声合成等の要素技術やこれらを支える基礎的技術としてのコミュニケーションサイエンス,知識処理技術等の研究・開発が必要となる。
 郵政省では,60年6月に自動翻訳電話システム開発マスタープランを取りまとめた。
 なお,61年4月に基盤技術研究促進センター及び民間企業の共同出資により,(株)エイ・ティ・アール自動翻訳電話研究所が設立され,自動翻訳電話システム開発のための基礎技術の研究が始められた。
 オ.ニューメディア間インタフェース技術の開発
 高度情報社会における情報資源として重要性が高まっているデータベースの普及を更に促進させるためには,従来のアクセス手段である電話網等による利用に加えて,新たな通信メディアであるビデオテックス,双方向CATV等による利用を可能とするデータベース・マルチアクセス技術の開発が不可欠である。
 郵政省は,このような観点から,59年度より3か年計画で,データベースとニューメディアの融合化技術の開発調査を行っている。今後更に開発を推進すべき技術として,[1]双方向CATV端末から外部データベースの利用を可能とするCATV高度化技術及びゲートウェイ技術,[2]異なるデータベースの検索方式を自動的に変換するデータベース・オートクリアリング技術がある。
 (5)BS-2bの打上げ等
 ア.BS-2bの打上げ
 61年2月12日,放送衛星2号-b(BS-2b)が,種子島宇宙センターから打ち上げられた。
 3月2日に暫定的な静止衛星軌道である東経117度に投入され,同月17日から搭載機器の初期機能確認試験を実施した。
 その後,4月23日に最終的な静止衛星軌道である東経110度へ向けて移動を開始し,5月22日に,当該軌道位置に静止した。引き続き当該軌道における所要の機能確認試験が実施され,7月11日をもって宇宙開発事業団から通信・放送衛星機構を経由して60%の持分がNHKに引き渡されるとともに,宇宙開発事業団の40%の持分が通信・放送衛星機構によりNHKの利用に供されている。BS-2bは,59年1月23日に打ち上げられた放送衛星2号-a(BS-2a)の予備機であるが,BS-2aの中継器等に故障が発生したことから,故障の原因究明を行い対策を施した上,当初の予定を半年延期して打ち上げられたものである。
 今後,BS-2a及びBS-2bを利用して,テレビジョン2チャンネルの試験放送を行うとともに,高精細度テレビジョン(HDTV)放送,高品質音声放送(PCM音声放送),静止画放送等の新しい放送サービスの技術開発を行うことが計画されている。
 イ.BS-3計画の実施に関する協定・契約
 60年10月7日,NHK,
 日本衛星放送(株),通信・放送衛星機構及び宇宙開発事業団は,放送衛星3号(BS-3)計画の実施に関する協定・契約を締結した。
 この協定・契約では,次のとおりの事項等が決められている。
 [1] BS-3a及びBS-3bの打上げ予定時期をそれぞれ65年度夏期及び66年度夏期とすること
 [2] NHK,日本衛星放送(株)は,BS-3の打上げ等を通信・放送衛星機構に委託し,定常段階においてBS-3を利用すること,通信・放送衛星機構はBS-3の打上げ等を宇宙開発事業団に再委託し定常段階においてBS-3の位置,姿勢等の制御を行うこと及び宇宙開発事業団は自らの開発の必要に基づき,かつ,通信・放送衛星機構の委託を受け,BS-3の設計,製作,打上げ及び初期段階における追跡管制等を行うこと
 [3] 設計,製作,打上げ等に関する必要経費は,宇宙開発事業団35%,通信・放送衛星機構65%(NHK65%の3分の2,日本衛星放送(株)65%の3分の1)の割合で負担すること
 (6)電気通信分野の日米MOSS協議の決着
 60年初頭の日米首脳会談の結果を受けて,電気通信,エレクトロニクス等4分野を対象として,日米政府間のMOSS(市場指向・分野選択型)協議が,60年1月に開始された。電気通信分野においては,当初,同年4月1日から施行される事業法の具体的運用に係る事項(電気通信端末機器の基準・認証制度の簡素化,第二種電気通信事業の参入手続の簡素化、基準策定過程の透明性の確保等)を中心として話合いが行われた。この結果,これらの問題については,同年4月までに基本的な解決に達した。
 その後,60年6月の日米MOSS協議電気通信分野会合において,米国側から無線通信機器の基準・認証制度,無線局の免許手続等について関心が示され,以後,無線通信に係る問題を中心に話合いが行われてきた。この結果,61年1月には,無線機器及びサービスの分野の市場開放措置についても,専門家レベルで合意が得られた。
 こうした成果を受け,61年1月8日に米国ワシントンD.C.で開催されたMOSS協議を踏まえて,同月10日に安倍外務大臣とシュルツ国務長官によって発表されたMOSS協議に関する日米共同報告では,電気通信分野について,「MOSS電気通信分野における努力は,日本の電気通信端末機器及び電気通信サービス市場並びに無線通信機器及びサービス市場の自由化を目的として,協議の過程で提起されたすべての問題を実質的に解決し,著しい成功を収めた」と評価している。これにより,約1年間にわたって続けられた電気通信分野のMOSS協議は実質的に決着した。これ以降,電気通信分野のMOSS協議はフォロ-アップの段階に入り,61年8月に開催されたMOSS電気通信分野フォロ一アップ会合において,これまでのMOSS協議の合意事項が着実に実施されていることを確認し,今後とも日米間で情報交換を続けていくこととなった。
 (7)国際協力推進体制の整備
 通信分野における開発途上国からの国際協力要請は,質的,量的に拡大しており,郵政省としては,効果的かつ効率的な協力を推進しているところである。さらに,今後,その実効を挙げるため,61年7月から「開発途上国に対する電気通信分野の国際協力に関する研究会」を開催し,電気通信分野における国際協力の中長期的指針の策定に資するための調査・研究を行っている。
 ア.<1>TU(国際電気通信連合)における電気通信開発センター設立の動き
 <1>TUの全権委員会議(ナイロビ,1982年)の決議により設立された「電気通信の世界的発展のための独立国際委員会」の勧告に基づき,ITUの第40会期管理理事会(1985年7月)は「電気通信開発センター」の設立を決定した。同理事会は,このセンターの設立と運営についての監督に当たるアドバイザリーボード(諮問委員会)を設け,同ボードにおいてセンターの設立準備が進められている。
 我が国は,このセンターが開発途上国に対する電気通信分野の技術協力を提供する仕組みを改善・強化しようとするものであることから,郵政省内に,国内関係機関で構成する「電気通信開発センター国内対策協議会」を設置し,総合的な協力体制の確保を図っている。
 イ.APT(アジア・太平洋電気通信共同体)に対する協力
 我が国は,加盟国中最大の分担金拠出国(政府,NTT及びKDDの分担金を合計すると,全分担金の42%)であるほか,事務局次長を派遣するなど,APTに対し積極的に協力している。
 APTの活動を支援するため,我が国は,「線路設備に関するセミナー」(60年7月),「光ファイバケーブル伝送システムセミナー」(61年4月)及び「APT研究委員会」(60年10月)等のAPTの諸活動にも積極的に参加している。
 ウ.開発途上国向けルーラル電気通信システムに関する研究会
 近年,開発途上国のルーラル地域(農村部)への電気通信の導入に対する関心は世界的に高まっている。我が国もこの分野における協力を重要と考え,59年3月から2年間にわたり研究会を開催した。同研究会においては,ルーラル電気通信システムの導入方法,普及方策等について検討してきたところである。さらに,廉価で保守運用に容易なシステムとして,ディジタルMAS(Multiple Access System)方式が最適であることを明らかにし,その成果を報告書に取りまとめた。
 エ.国際緊急援助体制の整備
 開発途上国の大規模災害に対し,広範な分野での救援活動を行う国際緊急援助隊の派遣体制が,60年12月,関係14省庁の協力の下に,新たに発足,整備されることとなった。
 郵政省では,60年9月のメキシコ地震の際,国際協力事業団(JICA)を通じ,電気通信専門家(被害状況調査,災害復旧)を派遣し,同時に派遣された地震関係専門家等とともに内外から高い評価を得た。この経験を生かして,国際緊急援助隊への電気通信・放送専門家の派遣を積極的に行うこととし,61年3月,省内に関係機関との間の連絡会を設置し,協力体制の整備を行った。
 オ.中国に対する国際協力
 中国の第7次5か年計画(1986〜90年)においては,通信分野への投資が重点施策の一つとして位置付けられている。我が国も政府ベースによる積極的な協力を行っているほか,日本国内におけるディジタル化により使用計画の終了したクロスバ交換機を中国に移転する協力を実施している。
 また,61年6月には,日中間の電気通信等に関する意見交換を行うため,中国郵電部の幹部を招き,「日中フォーラム」を開催した。
 (8)越境データ流通問題
 コンピュータによって処理されるデータの越境データ流通(TDF:Transborder
 Data
 Flows)は,近年の企業活動の国際化,国際データ通信サービスの進展等により急速に拡大している。特に,金融関係等幾つかの産業分野では,円滑な企業活動のために欠くことのできない要素となっている。一方,これらのデータ流通がプライバシー保護,通信制度等の各国の政策の不調和によって制約を受けるケースが生じているため,これらのデータ流通を維持,促進することが国際的な関心事となっている。これがいわゆるTDF問題である。
 国際的には,この問題に関してOECD(経済協力開発機構)が中心となって研究を進めてきた。1985年4月には閣僚理事会が「TDF宣言」を採択し,国際間での自由なデータ流通の原則を確認した。この宣言には法的拘束力はないものの,TDF問題に関する国際的合意としては初めてのものであり,その意義は大きい。OECDでは,現在,同宣言の具体化に向けての作業に入っているが,先進国間のこうした動きに加え,開発途上国も本問題に関心を寄せ始めている。
 我が国では,TDF問題が経済の発展に大きな影響を与え,今後その重要性が一層増大していくと考えられることから,本問題の分析に積極的に取り組んできた。TDF問題は,各国の情報通信政策,先端技術政策等とも深くかかわっており,今後とも総合的に分析・検討を進めていく必要がある。また,各国政策の調整を推進していくために,OECDをはじめとする関係国際機関の活動に積極的に協力・貢献していくことが重要である。さらに,情報通信システムの安全性・信頼性の問題についても自由なデータの流通にかかわるものとして留意する必要がある。
 (9)税制措置
 61年度の電気通信関連税制については,民活法の制定により,主務大臣の認定を受けた整備計画に係る特定施設に対して,新たな税制措置のほか,第一種電気通信事業者に対する措置等が講じられた(第1-2-4表参照)。
 (10)財政投融資制度の拡充
 ニューメディアに関する財政投融資制度は,59年度に創設され,逐次整備が図られてきたが,61年度においては,電気通信分野への競争原理の導入,各種ニューメディアの出現等,高度情報社会への胎動に応じ,次の点について改善がなされた。
 [1] テレビジョン文字多重放送設備の整備,周波数の有効利用の促進及び民間通信衛星に係る地上設備(地球局及び管制設備)の3項目が融資対象項目に追加された。
 [2] 第二種電気通信事業用通信システム及びテレトピアについては,非設備資金に対しても融資対象範囲が拡大された。
 [3] 第二種電気通信事業用通信システム,衛星通信地球局,周波数の有効利用促進,いわゆるVAN,ビデオテックス事業関連システム及びテレトピアについては,リース設備の購入資金に対しても融資対象範囲が拡大された。
 [4] 安全性・信頼性の向上を図るため,情報通信ネットワーク登録規程第3条第1号に規定する基準を満たした県域な越える第二種電気通信事業用通信システム及びいわゆるVANに対しては,最優遇特利(61年4月1日現在6.05%)が適用されることとなった。

第1-2-1表 基盤技術研究促進センターからの出資条件

第1-2-2表 基盤技術研究促進センターからの貸付条件

第1-2-3表 基盤技術研究促進センターからの出資を受けた電気通信に関する研究開発会社の例

BS-2bの打上げ

第1-2-4表 61年度の電気通信関連税制

 

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