昭和63年版 通信白書

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1-1-3 国際通信の動向

 (1)国際電気通信

 国際電気通信については,国際電話(電話回線を使用したファクシミリ通信等を含む。),国際専用回線及び国際公衆データ伝送の各サービスの伸びが続いている。
 (国際電話)
 国際電話の取扱数(発着信及び中継信の合計)は,61年度は対前年度比40.8%増の1億3,461万回であり,56年度から5年間で約4.5倍に増加している(<1>-1-1-24図参照)。同時期の国際ダイヤル通話の比率(全国際電話発信回数に占める国際ダイヤル通話の割合)をみると,56年度38.4%から61年度には85.5%に高まっており,料金値下げ,取扱地域の拡大等による国際ダイヤル通話の利便性の向上が,国際電話の増加の原因となっているといえよう(<1>-1-1-25図参照)。
 62年度上半期の取扱数は,8,807万回(前年度同期比43.0%増)であり,急増を続けている。
 (国際専用回線)
 国際専用回線については,62年9月末現在1,074回線(対前年度同期比13.1%増)であり,年々着実に増加している。特に,音声級回線の増加が顕著である(<1>-1-1-26図参照)。56年度は,電信級回線数の約3分の1であった音声級回線数が,60年に逆転し,電信級回線の約1.4倍の654回線(62年3月末現在)に増加している。59年度から開始された中速・高速符号伝送サービスの回線数も着実に増加しており,これらは,国際専用回線の高速・大容量化へ向かう利用者のニーズを反映しているものといえよう。
 (国際公衆データ伝送)
 国際公衆データ伝送(VENUS-P)の取扱数(発着信及び中継信の合計)は,61年度で302万回(対前年度比70%増),62年度上半期では181万回(対前年度同期比33.0%増)であり,引き続き増加している。
 (国際テレックス)
 一方,国際テレックスの取扱数(発着信及び中継信の合計)は,61年度は4,379万回(対前年度比12.7%減)であった。62年度上半期においても1,889万回(前年度同期比18.1%減)であり,減少傾向を強めている。
 (国際電報)
 国際電報通数(発着信及び中継信の合計)についても,61年度は対前年度比21.6%減の120万通,62年度上半期は,20.2%減の50万通と減少している。
 ここ数年,テレックス,電報の需要が,電話・ファクシミリ,専用回線,データ通信へと移行する傾向が強まっている。
 (国際テレビジョン伝送)
 61年度の国際テレビジョン伝送時間は,前年度の3.5倍に当たる75万分であった。62年度上半期における伝送時間は,53万分であった。また,63年12月より,これまで放送事業者に限られていた国際テレビジョン伝送サービスが一般利用者にも利用可能となり,今後の我が国の国際間映像伝送の発展が期待される。

 (2)国際郵便

 国際郵便物の総数については,61年度は対前年度比0.1%減の2億4,249万通(個)であった。到着は,61年度は5.7%増加しており,59年度から増加を続けているものの,差立は対前年度比7.6%減少している。
 差立の減少は,主として航空便の減少(対前年度比7.8%減)によるものである。
 62年度の国際郵便物の総数については,対前年度比6.3%増の2億5,775万通(個)であった。そのうち,差立は,同2.0%増の1億1,013万通(個),到着は同9.7%増の1億4,762万通(個)であり,差立が増加に転じるとともに,到着の増加傾向が続いている。

 (3)国際放送

 国際放送は,国際理解の増進や海外在留邦人への情報提供等を目的として,NHKがニュース,国情紹介等を短波放送により行っており,62年度は,21言語により1日40時間,全世界に向けて実施した。
 放送時間については63年度は1日43時間に増加して実施している。
 国際放送は,国内の送信所のほか,海外からも中継放送されており,海外中継については,62年度はモヤビ送信所(ガボン共和国)から欧州・中東・北アフリカ向けに1日7.5時間,南米向けに4時間,また,サックビル送信所(カナダ)から北米向けに4時間が行われた。

 (4)国際情報通信交流

 国際情報通信交流は,「情報流通センサス」の計量手法に基づき,国際郵便物数,国際電話取扱数,国際テレックス取扱数,国際電報通数及び国際テレビジョン伝送時間の送受信量から,我が国の国際情報流通状況を把握するものである。
 61年度における送受信状況については,送信48.7%,受信51.3%とほぼ均衡している。このうち,国際郵便,国際電気通信等のパーソナルな通信メディアの送受信については均衡しているが、国際テレビジョン伝送のマス系通信メディアは,受信が前年度の約4倍となり,受信の比率が高まっている。
 代表的なパーソナルな通信メディアである,国際電話の56年度以降の発着比率(通信分数ベース)について,日本と米国を比較すると,日本については,過去5年間,発信と着信がほぼ半々であるのに対し,米国では,発信の比率が年々高まっており,61年度は発信が約66%,着信は約34%である(<1>-1-1-27図参照)。米国の国際電話は発信分数でも日本の8倍以上に達しており,近年,急増している。これらは,米国が依然として,世界の文化・経済の中心であり,種々の情報の発信源であることを示している。
 一方,我が国は,パーソナルな通信メディアの発着比率は半々であるが,マス系通信メディアについては,大幅な入超となっている。今後,我が国も情報発信量を増やし,世界の文化・経済に貢献していくことが必要である。

 (5)国際通信事業の現状

 ア KDDの経営状況
 KDDの62年度上半期の経常収益は,対前年度同期比5.9%増の1,242億円,経常費用は同4.5%増の1,056億円であり,経常利益は同14.9%増の186億円であった(<1>-1-1-28表参照)。また,当期中間利益は同32.6%増の81億円,1株(500円)当たりの利益は139円63銭であった。
 同社は,61年度決算においては,国際通話料の引下げ等による減益から,62年度上半期は増収増益に転じている。
 営業利益の内訳をみると,同社の営業収益の約75%を占める国際電話収入が,前年度同期比で13.7%増加しており,料金値下げ等による国際電話の利用増が良好な財務状況となって現れているといえよう(<1>-11-29図参照)。
 また,同社の63年度事業計画においては,サービス分野では,[1]電話,公衆データ伝送等のサービスメニューの拡充,[2]可搬型地球局等を利用した専用回線サービス,映像伝送サービス及びテレビ会議サービスの提供,[3]63年末に完成予定の,我が国最初の光海底ケーブルである第3太平洋横断ケーブル(TPC-3)により,海底ケーブル経由の高速符号専用回線サービスの提供等の高度サービスの提供が予定されている。
 また,海底ケーブルの建設等の通信網・伝送路の拡充・強化及びISDN関連技術や移動体通信技術等の開発を行うこととしている。
 これらの計画の実施により,同社は63年度収支計画として,収入額2,856億円,支出額2,382億円を見込んでいる(<1>-1-1-30表参照)。
 イ KDDの設備投資
 61年度の設備投資額は540億円(対前年度比5.0%減)であった。62年度,63年度の設備投資計画額は,それぞれ721億円,602億円となっている。
 同社の63年度の設備計画の主なものとしては,第3太平洋横断ケーブル(TPC-3),香港〜日本〜韓国ケーブル,グァム〜フィリピン〜台湾ケーブル等の建設計画の推進,国内ディジタルマイクロ伝送路の建設等が挙げられている。

 (6)国際電気通信の経済的影響

 ここでは,産業連関の手法を用いて国際電気通信事業の活動が他の産業に与える影響について分析する。
 ア 国際電気通信事業の生産活動による我が国経済への波及効果
 60年の国際電気通信事業の生産誘発効果は1.60であり,国際電気通信事業が2,178億円の生産を行う間に,国際電気通信事業以外の産業に及ぼした生産誘発は1,307億円であった。
 国際電気通信事業の生産活動によって各産業が得られる付加価値額発生分布をみると,全体の61.8%が自らの産業に,34.0%が国内の他産業に,残りの4.2%が輸入を通じて諸外国に発生している。
 国際電気通信事業の付加価値額発生分布の特徴としては,国内第一種電気通信事業の付加価値発生率が12.8%と高いことである。これは,我が国において国際電気通信サービスを提供する際には,国内の回線は原則として国内第一種電気通信事業者の回線を利用するためである。
 イ 我が国における国際電気通信の利用
 国際電気通信事業サービス利用の主な産業分野は,商業(35.1%),国内第一種電気通信事業(13.0%),運輸(11.4%),金融・保険(10.6%)等であった(<1>-1-1-31図参照)。
 特化指数をみると,商業が30.6と圧倒的であり,以下,運輸業が9.9,国内第一種電気通信事業が9.7,金融・保険が9.2となっている。
 国内通信の利用と比較すると,運輸業が高い比率となっているのが特徴的である。

 

<1>-1-1-24図 国際通信の動向

<1>-1-1-25図 国際電話の種類別取扱数(発信)の推移

<1>-1-1-26図 国際線用回線数の推移

<1>-1-1-27図 日本と米国における国際電話発着比率(取扱数)

<1>-1-1-28表 KDDの経営状況

<1>-1-1-29図 KDDの営業収益の内訳(61年度)

<1>-1-1-30表 KDDの収支計画

<1>-1-1-31図 国際電気通信サービスの利用分野

 

 

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