昭和63年版 通信白書

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1-3-1 地方公共団体の情報提供事業の現況

 地方公共団体は,情報通信の活用を進める中で,住民福祉の向上,地域社会の活性化等を図っている。ここでは地方公共団体の情報提供事業等の現状についてみる。

 (1)情報提供の現状

 ア 情報提供に利用しているメディア
 市区町村が,行政一般情報を提供する場合に利用しているメディアは,<2>-1-3-1図のとおりである。
 これらのうち,最も活用されているメディアは、広報紙誌,回覧板,パンフレット等の活字メディアである。これは,活字メディアの簡便性,経済性,記録性等が重視されているためである。
 また,ラジオ放送及びテレビジョン放送については,区(ラジオ放送16.7%,テレビジョン放送16.7%),人口30万人以上の市(ラジオ放送52.8%,テレビジョン放送67.9%)及び人口20〜30万人の市(ラジオ放送28.1%,テレビジョン放送56.3%)の利用意向が高いことが目立つ。これは,マス・メディアが同一の情報を大量に提供するのに適したメディアであること,区部,大都市が電波料を負担し得る財政力があることなどによる。
 一方,有線放送電話は,町部(20.1%)及び村部(21.3%)において利用意向が高い。これらは,既に地域に密着したメディアとして,町村部に普及していること,コストが安いことなどによるということができる。
 また,CATVの利用意向が低いのは,現在のCATV施設の大半がテレビジョン放送の受信障害対策施設であり,自主放送を行うCATVが非常に少ないことによる。
 イ 情報化に対応した研修の実施・助成等の取組状況
 地方公共団体が関与している情報関連施策の実施状況は,<2>-1-3-2表のとおりである。
 全体的にみると,情報化に対応した研修の実施・助成等が中心となっている。しかしながら,情報関連施策を行っていない市町村も約3分の1にのぼっており,情報化はこれから本格化する段階にあることが分かる。
 これを市区町村の別にみると,区部(66.7%),人口30万人以上の市(64.2%)及び人口20〜30万人の市(71.4%)といった大都市が中心である。
 また,市部においては,高校等における情報関連機器の導入等にも力が注がれている。
 一方,町部,村部の順に,情報関連施策を行っていないものの割合が高くなっており,これらの町村についても,今後の展開が期待される。
 ウ 地方公共団体の情報提供の変化
 行政の一般業務,広報業務及び住民の生活面において,電気通信や放送を利用した情報の提供が5年程度前と比べて,どのような変化があったかをみたのが,<2>-1-3-3図である。
 全体的にみると,「非常に進んだ」と「かなり進んだ」を合わせても12.9%にとどまっている反面,「あまり変わらない」が過半数にのぼっており、情報化は端緒についた段階であるということを示している。

 (2)情報化の推進に関する意向

 電気通信や放送を利用した情報化の促進意向は,<2>-1-3-4図のとおりであり,全体的に促進したいという意向が強い。
 これを市区町村の別にみると,区部及び市部で,「積極的に促進したい」が約40%を占めている。特に,人口30万人以上の市で75.5%,人口20万〜30万人の市で56.3%が「積極的に促進したい」としている。
 他方,村部では「現状のままでよい」と「積極的に促進したい」がほぼ同じ水準となっている。このように,大都市のほうが情報化の促進により積極的となっている。

 (3)電気通信や放送を利用した情報提供事業の実施

 ア 実施状況
 (概 況)
 市区町村による電気通信系や放送系のシステム・機器を利用した情報サービス事業の実施あるいは計画・構想の状況は,<2>-1-3-5図のとおりである。
 全体的にみると,実施中が17.5%(410市区町村、延べ404プロジェクト),計画・構想中が11.4%(268市区町村,延べ335プロジェクト),未計画が71.1%となっており,情報化事業についてもまだ始まった段階であるといえる。
 (都市規模別動向)
 都市規模別にみた場合,区部を筆頭として人口30万人以上の市が67.9%,人口20万〜30万人の市が40.6%となっており,大都市で進んでいる。これは,情報化の促進意向とも共通しているが,一定の都市機能を有している市が情報化を進める上で優位性があることを示している。しかし,他方,町村部にも269団体が事業を実施しており,各地域の実状に応じて進められていることも示している。
(都道府県別動向)
 都道府県別の情報提供事業の実施あるいは計画・構想の状況は,<2>-1-3-6表のとおりである。
 イ 実施中の情報提供事業の概要
(実施主体)
 プロジェクトごとの事業の実施主体についてみると,当該市区町村が圧倒的に高くなっており,次いで,第三セクター等,民間企業・団体等,都道府県の順になっている(<2>-1-3-7図参照)。第三セクターが設立されているのは,101市町村である。第三セクターによって運営されている情報提供事業において利用されているメディアとしては,ビデオテックスが75,CATVが6となっている。
 また,地方公共団体以外の参加機関をみると,自県内に立地する企業が104と最も多く,次いで自県以外の大都市に立地する企業が46となっている。このように,自県内に立地する企業の参加が進んでいることが分かる。
(事業の開始時期)
 事業を開始した時期についてみると,55年以前が92となっている。60年以降著しく増加しており,62年では118団体にのぼっている。このように地域の情報化は長い助走期間を経て,徐々に広がり,端緒についたことが分かる(<2>-1-3-8図参照)。
(情報収集提供実施機関)
 情報収集提供実施機関についても,当該市区町村が圧倒的に高く,9割以上の事業において,市区町村が情報の収集提供を行っている。同時に,商工業団体,事業所・商工業者・農林漁業者,都道府県も広くかかわっており,単に当該地方公共団体のみならず,幅広く関係者が参加していることを示している(<2>-1-3-9図参照)。
(情報提供の対象地域)
 情報提供の対象地域については,約半数が当該市区町村内となっているが,広域市区町村内,都道府県内あるいは全国に情報を提供しているものも多く,広域ネットワークを意識した情報提供も行われている(<2>-1-3-10図参照)。
(情報提供に利用しているメディア)
 情報提供に利用しているメディアについては,<2>-1-3-11図のとおりである。
 電気通信系のメディアについては,ビデオテックスを利用するものが132市区町村と最も多く,次いで,ファクシミリ,データ通信となっている。放送系のメディアについては,テレビジョン放送が最も多くなっているが,これに次いでラジオ放送,CATV及び文字放送も利用されている。
(情報提供事業の規模)
 ビデオテックス,データ通信,パソコン通信及びファクシミリについて,情報提供事業のために用いられている端末数をみると,<2>-1-3-12図のとおりとなる。
 いずれの場合も,10台以下が最も多く,小規模での運営が主となっている。しかしながら,ビデオテックスについては,101台以上の大規模な運営もかなりみられる。
 また,ビデオテックスについて,当該市区町村が提供している画面数をみると,20画面以下の小規模なものと,51〜500画面の比較的大規模なものとが多くなっている(<2>-1-3-13図参照)。
 さらに,CATVの自主放送の提供チャンネル数についてみると,1チャンネルが20,2チャンネルが5と小規模であるが,11チャンネル以上と大規模に提供しているものも2となっている。
(情報提供事業に要する経費)
 情報提供事業の総構築経費は,1億〜5億円が最も多い。しかしながら,過半数のものは,総構築経費が1億円以下となっている。一方,地方公共団体の負担する構築経費は,1,000万円以下が最も多く,ほとんどのものが5億円以下となっている(<2>-1-3-14図参照)。
 また,年間運営費用をみると,5百万円以下のものが多いが,1千万〜5千万円のものもみられる。一方,地方公共団体の負担する年間運営費用は,大部分が5百万円以下となっている(<2>-1-3-15図参照)。
(情報提供事業に携わっている職員)
 事業に携わっている職員数は,<2>-1-3-16図のとおりである。専任職員を置いている地方公共団体は少なく,いても1〜2名がほとんどである。また,兼任職員についても,3名以下がほとんどとなっている。
(情報提供事業の目的)
 市区町村が実施している情報提供事業の目的は,地域産業の振興,防災対策の改善・充実及び観光レクリエーションの振興が多く,これに行政広報等が続いている。これらの地域の情報提供事業の目的が,地域経済の発展とコミュニティの充実を主に目指していることを示している(<2>-1-3-17表参照)。
 また,メディア別にみた場合,ビデオテックスを利用した事業においては,地域産業の振興及び観光レクリエーションの振興に集中している。CATVを利用した事業については,この二つに加えて,学校教育・社会教育の充実,文化活動の振興,地域コミュニティの育成,防災対策の改善・充実等,利用目的が多様化している。これは,それぞれのメディア特性を反映したものである。
(情報提供事業の反響)
 実施中の事業に対する反響についてみると,反響があるというものは半数以下となっている(<2>-1-3-18表参照)。この中で,ビデオテックス及びCATVについてみると,CATVについては,反響があるというものが約3分の2となっているのに対して,ビデオテックスについては,反響があるというものは約2割に過ぎないのが特徴的である。
(情報提供事業の効果)
 事業の効果の現れ方についてみると,5年〜10年程度の期間が必要とするものが,過半数となっている(<2>-1-3-19表参照)。情報提供事業というものが,一朝一夕に効果がでるものではなく,概してリードタイムが長いことを示している。
 具体的な効果としては,「町政,行政への理解及び関心が高まった。」(北海道池田町),「社会に対してのイメージアップになる。」(宇都宮市),「地域の活性化になる。」(札幌市),「地域情報化についての意識の啓発が図れる。」(横浜市),「即時性の要求される情報の効果的な提供ができる。」(川崎市),「住民相互のコミュニケーションが深まる。」(奈良県下市町)等がある。
 また,メディア別にみた場合,CATV及びビデオテックスについてみると,CATVについては,約3割がすぐに効果が現れるのを期待されているのに対して,ビデオテックスについては,効果が現れるのに長い期間(10年程度)必要というのが約2割となっており,これらの2メディアについての期待のされ方は対照的である。
 したがって,ビデオテックスについては,情報内容の充実,端末機の普及促進等,メディアの利用拡大を図る必要がある。
 ウ 地方公共団体における事業の実施例
 ここでは,地方公共団体の事業の実施例として,富山市を取り上げて紹介する。富山市は,高度情報化を進め,地域発展の活力とするという視点から,情報通信基盤の整備と地域データベースの構築を目指した,「富山テレトピア計画」を推進している。テレトピア計画の現況は次のとおりである。
(タウン情報システムの概要と現況)
 タウン情報システムは,市民生活の利便性の向上,公共サービス環境の改善,商業・観光・サービス業の活性化を目的として,ビデオテックス及びパソコン通信により情報提供を行っている。
 ビデオテックスについては,民間会社が60年12月からサービスを開始している。提供画面数は,約6,000画面で,このうち富山市がIPとなって,タウン情報約500画面,健康情報約200画面を提供している。さらに,62年秋期から駐車場システムを,62年冬期からバスロケーションシステムを開始している。
 パソコン通信については,民間会社が60年4月から会員制のサービスを開始している。富山市からは,タウン情報約350画面を提供している。
 なお,タウン情報事業を支援し,情報化啓蒙活動を行うとともに,情報サービス実施会社やその会員等へ地域情報を提供する体制を整備するため,62年7月,(社)とやま地域情報化推進センターが設立された。会員は,富山市,富山商工会議所,情報提供事業会社,電気通信事業者,地元有力会社等である。
(市民カルチャーシステムの概要と現況)
 市民の生涯学習の充実と学習機会の拡大,教育・文化活動の改善等を図るため,ビデオテックス,データ通信,パソコン通信による情報提供を行う計画を立てている。
 このシステムには,図書館ネットワークシステム,生涯学習システム及び博物館ネットワークシステムがある。図書館ネットワークシステムについては,62年度に着工し,65年度に完成予定である。他の2システムについても,現在ハード及びソフトの両面から調査研究等を行っている。
(地域健康情報システム)
 市民の健康づくり,保健・医療活動の支援を目的として,ビデオテックス及びパソコン通信による情報提供を行う計画である。
 このシステムには,ヘルスアドバイスシステム及び地域健康管理情報システムがある。ヘルスアドバイスシステムについては,既にビデオテックスに画面提供を行っている。
(和漢薬情報システム)
 市民,市外居住者等への和漢薬情報の提供を現在行っており,さらに,ビデオテックス及びパソコン通信による全国への情報提供を計画中である。
(富山市民プラザの建設)
 61年度から開始した富山市新総合計画に基づき,市街地の整備計画が実施されている。このうち,富山市民プラザは,テレコムプラザの認定を受けており,電気通信系や放送系の機器を設置して,市民の用に供することにより,各種地域情報の拠点としての役割を果たすことが期待されている。

 

<2>-1-3-1図 行政情報の提供に用いられるメディア(複数回答)

<2>-1-3-2表 関与している情報関連施策(複数回答)

<2>-1-3-3図 情報提供の変化

<2>-1-3-4図 情報化の促進意向

<2>-1-3-5図 情報提供事業の実施状況

<2>-1-3-6表 都道府県別情報提供事業の実施及び計画・構想状況

<2>-1-3-7図 情報提供事業の実施主体(複数回答)

<2>-1-3-8図 情報提供事業の開始時期

<2>-1-3-9図 情報収集提供実施機関(複数回答)

<2>-1-3-10図 情報提供の対象地域

<2>-1-3-11図 情報提供事業に利用しているメディア(複数回答)

<2>-1-3-12図 情報提供事業に用いられている端末

<2>-1-3-13図 ビデオテックスに地方公共団体が提供している画面数

<2>-1-3-14図 情報提供事業の構築経費

<2>-1-3-15図 情報提供事業の年間運営費用

<2>-1-3-16図 情報提供事業に携わっている職員

<2>-1-3-17表 情報提供事業の目的(複数回答)

<2>-1-3-18表 情報提供事業に対する反響

<2>-1-3-19表 効果が現れるまでの期間についての期待

 

 

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