昭和63年版 通信白書

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2-3-2 国際化を支える国際通信

 今後,ますます緊密化し,有機的に結合する国際化社会の進展に伴い,国際通信は,その中枢神経として,一層重要な役割を果たすこととなる。
 したがって,我が国の国際通信に関しては,国際協力等を通じた世界的な協調と国際競争力の確保が重要である。

 (1)国際電気通信分野での競争の展開

 国際通信事業は,国際間での協同事業であるとともに,世界的規模で競争が行われている。特に,近年では各国とも電気通信事業を戦略的な産業として位置付けており,国際間での競争が激しくなる傾向にある。この意味において,国際通信事業は,国内で完結する国内通信事業とは異なる側面を有している。
(国際間での競争)
 これまで,国内では独占体制で運営されてきた第一種国際電気通信事業も,国際間では早くから競争体制下におかれてきた。
 国際間の競争の典型的な例として,通信センターをどの国に設置するかということがある(<2>-2-3-12図参照)。
 例えば,我が国の利用者が他国に通信センターを設置した場合,トラヒックの大部分は,他国経由で送受されることになる。この場合,利用者の通信センターが国内に設置されている場合に比べると,我が国の国際電気通信事業の規模が縮小することを意味する。
 また,欧州や大洋州では,各国間の料金格差やサービス水準,内容等を利用した転電業者により,各国間の競争が激しくなっている。
 このような国際間での競争は,今後とも活発化することが予想される。
(国内における競争)
 国内第一種電気通信分野においては,新事業者は,実質的には市内回線部分をNTTに依存しなければならないなど,NTTと新事業者は,必ずしも対等に競争しうる現状にない。
 一方,国際第一種電気通信分野では,新事業者は,KDDの所有する国際電気通信回線設備に依存することなく,自らが手当した設備を通じてサービスの提供が可能である。この点,国内電気通信市場と性格を異にしている。
 したがって,国際電気通信市場では,より一層,公正かつ有効な競争の展開とそれによる通信料金全般の低廉化やサービスの高度化・多様化が進むことが期待される。
(国際競争力の確保)
 我が国の国際電気通信分野は,今後,国内的にはもとより国際的にも一層の競争の展開が予想される。
 我が国が世界の情報拠点となり,引き続き発展していくためには,国際交流の神経網ともいうべき国際電気通信において,今後とも国際競争力を確保することが重要である。
 国際電気通信分野における競争力を確保するためには,より一層の経営努力・技術開発等による料金の低廉化や信頼性の向上等が求められる。
 また,先の調査結果においても通信量増加の理由は,サービスの利用方法の改善によるものが最も多いことから,国際電気通信分野ではサービスの改善を通じて市場自体の拡大も図られる。
 以上のように,国際電気通信事業者相互間での競争は,利用者のニーズに一層こたえることにより,潜在的な需要の発掘につながり,国際電気通信市場の拡大につながる効果も期待される。

 (2)国際電気通信分野への期待

 国際通信需要は,社会・経済の国際化に伴って,今後ともますます増大することが予想される。また,企業を中心とする利用者の国際通信への要望は,今までにもまして高度化・多様化することが予想される。
 国際電気通信分野への期待を示すものといえる企業における国際電気通信事業者の選択基準についてみる。
 全企業では,通信料金の安さが一位となっており,以下,回線品質の良さ,信頼性の高さとなっている(<2>-2-3-13図参照)。
 ここで特徴的なのは,専用線設置企業では,回線品質の良さが通信料金の安さよりも重要な選択基準となっていることである。また,信頼性の高さ,これまでの実績,コンサルタント体制の良さ等が全企業に比べて高い数値となっている。
 業種別では,銀行・証券,商社等で,信頼性の高さ,回線品質を求める企業が多い。これは,国際通信が外国通信事業者と協同して提供されるため,回線故障時等の対応が国内通信とは異なり難しく,品質やサービス水準の確保が一層求められるためである。特に「金融機関では,最近,通信費の制限がなくなる傾向にある。」(証券業A社)といった意見がみられ,ソフトを含めたネットワーク水準が事業者に対する重要な選択基準となっていることが分かる。
 したがって,国際電気通信分野においては,それが国際交流の基盤であるという認識の下に,多面において競争を展開し,コストの引下げや安全性,信頼性をはじめとするサービス水準の確保・向上に努める必要がある。

 (3)国際協力の必要性

(国際機関での協力)
 各分野における国際間の協力体制の確立により,通信も必然的に国際的なシステム化の必要性が高まる。これらシステムの実現には,前述のように異なる政策をとる各国間において,料金,運用,技術等の問題に関し,調整と標準化がより一層必要となる。また,希少な資源である電波周波数や衛星静止軌道の合理的かつ公平な利用を図るためにも,国際協力は必要不可欠な条件である。
 そのための各国の利害関係の調整には,より広範で積極的な国際協調が必要であるため,このような目的のために設立されている国際機関であるITU,インテルサット,インマルサット等へ我が国としても一層の協力を行うこととしている。
(開発途上国への協力)
 国際電気通信は,すべての国が世界通信網の不可分の要素をなしているため,世界的な規模における緊密な国際協力が必要である。
 国際的な通信システムが有効に機能するためには,各国の通信技術が一定の水準に到達していなければ,その効果は十分なものが望めない。そのため,開発途上国に対する通信システムの面での協力体制が重要である。
 とりわけ,開発途上国に対する電気通信技術等の協力活動は,経済,社会,文化活動等の相互の国家連帯を強めるうえでも有益である。そして,このような技術的協力活動は開発途上国ばかりでなく,世界全体の国際通信サービスの改善強化となって結実することにもなる。
 したがって,我が国としても,それぞれの国の事情に適合した,新しい技術開発等適切な協力を一層進める必要がある。

 (4)国際郵便

 国際郵便の利用は,大幅な伸びをみせる国際電気通信とは異なり,微減傾向にある。
 これは,「全体的に郵便から電気通信に移行している」(電気機器製造A社)という一般的な傾向から,「クーリエは顧客への資料送付に使用している。国際郵便と比較するとスピードと信頼性の面で優れている。」(証券会社B社)等の理由によるものと思われる。
 国際郵便事業も,国際電気通信事業と同様,国家間での協力事業であるため,相互的にサービスの改善が図られなければトータルなサービス品質の改善に結び付かない。
 したがって,国内的には,今後も引き続き料金の低廉化を図っていくとともに,安全性,信頼性,スピード等に対する要望にこたえるべく,国際ビジネス郵便の取扱国の拡大や取扱手続の簡素化等サービスの改善を図っていくこととしている。
 同時に,UPU等を通じた各国との協調や国際協力により,世界的規模でのサービスの一層の多用化・合理化を図る必要がある。
 我が国としても,この面での協力を一層進めることとしている。

 (5)国際通信の高度化・多様化に向けて

 我が国は,もはや経済・社会等のあらゆる局面において,国際的な情報活動をぬきにしては成立し得ない。
 したがって,今後は通信事業のサービス水準の向上や料金全般の低廉化により,利用者の高度化・多様化するニーズに的確にこたえる必要がある。
 また,単に各国からの情報の収集にとどまらず,我が国から世界各国に対する情報の提供面でも,我が国全体として,一層の努力を行い,世界的な情報拠点となって国際社会に貢献する必要がある。
 この意味でも,我が国は,国際通信分野での高度化・多様化を進め,国際競争力を確保することが必要である。

<2>-2-3-12図 国際第一種電気通信事業における国際間競争の概念図

<2>-2-3-13図 電気通信事業者の選択基準

 

 

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