昭和63年版 通信白書

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2-2-2 国際通信の利用の推移

 我が国の国際通信の利用は,国際化の進展とともに急増している。しかし,その利用傾向は,国際化の進展の様々な局面,あるいは近年の国際通信サービスの多様化,通信技術の革新等により,通信相手地域によっても,また,通信メディアによっても,その傾向は一様ではない。
 ここでは,国際電話,国際テレックス,国際電報,国際郵便について,50年度以降の通信量(発着合計数)の推移を分析し,各通信メディアの通信相手先別(州別)動向と国際化の関係について述べる。

 (1)国際通信サービスの動向

 日本と海外の通信量は,全体的には年々着実に増加を続けているが,我が国の国際通信のこのような増加は,国際化の進展と密接な関係を有するものである。加えて,通信料金の値下げ,サービス対地の拡張等のサービス内容の改善,通信設備の拡充等も国際通信量増大の大きな要因である。
(国際通信における中心的なメディアの変遷)
 50年度以降の国際通信については,電話の取扱数(61年度)は50年度の16倍に増加し,公衆データ伝送の取扱数も過去3年間で約10倍に急増している。反面,59年度まで増加を続けたテレックスの取扱数が減少に転じ,昭和40年代まで増加傾向にあった電報通数は,50年代以降,減少が著しい。
 このように40年代の電報,50年代のテレックス,そして近年の電話・ファクシミリというように,国際電気通信の中で中心的なメディアの転換が進んでいる。
(国際通信サービスの利便性の向上)
 国際電気通信については,電話,テレックス,専用線等主要なサービスについて,54年10月以来,8回の料金値下げが行われている(<2>-2-2-10表参照)。
 例えば,米国あて国際ダイヤル通話の料金(3分間の通話料)を例にとると,54年の3,240円が現在は1,240円(平日昼間料金)に値下げされている(<2>-2-2-11図参照)。
 近年,増加の著しい音声級専用回線についても同様であり,北米向けの音声級回線料金(日本側のみ)を例にとると,50年には370万円であったものが70万円になっている。また,ダイヤル通話の可能な対地数も50年の25対地から156対地(62年度末現在)に増加している。
 これら需要の増大が続く通信サービスは,利便性の面でも大幅に向上していることが分かる。
(国際通信網の拡充)
 国際通信網については,世界各国の協力により,通信技術の改善,大容量通信衛星の開発,大容量海底ケーブルの建設が行われ,通信網全体の回線容量は飛躍的に増大した(<2>-2-2-12図参照)。
 これにより,我が国の対外直通回線数も50年度の2,340回線から62年度末現在,10,863回線に増加している。また,回線の大容量化及びディジタル化等により,高速のディジタル専用回線サービス等の高度な通信サービスが可能となっている。

 (2)国際通信量の州別推移

 ア 国際電話
 電話取扱数(電話回線を使用したファクシミリ通信等を含む。)では,アジアとの通信量が最も多く,61年度は6,277万回(KDD資料による推計値。以下同じ。),州別比率は46.8%であった。
 増加率では欧州,アメリカ州が高く,61年度の取扱数は,それぞれ2,280万回(対50年度比22.1倍),4,024万回(同21.2倍)である(<2>-2-2-13図参照)。
 さきに述べたとおり,我が国の対外直接投資は,北米,欧州に対する投資が,非製造業を中心に大幅に増加しており,対外直接投資の増加傾向と電話の取扱数の地域別動向には類似性がみられる。
 また,電話の取扱数の州別比率は,アジアとアメリカ州で76.8%を占め,次いで,欧州,大洋州,アフリカの順である。
 これは,日本企業の海外現地法人の州別分布状況(<2>-2-2-9図参照)と同様の傾向となっており,国際化の進展と電話の通信量の増加には深い相関関係があることを示している(<2>-2-2-14図参照)。
 イ 国際テレックス
 テレックスの取扱数については,アジア(1,792万回),欧州(1,387万回),アメリカ州(894万回)の順で通信量が多い。
 増加率では,50年度から59年度までをみると、アジアの増加率が最も高く,59年度は2,251万回(対50年度比4.7倍)であった。次いで,欧州,アメリカ州の順である(<2>-2-2-15図参照)。
 しかし,59年度以降は,アジアとのテレックス通信量は,大きく減少し,電話の取扱数の急増とあいまって,この地域でメディアの交替が著しく進んでいることが分かる。これは,アジアの電話回線網の充実が近年進み,電話機,ファクシミリ端末等が増加しているためである。
 ウ 国際電報
 電報の通数については,アジアが最も多く,61年度は60万通に達しているが,50年度以降の電報通数の州別推移をみると,どの州についても減少傾向にある。特にアジアでは大幅に減少し,61年度の通数は50年度の約5分の1である(<2>-2-2-16図参照)。
 アジアは50年当時,北米や欧州に比べ,公衆回線網の発達が遅れており,日本との国際通信においては,電報への依存度が高かった。電報通数の減少は,ここ10年余りの間に急速に公衆回線網が発達してきたことを示している。
 エ 国際郵便
 郵便物数については,アメリカ州との郵便が最も多く,7,752万通(個)である。次いで,欧州,アジアの順となっており,電気通信のメディアとはやや異なる傾向を示している。
 増加率では,アジアがやや増加しているものの,全体的にはほぼ横ばいであり,60年度以降は微減している(<2>-2-2-17図参照)。
 このように,国際通信において,よく利用されるメディアは通信相手先によって異なる。これは,国際通信の利用が,それぞれのメディアがもつ特徴に左右されるものであり,加えて,通信相手との時差や相手国における通信端末の普及度等様々な要因に影響されるためである。

<2>-2-2-10表 国際電気通信料金の値下げ(54年10月以降)

<2>-2-2-11図 米国あて国際ダイヤル通話の料金(3分間)の推移

<2>-2-2-12図 国際通信網の発達-昭和63年6月現在-(50年当時と現在との比較)

<2>-2-2-13図 国際電話取扱数の州別推移

<2>-2-2-14図 国際電話取扱数の州別比率(61年度)

<2>-2-2-15図 国際テレックス取扱数の州別推移

<2>-2-2-16図 国際電報取扱数の州別推移

<2>-2-2-17図 国際郵便物数の州別推移

 

 

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