昭和63年版 通信白書

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1-2-2 進む電気通信サービス

 (1)新事業者の動向

 第一種電気通信事業分野では,17社の新事業者が62年度中にサービスを開始した。
 (長距離系事業者の動向)
 第二電電(株),日本テレコム(株),日本高速通信(株)の3社は,62年9月から,東京,神奈川,静岡,愛知,京都,大阪等で市外電話のサービスを開始した。
 さらに,第二電電(株)は,山陽,九州地方に業務区域を拡大することについて63年2月郵政大臣の許可を受けた。同社は,この地域において,63年9月以降専用サービスを,63年12月以降電話サービスを開始する予定である。
 また,日本テレコム(株)は,山陽新幹線沿線地域において,63年9月以降専用サービスを,63年11月以降電話サービスを開始し,東北及び上越の各新幹線沿線地域において,66年4月までに専用サービス及び電話サービスを開始する予定である。
 (地域系事業者の動向)
 62年10月,レイクシティ・ケーブルビジョン(株)が,諏訪市,岡谷市等において専用サービスを開始した。
 63年6月,中部テレコミュニケーション(株)が,静岡,愛知,岐阜及び三重において専用サービスを開始した。
 また,63年5月,東京通信ネットワーク(株)が,東京,神奈川,埼玉等において,地域系事業者としてはじめて電話サービスを開始した。
 (無線呼出し事業者の動向)
 無線呼出し事業者は,東京圏等を除き,おおむね県を業務区域の単位としている。
 62年度末現在,15社が,数字,文字等をディスプレイに表示できる高機能型のサービスを含む無線呼出しサービスを開始している。
 (自動車電話等の動向)
 自動車電話分野については,61年8月に技術基準の改正が行われて多様な方式が認められた。63年2月,日本移動通信(株)及び関西セルラー電話(株)が,第一種電気通信事業の許可を受けた。
 日本移動通信(株)は,東京,神奈川等の東京圏,愛知,三重等の中部圏において,NTT大容量方式によるサービス提供を計画している。また,関西セルラー電話(株)は,大阪,京都等の近畿地方において,英国で実用化されているTACS方式によるサービス提供を計画している。
 両社は,63年度から64年度にかけてサービスを開始する予定である。
 また,東京湾マリネット(株)は,東京湾及びその周辺海岸部において,船舶及び携帯の電話サービスを63年9月から開始する予定である。
 (国際電気通信事業者の動向)
 日本国際通信(株)は,64年4月から専用サービス,65年2月から電話サービスを,国際デジタル通信(株)は,64年5月から専用サービス,64年10月から電話サービスを開始する予定である。
 (第二種電気通信事業者の動向)
 62年度末現在,一般第二種電気通信事業者は512社,特別第二種電気通信事業者は18社であり,そのうち8社が,62年度に新たに特別第二種電気通信事業の登録を受けた。
 62年6月の電気通信事業法の改正により可能となった国際第二種電気通信事業については,62年度末現在,10社が登録を受けており,そのうち4社がサービスを開始している。

 (2)利用者サービスの向上を目指して

 電気通信事業分野においては,料金値下げ,新たなサービスの実施等利用者サービスの向上が図られている。
 (国内通信料金の値下げ)
 通信料金全般の低廉化が求められている中で,NTTの通信料金に関しては,62年8月,60キロメートルを超え2,500キロメートルまでの距離の専用サービスの料金値下げが行われたのに続いて,63年2月,320キロメートルを超える遠距離の電話料金について,約1割の値下げが行われた。また,離島に関して,通信需要面等で最も緊密な関係を有する近隣の単位料金区域(10円で3分間通話可能な区域)1か所(例えば佐渡島と新潟)とのダイヤル通話料金を隣接する地域と同額(10円80秒)とされた。さらに,沖縄県については,県内の各単位料金区域間のダイヤル通話料金を隣接する地域と同額(10円80秒)としたほか,沖縄県を除く全国との通話については,沖縄県が九州最南端にあるものとみなして料金計算のための距離を算定することとされた。
 また,日本テレコム(株),日本高速通信(株)及び第二電電(株)に関しても,夜間,深夜の電話サービスの料金について約1割の値下げが行われた。
 64年から通信衛星を利用した専用サービスを予定している宇宙通信(株)は,63年2月,契約約款の認可を受け,料金を決定した。また,日本通信衛星(株)は,平均11%の料金値下げを行った。両社の料金の特徴は,通信衛星を利用することにより,距離に関係のない料金体系となっていることである。
 今後とも,NTTにおいては,近距離を含めた料金全般の低廉化を図るため,今後より一層の経営の効率化,合理化努力が求められている。また,新事業者においても,より一層の経営努力を行い,利用者の期待にこたえることが求められている。
 (国際電気通信料金の値下げ)
 国際電気通信料金についても,国際専用回線サービス,国際公衆データ伝送サービス及び海事衛星通信サービスについて,63年1月(海事衛星通信サービスの本邦海岸地球局料については62年12月),料金値下げが行われた。平均値下げ率は,それぞれ,22%,10%,28%となっている。
 今後とも,国際電気通信料金が,より安く利用しやすいものとなることが期待されている。
 (総合ディジタル通信サービスの開始)
 電話網のディジタル化によって実現するISDNは,多様な音声系通信サービス,データ系通信サービスや画像系通信サービスを統合した総合ディジタル通信サービスを実現し,高度化・多様化する利用者のニーズに効率的に対応することができる。
 ISDNは,現在の電話網に代わる21世紀の高度な基盤通信網となるものであり,欧米を中心として国際的にその整備が進められている。我が国においても,全国的な整備・普及を図ることが社会,経済の情報化を推進する上で喫緊の課題となっている。
 ISDN実現に向け,これまで,電気通信網のディジタル化の積極的推進,INSモデルシステム実験の実施等の努力がなされてきたが,63年4月,東京,大阪及び名古屋においてCCITTの国際標準に準拠したISDNサービスの提供が開始された。
 (国際ディジタル回線交換サービスの開始)
 国際通信ニーズの高度化,多様化に対応して,KDDは,63年2月から,国際ディジタル回線交換サービス(VENUS-C)を開始した。国際公衆データ伝送サービス(VENUS-P)及び国際高速データ伝送サービス(VENUS-LP)がパケット交換方式であるのに対し,このサービスは,回線交換方式であり,ファイル転送等に適している。

 (3)多様化する無線通信サービス

 近年,無線通信に対するニーズの高まりや通信技術の発達に伴い,様々な無線通信システムが開発され,導入されている。
 特に,62年度においては,電波法の改正によるコードレス電話の無線局免許の不要化,自動車電話についての新規参入等無線通信分野に大きな変化がみられた。
 (マリネット電話の導入)
 東京湾,大阪湾等の大規模港湾及びこれに隣接する陸上地域における海上運送業,水産物の輸送等の分野の無線通信需要が増大している。62年4月,港湾地域における小型船舶等のための簡易な無線通信システムの技術的条件について電気通信技術審議会から答申があり,これを踏まえて,62年8月,関係省令の改正が行われ,港湾無線電話通信(マリネット電話)が導入された。
 港湾無線電話通信は,港湾及びその周辺の区域において,船舶,車両,関連事業所等の間で通信を行うものであり,一般の電話との接続も可能である。
 このサービスについては,東京湾マリネット(株)が,東京湾地域において,第一種電気通信事業として,63年9月から開始する予定である。
 (コードレス電話の開放)
 コードレス電話は、家庭内や事務所内において,一定の範囲で自由に持ち運んで使える電話である。
 コードレス電話は,61年度末現在,約2万2千台が利用されていたか,混信,誤接続,誤課金の発生するおそれがあるので,NTTの回線には,NTTが提供するコードレス電話しか接続することができなかった。
 61年2月,誤接続,誤課金を防ぐためのコードレス電話の技術的条件について,電気通信技術審議会の答申が出された。これを受けて,関係省令が改正され,端末設備に使用される無線設備を識別するための符号を有し,通信路の設定に当たってその照合を行うことなどの条件が定められた。
 また,62年6月の電波法の改正によってコードレス電話の無線局について,技術基準への適合性が確保されている場合は,免許が不要とされた。
 これらの結果,62年10月から,以上の条件を満たすコードレス電話を電気通信回線に接続することが可能となった。
 (広帯域無線サービスの開始)
 長距離系新事業者が利用者の端末まで自らの有線回線を設置するには,莫大な投資が必要となるので,長距離系新事業者は,利用者から自らの設備までの回線はNTTに依存している。
 この間の回線に無線を利用した場合は,有線の電気通信設備を設置する場合に比べて容易に利用者の端末との間の回線を設けることができる。
 63年3月,第二電電(株),日本テレコム(株)及び日本高速通信(株)が,このように無線を利用した広帯域無線サービスの提供を開始した。このサービスは,高速データ伝送,高速ファクシミリ伝送,テレビ会議等に利用されている。
 これにより,長距離系新事業者による,限られた一部ではあるがエンドツーエンドのサービスが実現された。

 

 

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