昭和63年版 通信白書

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1-2-2 地域に展開する情報通信関連産業

 ここでは,地域経済の発展や地域の情報化に大きな影響を与える情報通信関連産業の各地域における展開状況について総務庁の事業所統計により分析する。

 (1)都道府県別の情報通信関連産業の展開状況

 ここでは,地域に展開している事業所のうち民営の情報通信関連産業(国・日本国有鉄道及び地方公共団体の事業所を除く。)について,通信業,放送業,情報通信関連ハード産業及び情報通信関連ソフト産業を取り上げ分析する。
 61年の都道府県別の情報通信関連産業の事業所数及び従業者数は,<2>-1-2-12表及び<2>-1-2-13表に示すとおりである。
 ア 通信業
 通信業とは,ここでは電信電話業,有線放送電話業及び通信に附帯するサービス業を指す。
 全国の通信業の事業所数は7,260であり,従業者数は約29万2千人であった。
 通信業において従業者数が多い地域のシェアは,東京が14.8%,大阪が8.6%であるが,変動係数でみると1.11であった。これは,全産業の変動係数(1.18)と比べても小さく,通信業が比較的全国的に分散が進んでいる産業であることを示している。
 イ 放送業
 放送業とは,ここでは公共放送業,民間放送業及び有線放送業を指す。
 全国の放送業の事業所数は1,519であり,従業者数は約5万8千人であった。
 放送業において従業者数が多い地域のシェアは,東京が26.9%,大阪が10.9%であり,変動係数でみると1.89であり,集中化が進んでいる産業であることを示している。
 特に,東京への従業者数の集中が目立っている。これは,東京が番組の企画,制作,発出等の中心であることを示している。
 逆に,奈良の約200人をはじめとして,三重,滋賀,和歌山等の低さが目立っている。また,東京を除く首都圏も全般的に低くなっている。これは,これらの地域がテレビジョン放送の放送対象地域としては広域圏に属しており,東京,大阪又は名古屋に依存していることを示している。
 ウ 情報通信関連ハード産業
 情報通信関連ハード産業とは,ここでは電線・ケーブル製造業,通信機械器具・同関連機械器具製造業,電子計算機・同附属装置製造業及び電子機器用・通信機器用部分品製造業をいう。
 全国の情報通信関連ハード産業の事業所数は2万5,240であり,従業者数は約128万8千人であった。
 情報通信関連ハード産業において従業者数が多い地域のシェアは,神奈川が12.5%,東京が11.9%であり,変動係数でみると,全産業の変動係数とほぼ同じである1.21であった。
 情報通信関連ハード産業の特徴として,山形,福島,秋田,岩手,宮城,群馬,栃木等の南東北地域及び北関東地域で従業者数が比較的多いことが挙げられる。また,情報通信関連ハード産業がこれら地域の産業に占める割合も高いことから,比較的各地方への分散になじむ産業であることを示している。
 エ 情報通信関連ソフト産業
 情報通信関連ソフト産業とは,ここでは情報サービス業及びニュース供給業をいう。
 全国の情報通信関連ソフト産業の事業所数は1万4,161であり,従業者数は約35万2千人であった。
 情報通信関連ソフト産業の従業者数が多い地域のシェアは,東京が49.9%、大阪が11.0%であった。東京のみで全国の約半分のシェアがあり,2地域で全国の約6割のシェアを占めている。変動係数でみても,3.43と高いものとなっている。典型的な大都市集中型産業である。さらに地域ブロックでみた場合も,そのブロックの中心の都府県に集中している。
 この大都市,あるいは地方中枢都市への集中度の高さは,放送業や情報通信関連ソフト産業は,情報の処理・加工を直接行う部門であり,ここでは情報の集積効果が働くこと,また,本源的な情報発信源と直接接触を必要とすることに起因している。
 オ 人口30万人以上の都市における情報通信関連産業
 ここでは,人口30万人以上の都市における情報通信関連産業の特徴をみることとする。
 人口30万人以上の都市における情報通信関連産業の従業者数は,<2>-1-2-14表のとおりである。
 情報通信関連産業において,人口30万人以上の都市の従業者数が全国の情報通信関連産業の従業者数に占めるシェアは通信業では52.3%,放送業では77.7%,情報通信関連ハード産業では28.2%,情報通信関連ソフト産業では84.2%であった。
 この中でも,都市機能の性格により部門ごとの集積度合に顕著な差がある。すなわち,同じような大都市であってもブロックの中枢機能を有するか否か,また,同一都道府県内にあってもその中枢機能を有するかによって差がみられる。まず,我が国の第2位,第3位の大都市である横浜市と大阪市を比較した場合,近畿地方の中枢機能を有する大阪市は横浜市に比べ放送で11.6倍,情報通信関連ソフト産業で2.5倍となっている。
 また,同一県内でみても,千葉県では,その中心の千葉市と市川,船橋及び松戸の3都市を合計しても,人口は後者が多いにもかかわらず,千葉市以外の3都市の放送や情報通信関連ソフト産業の従業者数を合計しても千葉市の従業者数を下回っている。
 同じく,福岡県についてみると,第2次産業主体の北九州市と九州ブロック,県の中枢機能を有する福岡市を比較すると,福岡市は北九州市に比較して,放送業で6.1倍,情報通信関連ソフト産業で4.9倍となっている。
 他方,通信業や情報通信関連ハード産業に関してはこのような大きな差はみられない。
 このことは,情報の処理・加工等に直接係わるものの中枢都市への集中の高さを改めて裏付けるものといえよう。

 (2)地方公共団体と情報産業関連企業

 ア 情報産業関連企業の立地状況
 郵政省の調査によれば,情報機器製造業者,ソフトウェア業者,情報処理業務を行う情報サービス業者等(以下「情報産業関連企業」という。)の立地状況に関して,市区町村では「非常に多い」あるいは「かなり多い」としたものは4.1%にとどまっている(<2>-1-2-15図参照)。
 しかし,人口規模別にみると,人口30万人以上の都市では「非常に多い」あるいは「かなり多い」としたものが34.0%と高くなっている(<2>-1-2-16表参照)。また,この割合は都市の人口規模が小さくなるにつれて低くなる傾向がある。これは,情報産業関連企業の大都市での展開を地方公共団体の側からみても裏付けるものである。
 イ 情報産業関連企業の立地の促進
 今後の情報産業関連企業の立地の促進についてみると,地方公共団体は概して積極的である。
 「積極的に促進したい」あるいは「できれば促進したい」としたものが87.0%であった(<2>-1-2-17図参照)。
 これは,情報産業関連企業の雇用吸収力の高さ,今後の発展性の高さ等が評価され,地域経済の発展のためにリーダー的役割を果たすことが期待されているためと考えられる。
 人口規模別にみると,「積極的に促進したい」と考えている地方公共団体は,人口規模が大きいほど高い率となっている(<2>-1-2-18表参照)。
 ウ 情報産業関連企業立地に関する今後の意向
 情報産業関連企業の立地状況と今後の立地に関する地方公共団体の意向をみると,情報産業関連企業が多いとした地域のほうが,情報産業関連企業が少ないとした地域よりも,今後,立地を促進したい意向が強いことが分かる(<2>-1-2-19表参照)。
 これは,情報産業関連企業,特にソフト的な部門は先にみてきたように,ある一定以上の都市規模が必要な産業であること,あるいは,情報の性質として集積的な効果が働くことから,既に情報産業関連企業が立地されている地域では立地が容易であるからと考えられる。

 (3)情報通信関連産業の展開と地域特性

 以上みてきたように,情報通信は各地域経済にとって重要な地位を占めており,地域経済の発展にとって情報通信は必要不可欠なものとなっている。また,情報通信関連産業の雇用吸収力の高さ,今後の発展性を考えると各地域においても情報通信関連産業の立地の必要性は高まっている。
 その際,ソフト的部門が都市規模の大きいほど,また,中枢機能を有しているほどなじむこと,ハード的部門がそういったものにかかわらず比較的分散が容易であることといった,産業別の性格に即し,各々の地域特性に応じて展開し,我が国経済の地域ごとの均衡ある発展に資することが期待される。

<2>-1-2-12表 61年の都府県別情報通信関連産業事業所数(民営)

<2>-1-2-13表 61年の都道府県別情報通信関連産業従業員数(民営)

<2>-1-2-14表 61年の人口30万人以上の都市における情報通信関連産業従業者数(民間)(1)

<2>-1-2-14表 61年の人口30万人以上の都市における情報通信関連産業従業者数(民間)(2)

<2>-1-2-15図 情報産業関連企業の立地状況

<2>-1-2-16表 人口規模別情報産業関連企業の立地状況

<2>-1-2-17図 情報産業関連企業の立地促進の意向

<2>-1-2-18表 人口規模別情報産業関連企業の今後の立地促進意向

<2>-1-2-19表 情報産業関連企業の立地状況と立地の促進

 

 

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