昭和59年版 通信白書

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2 情報処理技術

(1) ハードウェア
 ア.本体系装置
 コンピュータは,従来は主として LSI等の素子技術の進歩により,演算速度の高速化を実現してきたが,今後は,先回り制御,並列処理方式等の高速演算方式,さらには,システムのスループット,信頼性・運用性の向上を図った複合コンピュータ方式等の開発が進められている。
 記憶装置は,高速ICメモリと低速ICメモリとで主記憶を構成するという記憶階層方式が一般の大型機で採用されている。ここしばらくは,このような記憶階層が存続すると思われるが,高速ICメモリの高集積化,低価格化に伴い,近い将来,高速大容量のICメモリのみで主記憶装置が構成される可能性がある。
 イ.通信処理装置
 データ通信の進展に伴い,端末の多様化,回線の高速化,業務の拡大等システムにおける通信制御負荷の問題が,クロ-ズアップしてきており,これらの融通性・拡張性に対処するために通信制御機能を個別に実行する通信制御装置の開発が進められている。
 ウ.周辺装置
 周辺装置は,大別してファイル記憶装置と入出力装置に分けられる。ファイル記憶装置については,高速化・大容量化が進められており,1ギガバイト級の磁気ディスク記憶装置や1台当たり数十〜数百ギガバイトの超大容量磁気記憶装置,さらに最近低廉化の著しいICメモリを使用した半導体記憶装置等の実用化が進められている。
 また,高密度化,小型化による経済化を図った数百メガバイト級の小型の磁気ディスク記憶装置が開発されている。
 入出力装置は,さらに,高速化を目指すとともに,マンマシン・インタフェイスの改善を目指し,文字・図形・音声等による入出力装置の開発が進められている。
(2) ソフトウェア
 ア、データベース技術
 データの大容量化及び相互関係の複雑化に伴い,より効率的で使いやすい高度なデータ管理機能の必要性が高まり,複雑,大量のデータを一元的に管理して解決しようとするデータシステムの実用化が進んでいる。
 この種のシステムの実現に当たって,データの蓄積についての物理的配置や論理的関係付けを行うデータベース定義機能,データの検索,更新及び加工を行うデータベース操作機能等を備えたデータベース管理システム(DBMS)の開発が進められている。
 イ.ソフトウェア作成及び維持管理の効率化
 ソフトウェア量の飛躍的増大,保守費の急増,プログラム要員不足等の要因により,“ソフトウェアの危機”が叫ばれており,プログラムの生産性向上及び維持管理の効率化が重要となっている。
 ウ.ネットワーク・アーキテクチャ
 最近のデータ通信システムは,各種資源の分散及び共用,システム全体としての価格性能比の向上等をねらいとしたネットワーク化の進展が著しい。しかしながら,複数のコンピュータ,端末等を通信回線で結合して効率的なデータ通信網を構築するためには,その構成方法,通信規約(プロトコル)の標準化等多くの問題を解決しなければならない。
 郵政省ではこれらの問題を個々のシステム対応ではなく,統一的に解決するネットワーク・アーキテクチャとして「汎用コンピュータ・コミュニケーション・ネットワーク・プロトコル(CCNP)」の開発を進め,55年郵政省告示として発表し,59年に改正を行った。
 これはコンピュータ間通信を広く国家的立場から検討し,国際通信網との接続等も考慮した標準的なプロトコルの確立と普及とを目的としたものである。
 電電公社では,データ通信の円滑な発展を図るため,計算機,通信網及び端末間の汎用的な通信規約の確立を目指して52年度よりDCNA(Data Communication Network Architecture)の開発に着手し,所期の目的である国内での異機種計算機間通信に適用可能な標準的なデータ通信サービス用プロトコルの開発を行い,57年度でメーカ各社との共同研究を終了した。
 今後はINSに必要なプロトコル及び国際標準化機構(ISO),CCITT等国際標準化動向との整合による一層の充実を図るなどの検討が続けられる。
(3) 機密保護
 コンピュータが社会活動の中でますます重要性を高めていく中で,コンピュータシステムの安全対策が大きな関心を呼んでいる。とりわけ,今後のネットワーク化の進展とともに,一層システムの大規模化,広域化,分散化が進むと予想され,従来の閉鎖的システムでは考えられないような各種の事故や障害が懸念されている。
 このような事故を未然に防止するため,センタ,回線,端末にわたり安価で効果的な暗号化方式,またDES(Data Encryption Standard)方式や公開鍵暗号化方式等を含めた高度な暗号化方式をはじめ,各種の技術開発が積極的に進められている。

 

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