昭和57年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

2 主な動き

 ア.電気通信審議会の設置
 電気通信行政の一層の公平かつ能率的な運営を図るため,57年10月1日,郵政省に附属機関として電気通信審議会が設置され,これに伴い,従来設けられていた郵政審議会電気通信部会及び有線放送審議会が廃止された。
 電気通信審議会は,近年における我が国社会の情報化の進展に伴い,電気通信が国民生活及び国民経済に大きな影響を及ぼすようになっていることから,電気通信行政に関する調査審議機関の充実強化を図り,長期的かつ総合的な視点に立って施策を推進するため設けられたものである。
 イ.データ通信利用制度の改定
 コンピュータや電気通信技術の進歩,利用動向の変化に対応し,データ通信の一層の発展を図るため,公衆電気通信法の一部を改正する法律(「行政事務の簡素合理化に伴う関係法律の整理及び適用対象の消滅等による法律の廃止に関する法律」の一部としで提出したもの。)が57年7月9日成立した。
 改正の主な内容は,[1]特定通信回線共同使用契約申込みの個別認可制の廃止,[2]公衆通信回線使用契約に係る電子計算機等の共同使用の制限の廃止,[3]他人使用契約に係る特定通信回線と他人の設置する電子計算機等との接続の認容,[4]公衆通信回線と特定通信回線等との相互接続について一定の基準に該当する場合の個別認可の廃止,などであり,57年10月23日から施行された。
 ウ.電電公社の在り方に関する臨時行政調査会答申
 臨時行政調査会は,57年7月30日,内閣総理大臣に対して,国の機構,制度及び政策の全般について,中長期的な展望に立った行政の在るべき姿,今後の行政改革の基本的な方策を提示した基本答申を提出した。
 この中で,電電公社関係については,[1]5年以内に基幹回線部分を運営する中央会社と地方の電話サービス等を運営する複数の地方会社とに再編成することとし,当面,政府が株式を保有する特殊会社に移行させる。なお,基幹回線分野における有効な競争を確保するため,一定の条件を満たせば新規参入を認める,[2]再編成までの間における合理化として,交換手等運用部門,保守部門,電報部門等について極力要員の合理化を図るほか,宅内機器部門,データ通信設備サービス部門,保守部門の一部等を分離する,などとなっている。
 エ.国際通信料金の引下げ
 国際電電は,54年12月,55年7月,同10月の料金引下げに続いて,56年度には4月1日に,57年度に入ってからは5月1日に国際通信料金の引下げを行った。
 56年4月1日の改定では,国際通話料金を17〜55%,国際加入電信料金を10〜17%,国際専用回線料金を電信級3〜28%,音声級6〜46%それぞれ引き下げた。
 57年5月1日の改定では,国際通話料金について1〜39%引き下げるとともに,国際ダイヤル通話の利用促進を図るため,国際ダイヤル通話とオペレータ扱いの番号通話との間に原則として15%の料金格差の設定,及び我が国と時差1時間の範囲にある地域あて国際ダイヤル通話料金への夜間・日曜割引制度の導入を行った。また,国際加入電信料金について8〜23%,国際デーテル料金について8〜11%それぞれ引き下げた。
 オ.国際公衆データ伝送サービスの開始
 国際電電は,57年4月1日から「国際公衆データ伝送サービス(略称:VENUS-P)」を開始した。
 このサービスは,量的増大と質的多様化・高度化の著しい国際間データ通信の需要にこたえるため,我が国と外国との間でコンビュータ相互間,コンピュータ・端末間,端末相互間のデータ通信,データ伝送等を行うことを目的とした公衆電気通信サービスであり,57年9月末現在,米国,英国,フランス,西独,スペイン,スイス及びカナダの7対地との間で取り扱っている。
 力.インマルサット・システムによる海事衛星通信サービスの開始
 世界の船舶が通信衛星を利用した通信を行うことができるよう,各国が協力して創設した国際海事衛星機構(インマルサット)による海事衛星通信サービスが57年2月1日から開始された。
 このサービスは,世界的な海事衛星通信システムが完成するまでの暫定的なシステムとして,米国マリサット・ジョイントベンチャーが所有,運用していたマリサットシステムを引き継いだものであるが,料金及び提供条件が大幅に改定されるとともに,新たなサービスとして,電話網を利用したファクシミリ伝送,データ伝送等の取扱いが開始された。
 キ.電波法の一部改正
 航海の安全の確保,外交活動の円滑な推進,行政事務の簡素合理化等のため,電波法の一部を改正する法律が57年5月12日成立した。
 改正の主な内容は,[1]船舶において無線通信の業務に従事する無線通信士に関する規定の整備,[2]一定の条件の下で外国の大使館,公使館又は領事館の無線局への免許の付与,[3]一定の技術基準適合性が確保された市民ラジオ無線局に対する免許の廃止,などであり,[1]については政令で定める日,[2]及び[3]については58年1月1日から施行される。
 ク,放送法の一部改正
 国民の多様な情報に対する要望にこたえ,テレビジョン多重放送の実用化,外国人等による放送会礼の株式取得の制限等のため,放送法の一部を改正する法律が57年5月12日成立した。
 改正の主な内容は,[1]テレビジョン音声多重放送及びテレビジョン文字多重放送をNHKの業務に加えるなど,テレビジョン多重放送実用化のための必要な規定の整備,[2]NHKが,その業務に密接に関係する事業に出資することができるための規定の整備,[3]外国人等に対する放送会社の株式の取得の制限,[4]災害の場合の放送事業者の義務の明確化,などであり,57年12月1日から施行される。
 ケ.放送の多様化に関する調査研究会議の報告
 郵政省は,新しい放送メディアの登場と放送に対する視聴者の需要の変化に伴って多様化しつつある放送サービスの在り方について調査研究を行うため,55年7月,学識経験者等からなる「放送の多様化に関する調査研究会議」を設けた。
 同調査研究会議では,[1]放送の多様化に関する課題,[2]多重放送,衛星放送の在り方等を中心に幅広く検討を行い,57年3月,報告書を取りまとめた。
 郵政省は,今後この報告書の趣旨をも参考とし,放送の多様化施策を推進していくこととしている。
 コ.世界コミュニケーション年に関する国連決議
 国際連合では,1981年11月の第36回総会において,1983年(58年)を世界コミュニケーション年(略称:WCY)とすることを決議し,その主導機関として国際連合の専門機関の一つである国際電気通信連合(以下「ITU」という。)を指名した。
 世界コミーニケーション年は,コミーニケーションの発展に関する政策の深い考察及び分析を行うための機会を提供すると上もに,通信インフラストラクチャの発展を促進するため設けられたものである。
 政府は,国連決議を尊重し,これに積極的に取り組むため,57年9月10田内閣総理大臣を本部長とする[世界コミュニケーション年推進本部」を設けるとともに、「世界コミュニケーション年国内委員会」の協力を得てその推進を図ることとしている。

 

第1部第1章第1節1 社会経済動向と通信 に戻る 第1部第1章第2節1 情報化の把握と情報流通センサス に進む