昭和57年版 通信白書

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6 郵 便

(1)我が国の動き
 ア.郵便を取り巻く環境の変化
 郵便は,現物性,記録性,大量性,経済性等の面で優れた特性を有して本り,基幹的な通信サービスとしての役割を担っている。しかし,最近の電負通信技術の急激な発達,自社便,使送便,あるいは民間運送業者による小酉物品輸送等の急激な展開,拡大は,通信サービスに占める郵便の位置付けに大きな影響を及ぼしつつある。
(ア)通常郵便
 電気通信技術を利用した通信サービスは,迅速性,容易性といった面から通常郵便と競合する面が多いが,特にファクシミリ通信は記録セ(疑似現物性)という面で,通常郵使との競合,代替関係が強い。
 また,電電公社による公衆ファクスサービス,ファクシミリ通信網カービス等が開始されており,今まで以上にファクシミリの普及・定着力予想され,これら通信サービスと通常郵1との競合,代替関係が一層強まるものと思われる。
(イ)小包郵便
 最近における民間運送業者による小型物品輸送取扱数ぱ大きな伸びる示している(第1-2-22図)。
 これは,48年秋のオイルショックを契機として荷動きの停滞と物流構造の変化により,民間の運送業者が少量で小型の物品輸送分野へこぞ-て参入してきたためである。
 イ.サービスの改善及び新しいサービスの展開
 厳しい環境の下,郵便事業においては,安定したサービスの確保とその1に立った効率的な事業運営を図り廉価な料金で良質のサービスを提供してしくため,各種の施策が講じられている。
(ア)電子郵便実験サービスの開始
 利用者の多様化する二-ズに対応した郵便の新しいサービスとして電子郵便実験サービスが,東京,大阪,名古屋の3都市間において56年7月から開始された。その後57年6月,札幌市,福岡市を加え取扱地域の拡大を行うなどサービスの拡充が図られた。
 具体的なシステムは,第1-2-23図のとおりであり,郵便局の窓口で引き受けた文書をファクシミリ送信装置によって相手の郵便局へ伝送し7受信局ではこれをファクシミリ受信装置により受信し,電子郵便封筒に封入し,封かんした後,速達便で配達するものである。
 郵政省ではこの実験サービスを通して需要の動向,運用の経済性等の資料を収集し,今後の電子郵便の在り方を探ることとしている。速達
(イ)エコーはがきの発行
 56年7月から郵便の新しい商品として広告つき葉書(愛称「エコーはがき」)が発行された。これは官製葉書を広告媒体として広告主に提供し広告料を得る一方,売価を5円安の35円とし,実質的に安い料金で葉書が利用できる道を開くことによって,利用者の利便を図ることを目的としている。
(ウ)絵入り年賀葉書の発行
 58年お年玉つき年賀葉書として葉書の裏面に賀詞等を印刷した絵入り年賀葉書が57年11月に発行された。これは絵や賀詞等を印刷した年賀葉書に対する利用者の二-ズにこたえることなどを目的としている。
(エ)小包郵便物のサービス改善
 小包郵便物の新しいサービス及びサービス改善として57年6月から,
 [1]速達小包の航空機搭載,[2]普通小包のスビードアップ,[3]手紙と小包の向時配達,の施策が実施された。
 [1] 速達小包の航空機搭載
 遠距離あての速達小包の送達速度を向上させるため航空機搭載を行い,サービスの改善を図ることとした。従来,速達小包の航空機搭載については航空小包制度(航空小包の取扱いの申出があり速達料金のほかに航空料金を納付したものについて,航空機搭載を行う制度)があったが,この改正により廃止された。
 [2] 普通小包のスビードアップ
 取扱物数が特に多い東京・大阪間を中心として既存の施設をフルに活用し,更に集中局での夜間処理,関連する運送便の調整等を行い翌日配達を図ったものである。また,国鉄コンテナによる運送区域についても集荷,配達時刻の見直しにより速度アップを行った。
 [3] 手紙と小包の同時配達
 この取扱いは手紙を添えて品物を郵送することができるようにしてほしいという利用者の強い要望にこたえたサービスであり,差出しの際には,手紙は小包に密着していること,双方の料金が納付されてぃること等が必要である。
(2)諸外国の動き
 諸外国においても我が国と同様郵便の送達速度の改善に対する要請が強く,このため即日(翌日)配達サービス,ビジネス郵便,電子郵便等の高速度郵便の開発,実用化が進展している。ここでは特に顕著な動きを示す米国郵便事業(USPS)が提供するエクスブレスメール及び欧米諸国における電子郵便の現状について紹介する。
 ア.エクスプレスメール
 エクスブレスメールは1970年,ワシントンD,C.とニューヨーク市間における試行的な「翌日サービス」として開始されて以来,迅速確実な配達を提供するサービスとして利用が広まった。現在,国内郵便サービスでは「利用者指定サービス」,「翌日サービス」,「即日空港サービス」の3種類が提供されている。「利用者指定サービス」とは,利用者がUSPSと差出場所,集荷サービスの有無,日時,回数,配達(交付)場所について契約を取り交わし,郵便業務のサービスを受けるものであり,全米に支店網を持つ大企業の利用が多い。なお,郵送物品が24時間以内に配達又は窓口交付されない場合は,郵便料金の全額還付を請求できる。
 「翌日サービス」とは,午後5時までに差し出された郵使について,名あて人配達の場合は翌日の午後3時まで,エクスプレスメール取扱郵便局における窓口交付の場合は,翌日の午前10時までに送達することを内容としたサービスである。利用者としては小規模企業,個人が多い。
 「即日空港サービス」とは,利用者が主要47都市にある49の空港郵便施設へ郵便物を持参することにより,一定時間内に定められた空港郵便施設に郵便物が到着するよう約束された郵便サービスのことである。
 イ.電子郵便
 米国における電子郵便サービスとしては,「メールグラムやサービス」と「コンピュータ発信電子郵便(E-COM)・サービス」の2つがある。
 メールグラム・サービスは,ウエスタン・ユニオン電信会社(WUT)とUSPSの共同により1970年から提供され,1981年の取扱数は4,100万通となっている。これは利用者がWUTの営業所の窓口に持ち込んだ原稿や磁気テープ,または直接WUTの施設に電話で,あるいは自己のテレックス装置等で直接入力したメッセージを郵便局に送信し,そこでハードコピーにして郵便で配達するサービスである。
 E-COM・サービスは,利用者のコンピュータ等から通信回線を介して直接取扱郵便局に入力されたメッセージを,ハードコピーにして郵便で配達するサービスである。メールグラム・サービスに比べ送達速度は遅いものの(メールグラム・サービスは翌日配達であるのに対し,E-COM・サービスは翌々日配達となっている。)料金は安く,大量に郵便物を差し出す企業向けのサービスとなっている。
 なお,E-COM・サービスの発展形態として翌日配達を目指した「電子メッセージ・サービス・システム(EMSS)」が,1990年からの実用化に向け,開発が進められている。
 英国では1974年から2年間「ポスト・ファックス・サービス」と呼ばれる電子郵便の試行サービスが行われたが,利用状況がおもわしくなく,実用化に至ることなく中止された。
 その後,1980年6月にロンドン・トロント間で「インテルポスト・サービス」と呼ばれる国際電子郵便サービスが開始され,1981年には米国,オランダ等へもサービス拡大がなされた。これはファクシミリ型の電子郵便であり,受信地時刻午後4時までに着信したものは,翌日配達が可能とな・っている。
 国内電子郵便サービスは,国際サービスと同じく「インテルポスト・サービス」の名称で1981年2月に開始されたが,現在の54センターにファクシミリ端末を設置し伝送を行っている。
 フランスでは「テレコビー・サービス」と呼ばれる公衆局間ファクシミリサービスが1974年2月に開始された。これは郵電庁のテレックス端末設置局にファクシミリ端末を設置し,公衆電話網を介して公衆局間のメッセージ通信サービスを提供するものである。なお,受信局では,電報配達と同じ方法で配達されている。フランスではこのほか,1978年11月から「テレファックス・サービス」と呼ばれる公衆センター加入者間のファクシミリ伝送サービスも提供されている。
 西独では「テレブリーフ・サービス」と呼ばれる電子郵便サービスが,1980年6月に開始された。これは西独全土を対象としたサービスで,約600局の郵便局にファクシミリ端末を設置し,電話網を利用して郵便局間若くは郵便局とテレファックス(ファクシミリ端末)利用者間の郵便伝送を行おうというものである。
(3)今後の取組
 郵便物数の動向を見ると,その伸び率は30年代では平均約7%,40年代では平均4%,50年代に入ってからは2%程度と次第に鈍化してきている。
 これは安定経済成長の時代への移行,及び郵便以外の通信メディアとの競合関係の進展に原因があるものと思われる。このような経済環境の下,電気通信メディアあるいは小包における宅配業者等との競合関係が強まる時代に入った郵便事業としては,一方において郵便の利用促進を図り収入を確保するとともに,他方においては可能な限り効率化を推進し,運営経費の上昇を極力抑制していくことが緊急の課題となっている。
 これらの課題の解決に向けて,利用者に対するサービス改善(電子郵便実験サービスの開始,エコーはがきの発行,絵入り年賀葉書の発行,速達小包の航空機搭載等),事業運営の効率化(各種機械化の推進,配達度数の一度化等),安定した業務運行の確保(集配作業環境の改善,郵便局舎の改善等)等の施策が鋭意精力的に推進されているところである。
 今後においても,利用者の二-ズに適確に対応し得る良質なサービスの提供が求められている。

第1-2-22図 小包郵便物数と主要宅配便取扱物数

第1-2-23図 電子郵便実験システムの構成図

 

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