昭和57年版 通信白書

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4 新しい通信サービスの展開

(1)通信メディアの高度化・多様化
 基幹通信サービスの普及,通信関連技術等の進展,社会経済環境の変化に伴う利用者二-ズの高度化・多様化等を背景に,通信分野に大きな変革が生じつつある。
 その主な特徴としては,第一に,既存通信メディア間の融合により電子郵使,ビデオテックス(キャプテンシステム)等の新しい通信メディアの出現,発展が図られていることが挙げられる。第二に,通信技術と情報処理技術とが融合することにより,情報の送受信と計算,検索等の処理を一体的に行うデータ通信が出現,発展したこと,更に蓄積機能,同報機能等を生かした高度かつ多様なサ-ビスを提供する新しい通信メディアが出現しつつあることが挙げられる。
 ア.通信メディア間の融合
 これまで情報通信メディアは,新聞,出版,放送といった送り手が一方的に情報を伝えるマスコミ系メディアと,郵便,電信,電話といったパーソナル系メディアに分類され,それぞれ独自の組織・制度・技術上の基盤をもって運営されてきた。
 しかし,近年におけるエレクトロニクスを中心とする技術の発達による通信メディアの高度化・多様化により,通信メディア間の境界領域が不分明となり,そこに新しい通信メディアが出現しつつある(第1-2-1図参照)。その主な動向としては,
[1] 非電気通信系メディアと電気通信系メディアとの融合に伴い,郵便と電気通信との融合による電子郵便,新聞と電気通信との融合による電子新聞等の新しいメディアが出現していること。
[2] パーソナル系メディアとマスコミ系メディアとの融合に伴い,情報の伝送形態としては,マスコミ系メディアの単方向的な情報伝送形態に双方向性が導入され,ビデオテックス,双方向CATV等利用者ニーズに応じた新しいメディアが出現していること。などが挙げられる。
 イ.通信機能の高度化・多様化
 既存の通信メディアには,放送のように送り手が一方的に情報を伝える形式と,電信・電話のように利用者が双方向に情報交換する形式があるが.いずれも送り手が送った情報をそのまま受信者に伝えるものであった。次いで,通信技術とコンビュータ技術との融合に伴い,情報の伝送過程において,情報を定められた手順に従って加工して伝達するデータ通信が出現した。さらに,情報を一時蓄積して必要なときに伝達したり,情報を適時,必要とされる複数の相手方に同報的に伝達したり,また異種メディア間で情報を伝達することが可能な新しいタイブの通信が出現しつつある。
 これらの新しいタイプの通信は,従来からの情報を伝送するという通信機能に蓄積・交換・変換等の新しい機能を加えたものであり,その形態も電信・電話をより高度化したものから放送類似のものまであり,極めて高度かつ多様な範囲にわたるものである。
(2)新しいサービスの展開動向
 通信メディアの高度化・多様化と,利用者ニーズの多様化とあいまって第1-2-2図のように新しいサービスが開発,提供されるようになってきている。
 このようなサービスの実現は,利用者からみれば,情報内容及び端末における表現形式の多様化に伴う情報の選択範囲の拡大といえ,大量・画一的サービスから価値観の多様化した現代社会にふさわしい,より個別的ニーズへの対応を可能にしていくものと期待されている。
 ア.情報内容の選択範囲の拡大
 第1-2-3図は,情報の受け取り手から見た選択の自由度に関し,新旧のメディアを比較したものである。これによれば,文字放送,ビデオテックス,電子新聞等の新しいメディアは,選択の自由度の高い分野に出現してきている。
 例えば,テレビジョン放送が多数の利用者に対し画一的,一般的情報を提供しているのに対し,文字放送が加わることにより,提供情報が多様化し利用者の選択の自由度が増大するものともみることができよう。
 また,検索機能,双方向機能を有するキャプテンシステムの特質を生かすために,’56年8月からの第II期実験サービスでは,[1]クロ一ズド・ユーザ・グループ・サービス(会員制の情報提供サービス),[2]オーダ・エントリ・サービス(会話形式で利用者から商品の注文等が行えるサービス) 等を開始し,一層の個別的対応を可能とするサービスへの試みを行っている。このようなサービスの展開を通じ,多様化した利用者ニーズへの個別的対応が二層促進されていこう。
 イ.端末における表現形式の複合化
 第1-2-4図は,主な通信メディアについて,情報の表現形式と流通経路の物理的特性について図示したものである。
 端末における情報の表現形式において,音声情報を伝える電話や映像情報を主体とするテレビジョンのように,従来は記録系,聴覚系,視覚系のいずれか一つ(あるいは二つ)を基本とした形式であったが,これらを組み合わせ,必要に応じて選択ができる複合的形式への展開がみられる。例えば,一般情報をテレビジョン放送で得,補足事項,個別関心事項等を文字放送,静止画放送等の画像情報で楽しみ,必要情報をファクシミリ放送等で記録にとどめる等の多様な利用方法の実現が検討されている。

第1-2-1図 情報通信メディアの融合

表1-2-2図 我が国の通信サービスの発展動向

第1-2-3図 情報の受け取り手から見た選択の自由度

第1-2-4図 新しいメディア等の分類図

 

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