昭和57年版 通信白書

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2 ディジタル陸上移動通信方式

近年,IC技術,LSI技術の進歩によりディジタル信号処理が容易になってきているが,無線通信の分野においても固定通信では,1.544Mb/s(電話24ch相当)の小容量のものから,400Mb/s(電話5,760ch相当)の大容量のものまでのディジタル通信方式が実用に供されている。しかし,陸上移動通信にディジタル通信方式を導入するためには,陸上移動通信特有の高速フェージングの影響が少なく,かつ,伝送速度に対する必要周波数帯幅の小さい高能率変復調方式,所要伝送速度が低く,かつ,符号誤り率の増加に対して品質の劣化が少ない音声符号方式又は誤り訂正符号等の開発が課題になっている。
一方,社会経済活動面では,オフィスオートメーション等にみられるように,ファクシミリ,データ通信等が身近なものとなり,自動車との間においてもこれらのメディアを活用して車輛の運行を効率化したいという要望が高まっている。これらの新しい多様な情報伝送を効率的に行うためには,ディジタル通信が最適であり,国際的にみても多くの国でこの分野の研究開発が活発に行われている。
このような情況の中で,電波研究所は,56年度から周波数有効利用度が高く,電波監理を容易にすることが可能な陸上移動通信用ディジタル通信方式の研究開発に着手した。初年度は,陸上移動通信用として適用可能な既存のディジタル通信方式の全容を調査し,その結果,現在のアナログFM通信方式の周波数割当体系に適合させ易い16kb/s以下の伝送速度の変復調技術について特に研究開発が進んでいることが明らかになった。このため2年目の57年度からは将来利用されるディジタル通信方式の開発を目標として,高品質と高信頼性を得るためのフェージング克服技術,高度な周波数有効利用性を実現するための干渉・妨害対策技術及び情報源(音声等)の効率的な符復号化技術を総合した通信方式の研究開発を進めることとしている。
また,行政面からは,このようなディジタル陸上移動通信方式の開発状況を踏まえ,56年3月,電波技術審議会に「陸上移動業務におけるディジタル通信方式の技術的条件」について諮問した。審議は,近い将来に実用化の可能な方式に焦点が当てられており,57年11月には「現行FM通信方式に準ずるディジタル音声通信方式の技術的条件」について一部答申が得られる見込みである。この通信方式は,16kb/sの伝送速度で適応デルタ変調(ADM)したディジタル音声信号をGMSK,TFM,4値FM又はPLL4相PSK等により変調して無線伝送するものである。周波数間隔25kHzで現行アナログFM通信方式と同程度の伝送品質,周波数利用率が得られる方式である。
今後は,16kb/s以下の各種の伝送速度に対応したディジタル通信方式の変復調方式,必要周波数帯幅,伝送特性,干渉条件等の技術的条件の答申が予定されている。

 

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