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(1)情報流通量の推移 情報流通量は,供給情報量と消費情報量に分けられる。供給情報量は供給側が受信側に対し,消費可能な状態で提供した情報総量であり,消費情報量は,それを実際に消費した情報総量である。 45年度を基準とした情報流通量の推移は,第1-1-14図のとおりである。 55年度における総供給情報量は,前年度に比べ4.5%増加し,10年前の45年度の約1.9倍となっている。輸送系メディア及び空間系メディアの伸びが低いのに対し,電気通信系メディアの伸びが高くなっている。電気通信系メディアの中でも,個々のウェートは低いもののデータ通信及びファクシミリが大きな伸びを示しており,新しいメディアの増加が目立っている。 55年度の総供給情報量の内訳をメディア・グループ別にみると,テレビジョン放送,ラジオ放送等の電気通信系メディアが97.5%と圧倒的に大きな割合を占めており、輸送系メディ乙空間系メディアの割合はそれぞれ1.7%,0.8%にすぎない。電気通信系メディアの中でもテレビジョン放送の占める割合が最も大きく,総供給情報量の76.3%を占めている(第1-1-15図参照)。こうしたことから,我が国における情報流通の実態を供給面からみると,電気通信系メディアが主体となっており,中でもテレビジョン放送が中心的な存在であることが分かる。 一方,総消費情報量冫こついては,情報を消費する人口の増加率が低いことや,テレビジョン放送,ラジオ放送の視聴時間がほぼ限界にきていることなどから,ここ数年微増にとどまっていたが,55年度においては対前年度比1.3%減と初めて減少を示した。これは,総消費情報量の57.2%を占めるテレビジョン放送の消費情報量が減少したことによる。 なお,55年度の総消費情報量は,45年度の約1.2倍となっている。これをメディア別にみると,空間系メディアである会話,学校教育がテレビジョン放送に次いで大きな割合を占めており,情報の消費に関しては,電気通信系であるテレビジョン放送と並んで,会話,学校教育といった空間系メディアが重要な役割を果たしているといえる(第1-1-16図参照)。 (2)情報消費率の推移 供給された情報のうち,どの程度の情報が消費されたかを示す情報消費率(総消費情報量/総供給情報量)は年々減少する傾向にあり,55年度は7.2%となった(第1-1-17図参照)。このことは,テレビジョン放送,ラジオ放送といった放送系メディアが大量のマス情報を供給している反面,これに対応する人的・時間的消費能力が頭打ちになっているためであり,こうした傾向は今後も続くものとみられる。 (3)情報流通コストの推移 情報流通コストは各情報流通メディアにおいて,発信点から受信点まで情報を流通させるために必要なネットの経費である。 55年度における総情報流通コストは,対前年度比8.1%増の33兆2,000億円となり,45年度の約4.2倍となった(第1-1-18図参照)。総情報流通コストの約7割を占める空間系メディアの対前年度伸び率が54年度のそれを下回ったため,55年度においては全体として54年度の対前年度伸び率14.6%を下回る結果となった。しかしながら,電気通信系メディアについては,データ通信,ファクシミリ等の供給情報量が大幅に増加したことに伴い,情報流通コストの対前年度伸び率も増加し,55年度においては総情報流通コストに占める電気通信系メディアの割合が若干増加することとなった。 (4)情報流通距離量と情報流通単位コストの推移 第1-1-19図は,主なメディアについて縦軸に情報流通距離量を,横軸に情報流通単位コストをとり,45年度から55年度までの推移をみたものである。55年度における総情報流通距離量(消費情報量×流通距離)は総消費情報量の減少により,前年度に比べ1.O%減少した。これは45年度の約1.4倍である。また,情報流通単位コスト(情報流通コスト/情報流通距離量)は全メディア平均で45年度の約3.0倍となっている。これは消費情報量の頭打ちにより情報流通距離量がさほど伸びていないのに対し,情報流通コストが45年度の約4.2倍にも達していることによる。しかしながら,各メディアの情報流通単位コストをみると,45年度に比べ下がっているメディアが幾つかあり,これらはすべて電気通信系メディアであり,空間系メディア,輸送系メディアの中にはこのような傾向を示すメディアは見当らない。電気通信系メディアの中でも公社電報や公社電話のように,45年度以降も引き続き単位コストが上昇しているメディアが存在する一方,近年急速な発展を遂げているデータ通信やファクシミリといったメディアの単位コストの伸びがかなり小さいということは,これらのメディアにおけるコスト面での優位性を示すものである。 (5)情報化の展望 これまでみたように,我が国における情報流通の実態は,量的側面からみる限り,テレビジョン放送,ラジオ放送といった放送系メディアによるマス情報の大量供給と,情報能力の限界からくる情報消費率の低下という形で進んできた。 今日我々は,消費を上回る大量の情報が供給されている状態を「情報洪水」とか「情報過多」と呼ぶ場合があるが,こうしたギャップの拡大は社会の停滞を意味するものではない。現代は常に大量の情報がオーバーフローして存在する社会なのである。そして,情報消費率の低下は情報の量に対する価値を相対的に低下させ,質的に充実した情報に対する強い欲求を生みだす。マス情報よりはパーソナルな情報を,一般情報よりはより専門的情報が求められているのである。 そこでは,個々の求めに応じて必要とされる情報をタイムリーに伝送する情報通信メディアの存在が欠かせない。第1-1-20図は供給情報量の変化をメディア別にみたものである。テレビジョン放送,ラジオ放送等に対し,データ通信,ファクシミリといったメディアが急速な伸びを示しているのが特徴的である。