平成元年版 通信白書

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第2章 重層情報社会の形成と通信

(2)地域における情報通信基盤の整備

 ここでは,各地域の情報通信基盤の現状について述べる。
 ア テレトピア指定地域における情報通信基盤の整備状況
 各テレトピア指定地域では,地域の情報通信基盤となる各種のシステムの構築が進められている。
 テレトピア指定地域における情報通信システムの運用開始状況は,第2-2-7図のとおりであり,平成元年2月末現在,56地域で120システムの運用が開始されている(部分運用を含む)。これは,テレトピア指定地域の83.6%の地域で既にシステムの運用が開始されていることを示しており,60年3月に第1次の地域指定が行われて以来,約4年の間に情報通信基盤の整備が急速に進んでいることが分かる。
 テレトピア指定地域における情報通信基盤に関しては,平成元年2月末現在運用中のシステムで利用されているメディアをみると,ビデオテックスが40システムと最も多く,全体の27.4%を占めている。次いで,データ通信が33システム(全体の22.6%),CATVが23システム(同15.8%),ファクシミリが16システム(同11.0%)の順となっている(第2-2-8図参照)。
 59年度及び60年度では,データ通信を使ったシステムが多かったが,61年度以降,ビデオテックスを使ったシステムが多くなっている。これは,ビデオテックスのシステムを構築するためには,ハード面の整備に加えて提供する情報ソフトの作成が必要となり,システムの運用開始までに時間を要するためである。
 また,運用されているシステムは,特定のメディアに片寄ることなく,その目的や情報内容等に応じて各メディアの特性を生かしたシステム構築が行われている。
 例えば,十勝広域市町村圏では,住民総合サービスシステムが,CATV,データ通信及びファクシミリにより構築されており,そのうち窓口サービスについてはデータ通信及びファクシミリ,地域情報・教養講座についてはCATVが用いられている。また,静岡市の地震防災情報システムでは,緊急警報放送システム,文字放送,衛星通信,防災行政無等の様々なメディアが用いられている。
 テレトピア指定地域におけるシステム構築は,平成元年2月末現在279システム(運用中のものを含む)が予定されており,今後,地域情報圏の進展や,地域の発展に資することが期待される。
 イ 地域における高度な情報通信基盤の整備
 我が国の都市の整備は,都市基盤の整備,産業基盤の整備,交通・通信基盤の整備,生活環境の整備等様々な面において行われているが,近年,社会の情報化の進展を反映して,主要な地域中核都市では,都市開発の一環として大規模な情報通信基盤施設の建設計画が進められている(第2-2-9表参照)。
 地域中核都市の中でも,ブロック圏の中枢的な都市においては,衛星通信地球局,光ファイバ網,高度通信センターなどの高度な情報通信基盤施設を,都市の一区画に集中的に建設する計画が多くみられる。
 これらの基盤施設を集中的に建設する理由は,主として,
[1] 一体的な通信システムとして集中的に整備することにより,相互に
効率性を高めることができること。
[2] 容易に高度な通信サービスを提供することができるため,公共機関
や企業等を誘致し易くなる。多数の公共機関や企業等の立地は,地域
情報の集積を生み,当該エリアを地域情報圏の拠点として,発展させ
ることができること。
等が挙げられよう。
 今後,ブロック圏の中枢的な都市は高度な情報通信基盤施設の集中により,ブロック圏レベルの広域的な地域情報圏の拠点となるものと考えられる。
 また,民活法特定施設による高度な情報通信基盤の整備も進められている。
 民活法特定施設に対しては,政府からの無利子融資や日本開発銀行等からの出融資及び税制上の優遇措置を受けることが可能となる。
 郵政省の所管施設としては,現在,[1]電気通信研究開発促進施設,[2]電気通信高度化基盤施設,[3]衛星通信高度化基盤施設,[4]多目的電波利用基盤施設,[5]特定電気通信基盤施設があり,郵政省では以下に述べるような民活法特定施設を認定し,都市における情報通信基盤の整備を促進している。
(テレコムリサーチパーク)
 テレコムリサーチパーク(電気通信研究開発促進施設)としては,平成元年3月現在,関西文化学術研究都市内の国際電気通信基礎技術研究所が認定されている。
 国際電気通信基礎技術研究所は,電気通信分野における基礎的・先端的技術の研究開発拠点として,平成元年2月に完成した。現在,同研究所には,自動翻訳や光通信等に関する4つの研究機関が収容され,21世紀に向けた高度な通信技術の研究が進められている。
(テレコムプラザ)
 テレコムプラザ(電気通信高度化基盤施設)としては,平成元年3月現在,5つの計画が認定され(第2-2-10表参照),このうち富山市民プラザ及び熊本テクノプラザについては,平成元年の夏期以降に運用を開始する予定である。
 富山市民プラザの場合,富山市の市制100周年の記念事業として建設が進められており,地域情報,芸術情報,学習情報等を住民に提供し,ニューメディアを体験できる「情報プラザ」,地域の放送ネットワークの拠点となる「サテライトプラザ」などの情報通信関連施設と併せて,生涯学習の場となる「ラーニングセンター」,美術品等の展示を目的とした「アートギャラリー」などの文化施設が設けられている。
(テレポート)
 テレポート(衛星通信高度化基盤施設)としては,大阪南港地区の大阪テレポートが,63年3月に認定されている。
 大阪テレポートは,衛星通信用アンテナと光ファイバ網及びそれらを結ぶテレポートセンターから構成されている。衛星通信施設は,6Mb/sの通信容量を持ち,国内用及び国際用の通信衛星と通信回線を設定できる。光ファイバ網は国内通信回線との接続も予定されている。これらの通信施設により,高速ディジタル専用回線サービスやテレビ会議サービスなど,高度な通信サービスが提供される予定である。
 大阪テレポートは,63年6月に第1期工事が完了し,施設の一部は運用を開始している。現在,平成元年10月の全面開業を目指して,残りの施設の建設が進められている。
(マルチ・メディア・タワー)
 マルチ・メディア・タワー(多目的電波利用基盤施設)としては,平成元年2月に東京都田無市の田無タワー及び福岡県福岡市の福岡タワーが認定された。
 田無タワーは,急増する無線通信需要に対処し,併せて,建築物の高層化等による無線通信への電波障害を軽減することを目的として建設される多目的電波塔である。
 田無タワーは,固定通信用アンテナ82基,移動通信用アンテナ80基を備え,地域の陸上移動無線通信,防災行政用通信などを行う。また,地域住民の無線通信の理解促進のための展示施設も併設されている。運用は,平成元年7月に開始される予定である。
 福岡タワーは,テレビジョン放送の送信,地域の行政無線,地元企業への高度な無線通信サービス等を提供するための基盤施設である。
 福岡タワーは,陸上移動通信用アンテナ14基,放送番組及びデータ伝送用アンテナ34基,テレビ中継用アンテナ7基を備え,平成元年3月に完成した。今後,テレビジョン放送や,移動通信に利用するため準備を進めている。
 これまで述べたとおり,地域の中核都市においては,多様な情報通信基盤施設の建設が進められ,その運用が開始されている。
 これらの施設は,それぞれの地域の文化・経済・生活等の実状に応じ,施設の規模や設備内容等が決められており,今後とも,地域特性に応じた活用が図られていくであろう。郵政省では,情報通信基盤開発構想等に基づき,今後も積極的に地域に応じた拠点の整備を促進していくこととしている。

第2-2-7図 テレトピア指定地域のシステム運用開始状況

第2-2-8図 メディア別システム運用開始状況

第2-2-9表 都市開発における情報通信基盤施設の整備の例

国際電気通信基礎技術研究所(京都府)

第2-2-10表 テレコムプラザの建設計画

テレコムプラザの概念図

大阪テレポートの衛星通信用アンテナ(大阪市)

田無タワー,福岡タワー

 

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