平成元年版 通信白書

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第2章 重層情報社会の形成と通信

(3)世界規模の情報圏の拡大のために

 現在,世界規模の情報圏はほぼ形成されており,今後その拡充を図っていくためには,次のような課題への取組が必要とされている。
 ア 国際郵便及び国際電話サービスの改善
(国際郵便サービスの改善)
 我が国の国際化の進展に伴い,国際通信量は年々急速に増加している。国際郵便においても,その取扱数は,大きな伸びを示している。
 しかし,国際郵便は,国際小包を中心に,54年から増加を続けている民間クーリエ業との競争にさらされており,また,利用者からは,より高い信頼性,迅速性,料金の低廉化を求められている。
 国際郵便は,基幹サービスの一つとして,今後,料金の値下げ,貨物追跡システムの導入等の輸送システムの高度化,配送日数の短縮等の改善を図る必要がある。
 さらに,UPU等を通じた世界各国との協調や国際協力により,世界的規模での郵便サービスの向上や事業の効率化を図っていかなければならない。
(国際電話サービスの改善)
 国際電話については,近年における円高の進行に伴う,海外諸国との料金格差が指摘されてきたところであるが,54年以来8次にわたる料金値下げにより,是正が図られている。
 しかし,我が国の国際化の進展に伴い,国際電話の重要性は年々増しており,今後も一層の料金の低廉化,サービスの質的な向上が図られなければならない。
 イ 通信の標準化の促進
(電気通信方式の標準化)世界規模の情報通信基盤の形成に当たっては,各国の通信方式の標準化を進める必要があり,広帯域ISDNや開放型システム間相互接続(OSI)等コンピュータ間通信を保障する世界共通プロトコル等の標準化を進める必要がある。
(ハイビジョンの国際規格の調整)
 ハイビジョンは,次世代のテレビジョン端末として期待されており,世界各国でその実用化に向けて技術開発が進められているが,ハイビジョンを世界的に発展させるためには,技術開発とともに,ハイビジョンの規格の国際的な標準化が必要である。
 現行のカラーテレビ方式の場合,世界的に三つのテレビ方式に分かれたため,国際間のテレビジョン伝送や映像ソフトの交換の際に,テレビ方式の変換を必要とし,映像情報の活発な国際交流の妨げとなっている。ハイビジョンについても,規格の標準化はハイビジョンの発展のための大きな課題といえよう。
 現在,ハイビジョンの規格のうち,スタジオ(番組制作)規格については,日本,欧州諸国がそれぞれの方式を主張しており,標準化は難行している。ハイビジョンの規格は,CCIRにおいて,平成2年にスタジオ規格を標準化する予定であるが,この問題は各国の産業政策と深く関わっており,ハイビジョンの規格を円滑に標準化するためには世界的な協調が必要である。
 ウ 通信分野の国際協調・国際協力の強化
(通信分野の国際協調の推進)
 我が国の国際化が年々進展し,世界規模の情報通信基盤を形成していく中で,通信分野における国際協調の重要性が増大している。我が国は,UPU,ITU,CCITT等の国際機関に参加し,積極的な活動を行っているが,今後も一層そのような国際機関において,国際協調の促進に努力しなければならない。
 また,国際VANの規格調整問題等日米間,日英間など二国間で解決する必要がある個別課題も増加しており,二国間の国際協調についても積極的な対応を図らねばならない。
(通信分野の国際協力の強化)
 米国,日本等の先進国と一部の開発途上国との間には,依然,通信設備,技術水準,人材等において,大きな格差が存在している。世界的な情報通信基盤を発展させるためには,自国の通信技術の開発を進める一方,通信相手国の技術水準の向上,基盤整備に対しても積極的に協力を行わなければならない。
 国際通信網の発達により,今や世界の大部分の国・地域との間で電話,テレックス,電報等の国際通信が利用できるようになった。しかし,電話機の100人当たりの普及台数の場合,例えば,日本の約6倍の人口のインドは,日本の約90分の1に過ぎない(第2-2-5図参照)。
 我が国は,通信分野の経済面,技術面,人材面において,今後とも一層の国際協力を推進していくことが必要である。
 その他,重層情報社会が進展すればするほど,それだけ大きな問題となると考えられる,次のような課題についても適切な対応が迫られている。
 まず,不要電波障害への対応である。
 マイクロエレクトロニクス技術の発展と情報化の進展に伴い,外部からの電磁波の影響を受けやすく,また,それ自体不要な電磁波を発生する電子機器が広範に利用されるようになった。その結果,不要電波による機器の誤動作等様々な障害が発生しており,社会問題となっている。
 このため郵政省は,62年9月,不要電波に関する抜本的な対策を協議するため,関係省庁,学識経験者,業界団体等からなる「不要電波問題対策協議会」を開催し,障害実態の把握,電磁環境の調査,測定法のガイドライン策定及び広報活動等を行っている。
 このように不要電波問題は,情報化の進展とともに,早急かつ総合的な対策が望まれており,郵政省では,このほか,金融・税制上の措置を講ずる等総合的な対策を推進している。
 次に,データ通信における不法行為の発生が挙げられる。
 データ通信回線は,通信回線を介してコンピュータとコンピュータ,コンピュータとデータ端末を結んで行われるが,近年,通信回線を通じて,他人のコンピュータシステムを不正操作したり,悪質なプログラム(いわゆるコンピュータウィルス)を他人のデータベース等に送り込むことで,プログラムの破壊やデータを不正入手する不法行為の発生が認められている(第2-3-6表参照)。郵政省では,情報通信ネットワークの安全性・信頼性を高め,データ通信に対する不法行為を防止するための総合的な基準として「情報通信ネットワークの安全・信頼性基準」を設け,情報通信ネットワークのセキュリティ対策の推進を図っている。
 これらに加え,今後は利用者に防衛措置の強化を呼び掛けるとともに,このような行為の防止技術の研究開発の促進にも取り組むことが必要である。

第2-3-5図 世界各国の100人当たり電話機数(1984年)

第2-3-6表 情報通信システムに対する不法行為の事例

 

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