平成元年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

むすび

 昭和60年4月1日に電気通信事業法が施行され,電気通信分野全体に競争原理が導入された。60年以降、電気通信市場には民間企業の参入が積極的に行われ,現在,第一種電気通信事業者45社,特別第二種電気通信事業者25社,一般第二種電気通信事業者668社と多数の事業者が利用者の多様なニーズにこたえる様々なサービスの提供を行っている。このように,電気通信市場に競争原理を導入するという所期の目的はひとまず達成されたといえる。しかし,長距離系新第一種電気通信事業者の電話及び専用収入は,63年度上半期で,NTT収入の1.4%を占めているに過ぎないなど,まだ本格的な競争状態にあるとはいえない。また,長距離系新第一種電気通信事業者は,提供区域を本州を中心に漸次拡大しているが,依然として21道県においてはサービスの提供が行われていないなど,現状では通信制度の改革による恩恵は地方まで完全に行き渡っているとはいえない。今後とも競争を一層促進することにより電気通信市場を活性化し,通信料金全体の低廉化を進めるとともに,新第一種電気通信事業者のサービス提供地域を拡大し,通信制度改革の恩恵が広く全国で受けられるようにすべきである。情報化についてみると,産業では企業のネットワークの普及率が60年度の9%から62年度の11.6%へと,業務に占めるデータ通信の利用率が60年度の11.7%から62年度の15.4%へとかなりの伸びを示している一方,家庭では情報の装備及び選択面では進展がみられるものの,利用面ではあまり進展がみられない。我が国の情報化は産業を中心に進展しているものの,家庭の情報化はまだその緒についたところであるといえる。今後については、家庭の情報化の進展のための施策を行うことにより,産業,国民生活の両面において情報化の利便性を享受できるようにすることが望まれる。一方,地域における情報化にも進展がみられる。地域振興における通信の重要性を踏まえ,モデル都市に様々なニューメディアを導入し,地域社会の振興に資する施策であるテレトピア計画は,60年3月に第一次指定が行われて以来,漸次拡大され,現在,70都市において,着々と地域の実情に応じた情報通信システムの構築等,情報化への取組が進められている。また,61年5月に施行された民間事業者の能力の活用による民活法施設についても,テレコムプラザ等,全体で11プロジェクトが認定を受け,事業化が進められている。郵便事業では,現在,44都市が郵トピア構想モデル都市に指定され,DMサポートサービス等の新しいサービスの提供が行われ,放送分野では,ハイビジョン・シティ構想のモデル都市として,本年3月に13地域が指定され,平成元年度以降,ハイビジョンの導入に着手されることとなる。このように,従来全国的規模でしかとらえられなかった通信についても,地域の実情に応じた施策が地域の主体性により行われており,先駆的な地域では高度な情報通信基盤の整備も進められている。言葉を変えれば,全国規模,世界規模及び地域の情報通信基盤と,それに支えられた情報圏が重層的につながる重層情報社会が形成されている。63年は,重層情報社会の姿が明らかになった年であるといえる。今後,重層情報社会はその濃淡はあるにしても,着実に進展していくと考えられるが,情報通信基盤の整備や利用が進み,情報化が進めば進むほど産業経済の活性化や国民生活の向上に大きく寄与することが期待できる一方,ハッカー,不要電波等新しい影の問題も増大してくることを忘れてはならない。

 

第2章第3節2 重層情報社会の進展に向けて に戻る 付表 に進む