昭和57年版 通信白書

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4 画像通信

(1)ファクシミリ通信
 ア.我が国の動き
 我が国のファクシミリ通信は,46年の公衆法改正を契機として,47年以降公衆電話網利用によるファクシミリを中心に急速に普及し,利用者も官公庁や大企業中心から中小企業,さらに最近では,個人事務所や商店等へと広がりをみせている。このような状況において,国内のファクシミリ通信は,専用回線や公衆電話網の利用だけでなく,新たにファクシミリ通信網サービスや公衆ファクスサービス(一般利用者が電報電話局の窓口等に設置されたファクシミリ装置を利用して通信する。)が提供されるなど,サービスも多彩になってきている。
 特に,56年9月から開始されたファクシミリ通信網サービスは,ファクシミリ通信のための専用通信網であり,効率的にファクシミリ信号を送ることができるため,従来の公衆電話網に比べ,中長距離の通信料が安くなっているほか,同報通信機能等多彩なサービス機能も持っている。また,併せて提供開始されたミニファクスは,A5版用のファクシミリ装置であるが,機能の簡易化等により低価格化・小型化,操作性の向上が図られており,ファクシミリ通信網と公衆電話網の双方に接続して通信できるものである(第1-2-16図参照)。このような技術進歩により,ファクシミリ通信は,今後更に利用分野が拡大され,一段と普及が進むものとみられる。
 また,国際間のファクシミリ通B1こは,専用回線,デーテル,公衆電話網,ファクシミリ電報及び国際公衆データ伝送サービス(VENUS-P)が利用されている。我が国におけるファクシミリ総設置台数は,56年度末現在,およそ20数万台と推定され,このうち公衆電話網を利用したファクシミリが70%程度を占めているとみられ,年平均50%前後の伸びを示している。また,機種別のファクシミリ設置状況をみると,中・高速機のコスト低下と利用者の高速化志向を反映し,低速機(G1機)に比べ中速機(G2機及びミニファクス)及び高速機(G3機)の伸びが著しい(第1-2-17図参照)。
 近年,ファクシミリ通信は,機器の低廉化・小型化等により,更に手軽で経済的な通信メディアと認識されるに従って,その利用形態にも変化がみられる。第1に,従来,主に同一企業内で同一機種のファクシミリが使用されていたが,通信方式が標準化された機器の普及により,通信相手が他企業等,拡大する傾向がみられる。第2に,専用回線とユーザの蓄積型交換機とを結合し,企業専用のファクシミリ通信ネットワークを構築したり,電話やテレタイプ等とも共用できる複合通信ネットワークとして利用する大企業等が増えている。第3に,ワードプロセッサやコンピュータとファクシミリを組み合わせて使用するなど,ファクシミリ通信形態の多様化が挙げられる。えている。第3に,ワードプロセッサやコンピュータとファクシミリを組み合わせて使用するなど,ファクシミリ通信形態の多様化が挙げられる。
 イ.諸外国の動き
 諸外国においてファクシミリ通信は,米国をはじめ西欧諸国で主に利用されている。
 米国では,早くから公衆電話網に利用者自営の機器を接続することが認められていたため,ファクシミリの利用が最も進んでいる。米国内では,AT&TがDATAPHONEの名称で公衆電話網利用にょるファクシミリ通信等を提供している。また,ウェスタン・ユニオン電信会社(WUT)及び特殊通信事業者が専用回線により,グラフネット社等の付加価値通信事業者(VAC)がデータ網によりファクシミリ通信サービスを行っている。国際間では,AT&Tの公衆電話網利用のDATAPHONE国際記録通信事業者(IRC)の専用回線,デーテル,ファクシミリ電報等によりファクシミリ通信が行われている。
 英国では,公衆電話網利用によるFONOFAXと呼ばれるファクシミリ通信サービスが1979年11月から国内で開始されている。国際間のものとしては,ビューロファクスや公衆電話網を利用したサービスがある。
 フランスでは,1978年11月から国内で公衆電話網利用のTeleFaxを開始している。また,TRANSFAXと呼ばれるディジタル専用回線によるファクシミリ通信サービスが,1981年3月から実験的に提供されている。国際間のファクシミリ通信では,公衆電話網が利用されている。
 西独では,1979年1月から国内で公衆電話網によるTelefaxを提供している。国際間のファクシミリ通信には,公衆電話網が利用されている。
 主要国におけるファクシミリ装置の保有台数は,1981年において米国が約29万台,英国,フランス,西独がそれぞれ2〜3万台程度を有していると推定される。ところで,同じアルファベットを用いる米国と西欧諸国に普及率の大きな差がある理由として,通信事業者のファクシミリ通信サービスに対する取組み方,メーカの技術・生産・販売力等の差異が挙げられている。しかし,最近では西欧諸国でもファクシミリの優れたメディア特性に注目し,その普及とサービスの拡大に力を入れ始めており,将来的には米国や日本のように各分野で利用され,普及するものとみられる。
 ウ.今後の取組
 我が国のファクシミリ通信は,省資源,省エネルギー,OA化等時代の要請にこたえ,急速な成長を遂げているが,社会経済活動及び国民生活に一層役立たせるためには,今後解決すべきいくっかo課題が残ってぃる。
 第1は,ファシクミリ装置価格の一層の低廉化である。現在,エレクトロニクス及び通信技術の進展等により,通信機器,電子機器のコストの低減が図られているが,今後は経費負担能力が小さく,トラヒックの少ない個人事業所,一般家庭等の利用者層に普及させるためには,利用者ニーズに合った機能を有するファクシミリ装置の大量生産等による価格の低廉化を図る必要がある。
 第2は,通信方式の標準化である。国際電信電話諮問委員会(CCITT)では,既に公衆電話網利用によるファクシミリ装置のG2機及びG3機につぃて,標準化の勧告を採択し,我が国においても,54年10月にG2機,56年12月にG3機の推奨通信方式を告示し,標準化を図った。今後は,公衆データ網を利用するG4機の標準化について,CCITTの動向を踏まえっつ検討を進める必要がある。さらに,近い将来ファクシミリと日本語テレテックス(日本語ワードプロセッサに通信機能を付加した記録通信メディアで郵政省がその標準化を進めている。)の融合形態が登場するものとみられ,このための通信方式の標準化について十分な配慮が必要である。
 第3は,ファクシミリ通信に使用する通信網の整備である。現在,ファクシミリ通信に使用できる公衆通信網には,専用回線,公衆電話網及びファクシミリ通信網があるが,それぞれ提供目的,特性が異なっているため,利用者は目的にあったサービスを選択する必要がある。
 これら各種通信網が将来どのような方向に発展し,あるいは統合され,その際のファクシミリ通信に使用する通信網の特徴やサービス機能がどのように変わっていくのか,また,網の相互接続等に関する制度的・技術的問題について幅広く検討を進める必要がある。
 ファクシミリ通信は,今後,企業の業務用通信を中心に一層利用が進むとともに一般家庭等にも利用分野が拡大し,利用形態も多様化するものと予想されている。すなわち,企業では事務部門の合理化を図るためにOA化が推進され,ファクシミリ通信はOAの中核をなすと見込まれており,コンピュータ等と結び付いてその利用分野,方法はますます高度化・多様化していくものと考えられる。また,個人では当面,作家,コピーライター,弁護士等の利用が考えられるが,ミニファクスのように装置の簡易化・低廉化が進めば,広く一般家庭にも普及するものとみられる。
 さらに,近く実用化が予定されるキャプテンシステムや文字放送等の新しいメディアと端末装置の共用化が図られるなど,各メディアと調和のとれた通信メディアとして一層の発展が期待される。
(2)ビデオテックス
 ビデオテックスは,テレビ受信機とコンピュータ・センタを公衆電話網により接続し,会話形式で画像情報を提供する新しい通信メディアである。
 テレビ受信機と公衆電話網という広く普及した既存設備を有効に利用し,双方向機能を活用してセンタに蓄えられた情報を検索するだけでなく,銀行,デパート,旅行業者等広い分野の外部情報センタを活用したテレショッピング,ホームバンキング等の幅広いサービスが安価に提供できることから,我が国をはじめ英国,フランス,西独,カナダ,米国等20以上の国々で実験あるいは実用化が活発に進められている。
 ア.我が国の動き
 我が国においては,郵政省及び電電公社が共同し,情報提供者,メーカ等の協力を得てキャプテンシステム(CAPTAIN:Character And Pattern Telephone Access Information Network System)の名称で54年12月から56年3月まで東京23区内の1,000のモニタを対象に第<1>期実験サービスを行った。
 56年8月からは第II期実験サービスとして,モニタ数2,000,蓄積画面数約20万とそれぞれ第I期実験の2倍に増やしたほか,情報入力機能及び情報検索機能の充実,表示機能等の向上を図った。また,特定の利用者端末グル一プに,特定の情報提供を可能とするクロ-ズド・ユーザ・グループ・サービス,利用者端末から商品の注文,予約ができるオーダ・エントリ・サービス,望みの画面の写しをとれる簡易型ハード・コビー装置を開発するなどサ一ビス機能を拡充した(第1-2-18表及び第1-2-19図参照)。
 イ.諸外国の動き
 諸外国におけるビデオテックスの研究開発は,近年大きく進展し,欧米諸国のみならずアジア,オセアニア等の国々おいても関心が持たれ,商用ないし実験の段階にある。
 世界に先駆けてビデオテックスの開発に乗り出した英国では,プレステルという商品名で1979年9月から商用サービスが開始され,加入者は約1万8,000に達しているが,現在のところビジネス利用が中心で当初の計画数を下回っているため,英国電気通信公社(BT)は情報提供者やメーカ等に呼び掛けるなど,マーケティング活動を積極的に行っている。
 フランスのビデオテックスは,テレテル及び電子電話帳の二つの計画があり,電気通信とコンピュータの組合せにより社会の大規模な情報化を図るテレマティーク計画の柱の一つとなっている。テレテルは,パリ郊外のベリジー地区において2,500世帯を対象として情報検索のほか,列車の座席予約,買物注文等もできる実験が1981年7月から18カ月の予定で開始されている。また,電子電話帳は,電話加入者に小型端末機を設置し電話番号案内を行うものであり,1982年6月からイル・エ・ビレヌ県で商用サービスが開始されている。
 西独では,1980年6月から西ベルリン,デュッセルドルフの2都市において,ビルトシルムテキストの名称で約7,000の端末を対象に実験サービスが行われている。このシステムの特色は,中央センタ以外に銀行,通信販売業者,旅行代理店等,多数の外部センタ(1981年末現在38センタ)が接続されていることである。このシステムでは,現在,ホームバンキング,注文,予約等のサービスが提供されており,1983年から商用化される計画である。
 カナダでは,通信省(DOC)がテリドンという名称でシステムの開発を行い,現在各州の電話会社等を中心に各地で実験サービスが行われている。テリドンの特色は,公衆電話網だけでなく,同軸ケーブル,光ファイバ等いろいろな広帯域伝送路を用いて,情報検索,買物注文,ホームバンキング等の多彩なサービスを提供していることである。
 米国におけるビデオテックスの研究開発は,英国,フランス,カナダ等に比べ遅れていたが,近年,放送会社,新聞社,出版社をはじめCATV事業者,広告朶者,銀行等の多くの企業がビデオテックスを捉供すべく市場調査や実験サービスを始めるなど,競争が激化してきている。また,AT&Tは,既に基礎実験を終え本格的なサービス提供に向けて準備を進めてきたが,1982年8月の新同意審決において,AT&Tが自社の伝送施設を用いて,ニュース,生活情報等の収集,編集,配布等を行ういわゆるエレクトロニ・ノク・パブリッシングは,今後少なくとも7年間禁じられることとなった。
 ウ.今後の取組
 キャプテンシステムについては,郵政省及び電電公社が情報提供者,メーカ等の協力を得て実験を推進するとともに,実用化に向けて検討を進めてきたところである。このシステムの実用化に対する国民の期待には大きなものがあり,「キャプテンシステム実用化懇談会」からも,早期実用化の提言がなされている。このシステムが実用化された場合,社会経済活動の効率化及び国民生活の向上等,情報化社会の発展に大きく貢献することが予想される。また,今後更に激化する情報通信分野での国際競争に対処するためには,この種の新しいメディアの開発,実用化に早期かつ積極的に取り組む必要がある。
 このような状況にかんがみ,郵政省及び電電公社は,59年11月を目途としてこめシステムを実用化することとし,諸準備を進めている。このシステムの円滑な実用化を図るためには,システム提供者,情報提供者,端末機提供者等の関係者が総力を結集して,サービス開始当初から価値の高い情報と低廉な端末機器の提供を実現することが必須である。郵政省としては,利用者が利用しやすい環境整備の検討,関係者の調整等を行い,このシステムの円滑な実用化を期すこととしている。

第1-2-16図 ファクシミリ通信網サービスの概要

第1-2-17図 公衆電話網利用ファクシミリ設置台数の推移

第1-2-18表 キャプテンシステムの情報分野別蓄積画面状況(57年9月現在)

第1-2-19図 キャプテン第<2>期実験システムの構成

 

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