昭和58年版 通信白書

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5 防災用

(1)水防道路用通信
 建設省は,河川,ダム及び道路整備事務の円滑な遂行を図るため,水防道路用無線局を開設し,災害の予報,復旧,維持管理等に関するデータの収集,状況連絡,指示等の情報伝達用として活用している。その回線構成は,中央から末端現場に至るまでの状況が十分把握でき,確実な指令伝達が行われるよう第2-3-17図のとおりの系統となっている。
 マイクロウェーブによる多重無線通信回線網は,建設本省から各地方建設局(8か所),北海道開発局及び沖縄総合事務局に至る一級回線,各地方建設局から各工事事務所又は各ダム管理所等(約230か所)に至る準一級回線,各工事事務所から各出張所(約900か所)に至る二級回線で構成されている。一級回線は,2ルート化(うかい路を含む。)を完成しているが,更に準一級回線等についても2ルート化を進めている。また,洪水予報,水防警報,ダム管理等に必要な水位,雨量情報等をテレメータ回線等により伝送,収集するとともに,ダムの放流警報を通報するための回線としてVHF帯による無線回線が整備されている。
 さらに,広範な降雨状況を観測するためのレーダ雨量計(現在,赤城山,三ツ峠,釈迦岳,国見山,深山,御在所岳,明神山に設置)の整備を行っているところである。
 一方,移動通信系は,河川,道路における危険箇所の早期発見,応急処理又は災害時における情報収集,伝達を行うため,工事事務所,出張所等を基地局として,VHF帯又はUHF帯で通信網を構成している。
 なお,地上のマイクロウェーブ回線の補完用として,また,災害に強い堅固な通信回線として,通信衛星2号(CS-2)の利用を58年11月から予定している。
(2)中央防災用通信
 ア.現 状
 近年,大都市における建造物等の構造や住民の生活様式については,各方面から防災対策上多くの問題点があると指摘されており,特に首都圏において大地震等非常災害が発生した場合,建造物の複雑・大規模化や密集市街地の形成によって二次災害発生の可能性が極めて高く,その被害は極めて大きくなると予想されることから,国や地方公共団体等関係機関では,防災のための各種対策を講じている。
 国土庁では,これらの防災対策の一環として,平素における災害関係事務の調整,非常災害時における災害情報の収集,伝達のため,防災関係の指定行政機関及び指定公共機関等相互を多重無線回線で結び,電話,ファクシミリ等の情報伝送を行う中央防災無線網の整備を進めており,53年度には,国土庁,内閣官房(総理官邸),気象庁及び建設省(警察庁及び消防庁へは有線回線で接続)を相互に結ぶ無線局を暫定的に設置し,53年9月1日(防災の日)から運用を開始した。引き続き55年度には,防衛庁,郵政省等11省庁に,56年度には,大蔵省,衆議院等10関係機関について整備を行い,さらに57年度には,日本国有鉄道,日本銀行,電源開発,東京電力等の9公共機関について整備を行って,現在,36関係機関相互間を結ぶ中央防災無線網を第2-3-18図のとおり回線構成し,運用している。
 なお,現在までの中央防災無線網におけるシステム構成は,建設省に設置した自動交換機を介して,各関係機関に設置したファクシミリ及び電話機相互でダイヤル自動即時通話が可能となっており,また,自動交換機と端末装置を結ぶ回線は,同一庁舎内等の近距離回線を有線とするほかは,無線化されている。
 イ.動 向
 57年度中央防災無線網の整備に当たっては,日本通運との間を400MHz帯,NHKとの間を2GHz帯で結び,ほかの7機関はEHF帯(40GHz)で回線構成を行った。また,このEHF帯回線は,ループ状に回線構成を行い,一区間の回線障害に対して方路変更により救済できることとしている。
 なお,58年度は,首都高速道路公団及び労働省の整備を行うとともに国土庁の新庁舎への移転に伴い,国土庁を中心とする回線構成の再編成を行う予定である。
(3)消防防災用通信
 消防防災用無線は,国と地方公共団体との間で地震予知情報等の一斉伝達,災害報告,火災速報等の消防情報の収集及び伝達を行うため消防庁が前記(1)で述べた水防道路用無線として建設省が開設した全国マイクロウェーブ回線の一部を共用して,全国47都道府県との間に,それぞれ直通の消防防災用の通信回線(電話及び高速ファクシミリ)を設置している。
 この通信回線は,56年度に東京都との間の設定を最後に全都道府県間の整備が完了した。近年,特に,大規模地震対策特別措置法とこれに基づく地震防災対策強化地域が指定され,地震予知情報の伝送体制を確立する上でますます重要視されている。
 また,消防庁では,上記通信回線の多ルート化対策の一環として衛星を利用した通信方式の導入について検討しており,59年秋からCS-2の利用を予定している。
(4)防災行政用通信
 ア.現 状
 毎年多発する自然災害や大規模な人為災害に対処するため,災害予防,応急救助,災害復旧等の諸施策の推進について規定した災害対策基本法等に基づき,地方公共団体が行う防災対策の一環として防災行政用無線局の設置を推進している。
 防災行政用無線には都道府県が開設するもの,政令指定都市が開設するもの及び市町村が開設するものがある。いずれも防災関係業務に利用するのみならず,平常時には一般行政事務に利用することが認められている。
(ア)都道府県防災行政用無線局
 都道府県防災行政用無線局は40都道府県で運用中(一部運用中を含む。),7府県で計画中等となっており(第2-3-19表参照),一般的には次のような構成となっている(第2-3-20図参照)。
 [1] 防災業務上必要な指示連絡を電話,ファクシミリにより行うため,災害対策本部が設置される都道府県と災害対策地方本部が設置される機関,土木事務所等の出先機関,市町村及び気象台,放送局,陸上自衛隊等の関係機関との間を結ぶ固定系無線
 [2] 被害状況を直接把握するため,都道府県庁,出先機関と被害現場の車載用,携帯用の無線機との間及びこれらの無線機相互間を結ぶもの並びに多重通信方式による無線機相互間を結ぶ移動系無線
 [3] 降雨量等の観測データを伝送するため,水位等を監視する観測所とダム管理事務所等との間を結ぶテレメータ系無線
(イ)政令指定都市防災行政用無線局
 政令指定都市防災行政用無線は,市庁と市の出先機関(区役所等),気象台等関係機関相互間を結ぶもの及び市庁と市の出先機関,市内の集落に設置された屋外スピーカ等を結ぶ同報通信方式の固定系無線,市庁又は市の出先機関と車載用,携帯用の無線機との間及びこれら無線機相互間を結ぶ移動系無線並びにテレメータ系無線で構成されている。
(ウ)市町村防災行政用無線局
 市町村防災行政用無線局は,一般的には固定系無線,移動系無線及びテレメータ系無線で構成されており(第2-3-21図参照),固定系無 線は,市町村内の住民に対する災害情報の周知徹底を図るため市庁,町 村役場と市町村内の各集落にある出先機関,路上の屋外スピーカ等を結び,災害の予警報等の内容を知らせる同報通信方式のものであり,移動 系無線,テレメータ系無線の機能は,都道府県防災行政用無線とほぼ同様である。
 なお,58年7月末における整備状況は,1,705市町村である。
 イ.動 向
 地震,集中豪雨等による災害が多発している我が国においては,防災に対する国民の関心は極めて強いものがある。特に災害発生時において警報,救援,応急復旧等情報の収集・伝達のための通信体制の重要性にかんがみ,都道府県,市町村では,防災行政用無線の整備,充実が推進されており,57年度には長野県,愛媛県及び山形県が全面運用に入り,茨城県も幹線固定系無線の一部が運用を開始した。また,宮城,神奈川,静岡,長崎等各県では幹線固定系無線の再編整備を,東京都では固定系無線にファクシミリの導入等充実,強化が図られている。政令指定都市では,横浜市,川崎市,京都市が整備計画を策定中である。市町村においても,自治省等関係省庁の国庫補助金の交付を受けるなどして整備の促進を図っていることから,今後一層充実強化が図られるものと期待される。
(5)消防・救急用通信
 ア.現 状
 地方公共団体は,消防・救急・救助活動の充実,強化を図るため,消防の常備化を進める一方,石油コンビナート火災,海上火災等の特殊火災に備えるとともに,社会生活の複雑,多様化に伴う各種の事故,急病等の増大に対応するため,広域消防・救急・救助体制の整備,強化を図っている。
 このように,常備化,広域化される消防・救急・救助活動を円滑に遂行するため,消防本部,消防署等には基地局及び固定局が,消防車,救急車,ヘリコプター等には陸上移動局及び携帯局が開設されている。
 また,消防法施行令によって延べ面積1,000m2以上の地下街に設置が義務付けられている無線通信補助設備として,漏えい同軸ケーブルを展張する方式の空中線等の使用が東京,横浜,京都,福岡等の地下街で導入され,火災時等における地下街と地上の消防隊員相互の連絡が十分に確保されることとなっている。
 イ.動 向
 消防活動の分野は,火災,風水害,地震等各種災害時の消火,救助等のほか,火災の予防,危険物の保守等広範囲にわたり,かつ複雑,多様化しており,これらの活動を迅速,かつ的確に行うため,市町村では消防機関の常備化が進められ,消防車両,救急車両等機動力の整備充実が推進されている。これに伴い消防,救急車両の迅速な出動体制,火災等災害現場における的確な指揮命令系統の確立,医療機関等の連絡通信用として,移動系無線を中心としてこれら無線の不感地帯解消のための前進基地局及び本部,前進基地局を結ぶ固定系無線が増加している。また,水難救助,林野火災等に対して消防団が独自に防御活動を行う場合もあることから,これらの団体が専用の無線を整備したいとの意向もある。(6)防災相互通信用通信
 防災相互通信用無線局は,石油コンビナート等で災害が発生した場合に災害現場で行政機関,公共機関,地方公共団体及び地域防災関係団体の防災関係機関が協力して防災対策に必要な情報を迅速に交換することにより円滑な防災活動を実施することができるように,50年10月以来その開設が認められている。その使用周波数158.35MHzのほかに,58年2月からは466.775MHzも認められ,57年度末現在全国で4,520局の無線局が運用しており,すべて移動系である。

第2-3-17図 水防道路用通信回線系統図

第2-3-18図 57年度末における中央防災無線網

第2-3-19表 防災行政用無線局設置状況(58年7月末現在)(1)

第2-3-19表 防災行政用無線局設置状況(58年7月末現在)(2)

第2-3-20図 都道府県防災行政用無線のシステム概念図

第2-3-21図 市町村防災行政用無線のシステム概念図

 

 

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