平成10年版 通信白書

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第1章 デジタルネットワーク社会の幕開け〜変わりゆくライフスタイル〜

第4節 サービスが抱える問題(ネットワークサービスを安心して利用できる環境の整備)

  7. 諸外国の動向

 諸外国の立法状況は、次のとおりである(第1−4−6表参照)。

(1) 米国

ア 個人情報保護
 連邦政府が保有する個人情報の保護の法律としては、「1974年プライバシー法(Privacy Act of 1974)」があり、連邦政府による個人識別情報の収集、保有、利用及び頒布を規制している。情報通信の利用にかかわるプライバシー・個人情報の保護については、米国では、通信内容の保護と情報通信サービスに係る顧客情報保護の二つの側面から法制度が整備されている。
(ア) 通信内容に関するプライバシー保護
 歴史的には電話盗聴規制の問題として捉えられており、1934年通信法705条において規定されている。さらに1968年総合犯罪防止及び街頭安全法において初めて盗聴の禁止を導入した。そして、1986年電子通信プライバシー法により、盗聴禁止の対象に電子通信が追加された。
(イ) 情報通信サービスに係る顧客情報保護
 通信記録のプライバシー保護(日本では「通信の秘密保護」に該当する。)については、1986年電子通信プライバシー法により、ケーブルテレビ加入者の視聴者個人情報保護については、1984年ケーブル通信政策法により、電気通信事業者等の顧客情報の収集、利用・管理については、1996年電気通信法により規定されている。

第1−4−6表 サイバー社会に向けた環境整備に関する諸外国の主な取組状況
イ 情報流通ルール
 1996年電気通信法は、その中の「第V編わいせつ及び暴力」にインターネット等の電気通信を規制する規定を設けた。この第V編は「1996年通信品位法」と称されている。しかし、1997年6月、連邦最高裁判所は、1996年電気通信法中の「下品な」及び「明らかに不快な」の文言は過度にあいまいであり、憲法修正第1条(表現の自由)に違反するとして違憲判決を下した。
 これを受けて、自主規制による対応及び技術的対応(フィルタリング等)をさらに推進していくこととしている。クリントン大統領は1997年7月、子どもを有害情報から守るためのフィルタリング・ソフトの活用等について、業界の自主規制による対応を要請した。

(2) 英国

ア 個人情報保護
 英国では、1984年にデータ保護法が成立し、現在に至っているが、保護の対象となる情報は、電子計算機処理に係るもののみである。同法では、8項目のデータ保護原則を宣言し、データ利用者(電子計算機処理に係るデータを保有する者)等にそれを遵守させる一般的義務を負わせている。データ利用者等は、政府機関であるデータ保護登録官の保有する登録簿への登録を義務づけられている。

イ 情報流通ルール
 インターネットにも既存の法律の適用があり、名誉毀損法、わいせつ出版法及び児童保護法により規制されている。

(3) ドイツ
 ドイツではインターネット等による電子商取引やその他マルチメディアサービスの利用に関する法的枠組みの整備を推進するため、1997年8月、「情報通信サービスの基本条件の規制に関する法律」(通称「マルチメディア法」)を施行した。
 マルチメディア法は複数の法律を総称した法律であるので、内容的には「テレサービスの利用に関する法律」、「テレサービスに際しての個人情報保護に関する法律」及び「デジタル署名に関する法律」の三つの新法と「刑法」、「秩序違反法」、「青少年に有害な文書の流布に関する法律」、「著作権法」、「代価情報法」及び「代価情報令」の六つの法律の改正からなっている。

(4) フランス
 フランスでは1978年に、情報処理についての個人の権利と自由を保障することを主要な目的として、「情報処理、ファイル及び個人の諸自由に関する法律」を制定した。この法律は、 [1] 公共部門及び民間部門の双方の情報処理システムを対象としたオムニバス方式、 [2] 当該情報に係る自然人を識別しうる個人情報(記名情報)を保護の対象、 [3] 情報システムの事前の登録・許可制度の採用、 [4] 個人情報の収集・記録・保存についての個人の権利保障、 [5] アクセス権、訂正権等の承認、 [6] コンピュータ処理だけでなく、手作業処理について一定の権利保障、などの特徴がある。
 また、インターネット上での違法情報の発信に対しては一般法の適用があるが、既存の法律では追求することができないプロバイダの責任等については、1996年4月、電気通信規制法を改正し対応した。
 

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