平成10年版 通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第7節 21世紀に向けた技術開発・標準化の推進

  1. 情報通信の高度化・多様化を支える技術開発の推進

(1) 情報通信研究開発基本計画の充実

ア 情報通信研究開発基本計画(第2版)
 郵政省では、8年5月に電気通信技術審議会から答申された「情報通信技術に関する研究開発基本計画」について、その後の情報通信技術の急速な進歩や、同年7月に閣議決定された科学技術基本計画の内容等を踏まえて、当該計画の充実を図るため、同年9月、電気通信技術審議会に対し、「科学技術基本計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画の充実について」の諮問を行い、9年4月、「情報通信研究開発基本計画(第2版)−明日を拓く情報通信技術−」と題する答申を受けた。その概要は次のとおりである。
(ア) 情報通信技術の研究開発強化の必要性
 情報通信新世紀の構築に向けて、 [1] 情報通信の高度化のための研究開発、 [2] 知的資産の形成のための研究開発の推進が喫緊の課題であるが、我が国の情報通信技術の研究開発への取組は、欧米に比べて大きく立ち遅れている。我が国全体の研究開発ポテンシャルを引き上げるため、 [1] 予算面を含む政府の貢献の大幅な増大、 [2] 産学官の連携による研究開発の強化が不可欠である。
(イ) 情報通信技術の研究開発における評価の在り方
 評価システムの在り方について、 [1] 透明性のある評価システム、 [2] 公正で客観性の高い評価システム、 [3] 研究開発資源の重点的・効率的配分、計画の見直し等に反映できる評価システム、 [4] 人間の生活・社会及び自然との調和と国民やユーザーの視点も取り入れた評価システム、 [5] 研究の向上につながる評価システムが必要である。
(ウ) 重点研究開発プロジェクトの強力な推進
 急速な技術革新に対応する上で特に緊急性及び重要性の高いと考えられていた77の重点研究開発プロジェクトについて、その後の技術動向や研究開発の実施状況等を踏まえて、80の重点研究開発プロジェクトに再編した。
 さらに、21世紀の情報通信技術の中核として、関連する重点研究開発プロジェクトを統合して国を挙げて戦略的に実施すべきものとして、 [1] 全光通信技術プロジェクト、 [2] 広帯域マルチメディア移動通信技術プロジェクト、 [3] 次世代LEO技術プロジェクト、 [4] 高効率通信ソフトウェア技術プロジェクト、 [5] 次世代高機能映像技術プロジェクト、 [6] ヒューマン・コミュニケーション技術プロジェクトの六つのプロジェクトを挙げている。
(エ) 情報通信技術の研究開発推進のための体制整備
 研究開発プロジェクトの推進に当たっては、国が具体的に取り組むべき施策として、 [1] 研究開発環境の整備促進、 [2] 標準化の推進、 [3] 国際的連携の強化、 [4] 地域の研究開発の強化、 [5] 研究情報基盤の整備、を挙げており、これらの各種施策を有機的に連携させ、研究開発を総合的かつ効果的に推進することが必要であるとしている。

イ 21世紀型ネットワーク社会と基礎研究−情報通信ブレークスルー基礎研究21−
 郵政省では、電気通信分野の基礎研究プロジェクトとして「電気通信フロンティア研究開発」を産学官の連携により実施し成果を上げてきたが、情報通信分野の基礎研究を取り巻く社会状況は、今後はますますドラスティックに変動するものと思われる。
 このような状況を踏まえ、8年10月から「21世紀に向けた経済構造改革のための基礎研究の推進に関する調査研究会」を開催し、今後推進すべき情報通信分野の基礎研究課題及びその推進体制の在り方について検討を行ってきたが、9年5月に報告を取りまとめた。その概要は次のとおりである。
(ア) 重点基礎研究領域
 調和型のネットワーク社会の構築に向け、「利用環境」、「システム」、「デバイス」の側面についてブレークスルーを目指すべきであり、そのため、 [1] フレンドリーなコミュニケーション社会の研究、 [2] 生命の情報通信機能の解明と適用の研究、 [3] 新機能・極限技術の研究の三つの重点研究領域を設定した(第3−7−1図参照)。

第3-7-1図 三つの重点基礎研究領域
(イ) 研究評価
 研究評価は、通信総合研究所において内部評価を行うとともに、独立した第三者機関による外部評価も実施する。評価にあたっては、研究提案時点の研究目標等に留意するとともに、各研究プロジェクトの標準研究期間を7年とし、前期終了(4年程度)時点で中間評価を行い、研究の方向の妥当性や中間段階での研究目標の達成状況等について確認するとともに、プロジェクトの終了時において研究目標の達成状況等について総括する。

(2) 情報通信の新たな展開に向けた産学連携
 多様な技術シーズから新規事業が活発に創出される情報通信分野においては、産学が連携して、それぞれの研究リソースを有効に活用しながら、市場ニーズに対応した研究開発を積極的に推進していくことが重要である。
 そこで、情報通信分野における産学連携を推進するための課題を明確化し、それに対する対処方策を検討することにより、産学連携による情報通信技術の向上やその成果を活用した多様な新規事業等の育成を図ることを目的として、郵政省では、9年12月から、「情報通信の新たな展開に向けた産学連携の在り方に関する研究会」を開催し、10年6月に報告を取りまとめる予定である。

(3) 総合的な研究開発体制の整備
 郵政省では、情報通信研究開発基本計画に基づき、情報通信技術の研究開発を推進、総合的な施策を展開している(第3−7−2図参照)。

第3-7-2図 情報通信の研究開発施策マップ
ア マルチメディア・バーチャル・ラボ(仮想研究所)の構築
 情報通信分野における技術の進展は目覚ましく、研究者、研究開発施設の不足が深刻化しており、共同研究、研究交流が困難な状況になってきている。また、研究開発をより効果的に進めるためには、情報通信分野以外の幅広い分野の研究者との連携を図るとともに、産学官が連携した共同研究体制の充実を図る必要がある。マルチメディア・バーチャル・ラボは、全国各地に分散する産学官の研究開発機関を高速ネットワークで結ぶことにより、それらの研究開発能力を結集して、あたかも一つの研究所で研究開発を行っているような高度な研究環境を実現し、これらの課題を経済的、効率的に解決するものである。
 通信総合研究所では、離れた研究所間においてリアルな映像や音声を高い臨場感で再現する技術等、マルチメディア・バーチャル・ラボの高度化のための基盤技術を実施している。また、通信・放送機構では、広帯域ネットワークのプロトモデルを開発し、欧米の研究機関との間で実験網を相互接続し、マルチメディア・バーチャル・ラボの構築に必要となるネットワーク技術に関する研究開発を実施している。

イ 公募研究制度
 郵政省では、我が国の立ち遅れが顕著な、独創性のある情報通信技術の研究開発を充実・強化し、併せて若手研究者の育成を図るために、通信・放送機構が研究課題を大学、国立試験研究所等に広く公募する「創造的情報通信技術研究開発推進制度」を8年度から実施しており、9年度は15課題の研究開発課題を採択した。
 また、10年度からは、 [1] 国際標準の実現に必要不可欠な技術の研究開発を公募する「国際標準実現型研究開発制度」、 [2] 地域の企業・大学・公的研究機関等により構成される研究共同体に対して、地域ニーズに応じた技術の研究開発を公募する「地域提案型研究開発制度」、を新設した。

ウ 国際共同研究助成制度
 郵政省では、10年度から、情報通信分野での国際研究に対して研究費を助成することにより、国際間での研究機関同士の技術交流を一層促進するとともに、世界をリードする最先端の技術を生み出すことを目的として、通信・放送機構が研究課題を公募の上、優れた研究を行う国際共同研究体に対して研究費の一部を助成する国際研究助成制度を実施する。



 

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