平成10年版 通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第2節 高度情報通信社会の構築に向けた情報通信政策の推進

  3. 情報通信の利活用方法(アプリケーション)の開発・普及(地域情報化の視点)

(1) 地域情報化プログラムの推進
 郵政省では、8年10月から、21世紀を展望した「高度情報通信社会構築に向けた地域情報化推進方策についての調査研究会」を開催し、9年5月、最終報告を取りまとめた。その概要は、次のとおりである。

ア 地域情報化の現状
 地域情報化は総体として着実に進展してきているが、地方公共団体の間での取組に差が拡大してきている。特に人口規模が大きい地方公共団体において情報化が進んでおり、マルチメディアレベルのアプリケーションの導入は、政令指定都市、広域行政圏における中心市町で進んでおり、人口規模の小さい市町村と差異が生じている。

イ 地域情報化の今後の方向
 マルチメディアの大きな効果が期待されるのは、例えば広域行政圏における中心市町よりも、これら以外の周辺の市町村や過疎地域等であり、これらの地域を含めた情報化を図るためには、既存の行政区域である市町村の枠を超えて展開する「広域・連携アプリケーション」を構築すべきである(第3−2−2図参照)。
 広域・連携アプリケーションの構築は、 [1] 広域的行政の確立、 [2] 情報通信基盤整備の効率化・資源の相互融通、 [3] 住民や企業による情報活動の拡充、 [4] 地域間の連携の促進と新しい国土形成、に資すると考えられ、個々の市町村が別々にシステムを構築する場合よりも、約3分の1の費用で同じ効果が得られると試算できる。


ウ 政策プログラム
 2000年には、全国300の地方公共団体に行政情報の提供等基礎的なマルチメディア環境が整備され、そのうち約2割は広域・連携アプリケーションにより整備されることを目標とする。
 2005年には、およそ3分の1の地方公共団体で、広域・連携アプリケーションの恩恵が受けられるような環境整備を行い、2010年には、すべての地域で広域・連携アプリケーションの利活用環境が整備され、必要に応じて全国レベルの広域・連携アプリケーションの展開を実現できる環境整備を図ることとする。
 また、地域情報化推進のための政策課題として、 [1] 技術開発等を含めたアプリケーションのマルチメディア化の促進、 [2] 広域・連携アプリケーションの開発促進、 [3] 省庁間の連携等を提示している。

(2) マルチメディア・パイロットタウン構想(成果展開型研究開発)の推進
 郵政省では、通信・放送機構(注1)を通じて、9年度から、これまでの通信・放送研究成果を活用して、マルチメディアモデルの導入に意欲のある地域において、地方自治体や大学等の協力を得て、「マルチメディア・パイロットタウン構想」を推進している。本事業は関係省庁とも連携を図っており、9年度においては、 [1] マルチメディア・モデルキャンパス展開事業、 [2] マルチメディア・モデル農村展開事業、 [3] マルチメディア・モデル住宅展開事業、 [4] マルチメディア・モデル市役所展開事業に着手した。

(3) 先進的情報通信システムモデル都市構築事業
 郵政省では、9年度から、21世紀型のマルチメディア未来都市の先行実現を図り、高度情報通信社会の構築を加速・推進するため、通商産業省と連携して、「先進的情報通信システムモデル都市構築事業」を行っている。本事業は、モデル地域を選定し、地方自治体等が行政、教育、医療、防災等の複合的な機能を持つ先進的な情報通信システムを整備することに対して支援するものである。9年度においては8件を採択した(資料5−1参照)。

(4) マルチメディア街中にぎわい創出事業
 中心市街地の活性化を図るため、関係11省庁が連携して施策を展開するが、郵政省は「マルチメディア街中にぎわい創出事業」により、中心市街地の高度情報化を促進する事業を総合的かつ強力に推進する。具体的には、事業者等のニーズに応じて、高補助率の補助金(地方自治体1/2、第三セクター・公益法人1/3)等、多様な支援措置を用意している。
 また、郵政省では、通商産業省、建設省等5省庁と連携して、総合的に都市の中心市街地の活性化を促進するための措置を講じるために、「中心市街地における市街地の整備改善及び商業活性化の一体的推進に関する法律」案を策定し、本年2月に国会へ提出したところである。本法においては、中心市街地において多様な電気通信を高度に行うための共同利用施設の整備に対する通信・放送機構からの出資等が盛り込まれている(第3−2−3図、第3−2−4表参照)。




(5) 電気通信システム共同開発事業
 郵政省では、公共分野の情報化を促進し、高度情報通信社会の構築に資するため、文部省、農林水産省、運輸省と連携して、10年度から、「電気通信システム共同開発事業」を行うこととしている。本事業は、通信・放送機構が、特定公共電気通信システム(インターネットを活用した教育支援システムや運送関係行政事務に係る申請手続の電子化システム等の公共分野における業務に用いられる電気通信システムであってその利便性を効果的に高めるもの)の開発に必要な、通信・放送技術と特定の公共分野(教育分野、運送関係行政分野等)における個有の技術の研究開発を総合的に行うものであり、本事業を円滑に実施するために必要となる事項を規定した「特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発の推進に関する法律」案を今国会に提出している(第3−2−5図参照)。

(6) 自治体ネットワーク施設整備事業
 郵政省では、6年度から、地域・生活情報通信基盤高度化事業の一環として、自治体ネットワーク施設整備事業を行っており、高度なネットワークを通じて、市役所、学校、病院等の公共施設を接続し、行政、教育、医療・福祉等の公共分野のアプリケーションの開発導入を図っている。9年度は17地域、累計で34地域で実施している(第3−2−6表、資料5−2参照)。


(7) テレワークセンター施設整備事業
 郵政省では、6年度から、地域・生活情報通信基盤高度化事業の一環として、遠隔勤務を可能とするテレワークセンター施設整備事業を行っており、9年度末において4地域で実施している(第3−2−7表、資料5−2参照)。


(8) 新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業
 郵政省では、6年度から、地域・生活情報通信基盤高度化事業の一環として、新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業を行っており、地域住民のニーズに対応して自主放送を実施し、緊急情報、福祉情報等の地域住民生活に必要な映像情報を提供している。9年度は11地域、累計で31地域において実施されている(第3−2−8表、資料5−2参照)。


(9) テレトピア構想の推進
 郵政省が昭和58年に提唱したテレトピア構想は、ケーブルテレビ、データ通信等の情報通信メディアを活用して地域の情報化を促進し、地域社会の活性化を図ることを目的としており、9年度においては10地域、累計で174地域をモデル地域に指定している(資料5−3参照)。

(10) 地理情報システム(GIS)構築の推進
 GISは、デジタル化された三次元の地理情報と各種の統計データ等を電子的に組み合わせて、様々な処理を行うシステムであり、行政、産業、国民生活等様々な分野において、その効率化・迅速化・確実化に資するものである。
 そこで、その標準化等に資するため、郵政省、国土庁、建設省、通商産業省及び自治省の5省庁が、共通のモデル地区を定めて、共同・連携事業を行い、その成果を関係省庁連絡会議の議論に反映させることとしている。
 GISの構築には、データの安全性や効率性の確保を可能とする、最適な情報通信システムの設計・検討を行うことが必要であり、郵政省においては、モデル地区において、GISに最適な、検索技術、暗号技術、データ圧縮技術等の方式を検討し、これの開発・実証を行うこととしている(第3−2−9図参照)。


 

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