平成10年版 通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第9節 安全な社会づくりを目指す防災対策の推進

  2. 情報通信を利用した防災対策の推進

(1) 郵政省危機管理システムの構築
 緊急事態発生時に、被害状況等を迅速に把握し、的確な対策を実施するためには、情報収集・伝達手段の確保がまず重要である。そこで郵政省では、緊急事態発生時の郵便局の被災の状況や、業務の運行状況をパソコンネットワークにより迅速に報告できるシステムを中心とした「郵政省危機管理システム(P−EMS)」の構築を進めている。
 9年には、システムの詳細設計までを行った。

(2) 宇宙測地技術を用いた地殻変動観測
 郵政省では、7年度に、通信総合研究所がこれまで開発し研究成果を上げてきた超長基線電波干渉計(VLBI)及び衛星レーザー測距(SLR)技術を活用した、首都圏の広域地殻変動観測施設を完成させた。これは、小金井局(東京都)、鹿島局(茨城県)、三浦局(神奈川県)及び館山局(千葉県)の首都圏4地点の観測局により、数mm単位の精度で定常的に地殻変動の三次元的変化を観測するものである。また、世界で最高性能のリアルタイムVLBI装置を稼働させるなど、技術開発を並行して行っている。
 8年度からは、システムを本格稼働させ、首都圏広域地殻変動観測を行っている。観測結果は気象庁に報告するとともに、インターネットのホームページ(http://ksp.crl.go.jp/index-j.html)を用いて公表している。

(3) 防災無線システムの高度化に関する検討
 郵政省では、7年から「防災無線システムの高度化に関する研究会」を開催し、今後の防災システムの一層の高度化を図るための課題及び方策について検討を行ってきた。8年6月に取りまとめられた報告を受け、9年度から10年度において、以下の技術的検討及び実用化実験を行う。
  [1]
 同報系(市町村の災害対策本部等からの一斉発信)の防災行政無線について、音声、データ、画像の双方向での伝送等を可能とするためのデジタル化
  [2]
 テレメータ・テレコントロール系(水防ダム等に関する情報収集、放流警報装置等の遠隔制御等)無線システムのナロー化、高速・大容量化
  [3]
 電話のように扱いやすい双方向通信の実現等端末機器の操作性の向上
  [1] 、 [2] は横浜市(神奈川県)、 [3] は小谷村(長野県北安曇野郡)において行う。

(4) 非常時通信技術の研究開発
 通信総合研究所において、大規模災害に対処可能な耐災害性電気通信システム及びマルチメディア通信に対応した非常時通信交換方式の研究開発を7年度から実施している。8年度には、被災を免れた通信設備を統合するサバイバルネットワークのモデルの開発等を実施した。9年度はこのサバイバルネットワークの制御アルゴリズムを開発するとともに、災害・安否情報のラベリング処理装置の開発を行った。10年度は、異種メディア間相互交換ソフトウェアの開発等を行う予定である。

(5) 地域非常通信のためのネットワーク技術の研究開発
 郵政省では、耐震性の高い地域非常通信ネットワーク(次世代防災無線システム)の実現のため、必要となる無線技術の研究開発を8年度から推進している(第3−9−1図参照)。具体的には、被災自治体(兵庫県、芦屋市、西宮市)の協力を得ながら、通信・放送機構において、主に以下の技術開発を実施している。
  [1]
動画像、音声、データ等の情報量や通信特性の異なる情報を一つのシステムで共存させる技術
  [2]
局地的に通信が集中する場合に対応したチャンネル割当技術
  [3]
応援者も一体となって通信できるためのネットワーク制御技術
 9年度には、これを継続するとともに、基本モデルシステムの構築及び研究項目の一部について実証実験を行った。

第3-9-1図 地域非常通信ネットワークイメージ図
(6) 複数の衛星を利用した災害・危機管理システムの研究
 郵政省は科学技術庁と連携し、10年度から、大規模な災害や事故発生時等において、各種地球観測衛星、宇宙通信ネットワーク等を複合的に活用した防災・危機管理システムの研究を行うこととしており、9年度から準備段階の検討を開始した。

(7) 防災訓練の実施について
 郵政省及び非常通信協議会は、9年9月、政府の総合防災訓練(東海地震対応訓練、南関東地域直下の地震対応訓練)に参加し、実際に災害が起きた場合を想定した実践的な情報伝達訓練、非常災害対策本部等の設置及び運営訓練等を行った。
 また、郵政省内の訓練においては、 [1] 横浜の7都県市合同防災訓練会場から携帯電話により送られてきたデジタルカメラ映像の非常災害対策本部会議での活用、 [2] スペースポスト号による衛星回線を確保しての同訓練会場からの現地報告、を行った。
 さらに、各地方公共団体の防災訓練に郵便局等も参加することにより、連携して災害に対処する訓練も行った。

 

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