平成10年版 通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第7節 21世紀に向けた技術開発・標準化の推進

  1. 情報通信の高度化・多様化を支える技術開発の推進

(4) 情報通信技術の研究開発の推進

ア 通信総合研究所による研究開発の推進
(ア) 情報通信ブレークスルー基礎研究21
 昭和63年度から開始した「電気通信フロンティア研究開発」を、社会経済状況に最新の研究動向等を踏まえて見直し、10年度から「情報通信ブレークスルー基礎研究21」を創設する。次々世代の情報通信技術を拓くための「技術の壁の突破」(ブレークスルー)を目指し、物性・生命科学や人間・社会科学の側面から、産学官が連携し基礎的・学術的研究を戦略的に推進している。
(イ) 情報通信基盤技術に関する基礎的・はん用的技術の研究開発
 来るべき高度情報通信社会において、すべての国民が情報通信の便益を享受できるように、ネットワーク系、端末系、データベース系にわたって基盤技術の基礎的かつはん用的技術の研究開発を行うことを目的として、「超高速ネットワークの研究」、「ユニバーサル端末に関する研究」、「高度情報資源伝送蓄積技術に関する研究」を行っている(第3−7−3図参照)。

第3-7-3図 情報通信基盤技術の研究開発
イ 通信・放送機構における研究開発の推進
(ア) 高度三次元画像情報の通信技術に関する研究開発(品川リサーチセンター)
 4年度から、立体メガネを使用せずに自由な姿勢で、視聴する位置に応じた立体像が観察でき、長時間視聴しても疲れない「人に優しい立体テレビジョン」の実現を目指し研究を行っており、5年間の研究開発により、世界最大の液晶動画ホログラフィーの実現や、独自の超多眼式立体表示手法を用いた世界初の106眼式立体ディスプレイの開発に成功した。
(イ) 高度映像通信技術の研究開発(奈良リサーチセンター)
 7年度から、超高精細デジタル映像の伝送技術、映像データベースの遠隔検索・表示技術及び多地点協調作業環境構築技術等の高度映像通信技術の研究開発を行っている。また、BBCC(新世代通信網実験協議会)と共同で広帯域ISDN網を利用したアプリケーション共同実験を行っており、9年度は、超高精細デジタル映像伝送システムの遠隔病理診断への応用実験、三次元CGを用いた遠隔協調設計システムへの応用実験等を実施した。
(ウ) メモリネットワーク制御アーキテクチャ等通信基礎技術の研究開発(早稲田リサーチセンター)
 7年度から、大容量動画像の画像検索技術に関する研究開発を行っており、9年度、生きている人体の三次元人体構造データベース(人体アトラス)を開発した。
(エ) 光通信の高速化・効率化・長寿命化のための研究開発(仙台リサーチセンター)
 7年度から、テラビット級の高速光通信の実現を目指し、この基盤となる高速・高効率・長寿命の化合物半導体及びシリコン半導体の研究開発を行っているが、現在普及しているトランジスタに比べて100倍以上の信号処理速度が得られるトランジスタの開発に成功した。このトランジスタを使用することにより、従来のギガビット級通信に対して、この100倍程度の大容量の超高速光通信が可能となる。
(オ) 分散型映像ネットワークの利用技術に関する研究開発(浜松・厚木リサーチセンター)
(ディレクトリ技術)
 8年度から、電子博物館・電子図鑑等の実現に資する技術として、浜松リサーチセンターにおいて、ネットワーク上に構築された分散型映像データベースにおけるディレクトリ技術、ナビゲーション技術及びプロトコル技術の研究開発を行っている。9年度からは、これらの技術を利用したモデルシステムとして、蝶のイメージ検索システムを構築し、実験及び評価を行っている。
(並列処理技術)
 8年度から、家庭や企業及び公共施設における情報通信の利用の高度化に資する技術として、厚木リサーチセンターにおいて、マルチアクセス制御技術及びダイナミックリンク制御技術の研究開発を行っている。10年度からは、これら要素技術の研究成果を利用したモデルシステムを構築し、システム全体としての検証実験を実施する。
(カ) グローバルマルチメディア移動体衛星通信技術の研究開発(川崎次世代LEOリサーチセンター)
 9年度から、周回衛星を用い携帯端末による動画像伝送が可能な移動体衛星通信システムの概念検討及びそのシステム実現に必要な技術(システム技術、宇宙セグメント技術、ユーザーセグメント技術)の研究開発を実施している。

ウ 基盤技術研究促進センターによる研究開発の推進
 基盤技術研究促進センターは、民間において行われる電気通信及び鉱工業分野の基盤技術に関する試験研究を促進するための機関である。センターは、産業投資特別会計から出融資される資金を原資として、試験研究に必要な資金を供給するための出融資事業を行うほか、国立試験研究機関と民間とが行う共同研究のあっせん、海外からの研究者の招へい等の事業を行っている。
 9年度において、新たにセンターの新設企業出資における出資対象として採択された電気通信関係の案件は、「ワイヤレス・マルチメディア・ホームネットワークシステムの試験研究」及び「移動体通信システムの高効率伝送及び機能の高度化・多様化技術に関する研究開発」の2件となっている(第3−7−4表参照)。

第3-7-4表 基盤技術研究促進センターの9年度新規出資案件(電気通信分野)
 また、9年度に創設された中小企業向けの出融資制度では、研究開発型企業出資制度においては、「通信情報課金の定量的分析に係る試験研究」が初めて採択され、研究開発型企業特別融資制度でも2件が採択となった。また、一般企業向け融資では、5件が採択されている。

(5) 情報通信における国際的な取組
 21世紀に向けて、情報通信の活用による国際社会・経済の発展を図る観点から、APECにおけるAPII構想や、G7各国による共同プロジェクト等、GII構築への取組が行われている。
 このような状況の中、郵政省では、国際的な情報通信基盤の構築に積極的に貢献する観点から、国際共同技術プロジェクトを実施している(第3−7−5図参照)。

第3-7-5図 国際共同技術プロジェクト
 また、APIIテストベッドプロジェクト、GIBNプロジェクトの円滑な推進を図り、国内の実験参加機関・実験項目・国際回線の帯域割当ての調整等を行うため、関係省庁・機関の国内専門家により構成された国際情報通信基盤技術プロジェクト推進連絡会を9年10月に設置した。

ア APIIテストベッドプロジェクト
 APIIテストベッドプロジェクトは、APEC諸地域間で、ネットワーク相互接続技術、アプリケーション技術の共同研究・開発・実験及び実験に必要な研究者、技術者の研修を行うものであり、9年2月に通信総合研究所関西支所(兵庫県神戸市)に開設したAPIIテクノロジーセンターを一つの拠点として、10年初めからシンガポールとがん領域の遠隔医療実験を、また、韓国と次世代インターネットや電離層データ交換実験を開始すべく、実験装置等を準備中である。

イ 広帯域ネットワークのグローバルな相互運用性(GIBN)プロジェクトの推進
 GIBNプロジェクトは、各国の試験研究施設間を国際海底ケーブル及び国際衛星通信回線により接続し、広帯域ネットワークを利用した相互接続性実験及びアプリケーションの相互運用性実験等を行っている。
 郵政省では、9年度においては、国際ATM広帯域ネットワークを利用してカナダとの間でデジタル高精細テレビ(HDTV)のビデオ・オン・デマンドアクセス実験やHDTV会議通信実験を実施している。



 

第3章第7節1.(1) 情報通信研究開発基本計画の充実-(3) 総合的な研究開発体制の整備 に戻る 2. 標準化活動の一層の推進 に進む