平成10年版 通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第4節 放送政策の推進

  1. 放送のデジタル化の推進

 放送のデジタル化は、周波数の利用効率を飛躍的に高め、チャンネルの多様化、高画質化及び高機能化等を実現するものとして、世界的潮流となっている。
 郵政省では、視聴者、放送事業者、番組制作者、機器製造事業者等へのメリットの還元と我が国放送分野の国際競争力確保のため、地上放送、衛星放送及びケーブルテレビの全メディアのデジタル化を積極的に推進していくこととしている(第3−4−1図参照)。

第3-4-1図 全放送メディアのデジタル化の推進
(1) 地上放送のデジタル化に向けた取組
 国民に最も身近なメディアである地上放送のデジタル化は、マルチメディア社会の実現には必須であるとともに、電波資源の有効利用を図ることを可能とするものである。
 郵政省では、地上デジタル放送が2000年以前に開始できるよう、放送方式、チャンネルプランの策定、制度整備等を進めることとしている

ア 放送方式の策定
地上デジタル放送実験用アンテナ(写真)
地上デジタル放送実験用アンテナ
 通信総合研究所及びNHKでは、9年1月から、地上デジタル放送方式に関する野外実験を行っているが、9年度においては実験を拡充し10年夏ごろまでの予定で、 [1] 基本機能の開発・測定、 [2] サービスエリアの測定、 [3] 移動体向け放送実験、 [4] 単一周波数中継実験に着手した。これらの実験を踏まえ、10年夏ごろに放送方式の暫定案を策定し、10年秋には、暫定放送方式に基づいた実用規模の出力による実験を実施することとしている(写真参照)。

イ チャンネルプランの策定
 チャンネルプラン案策定については、そのために必要なデジタル放送の電波伝搬特性等の調査・分析を、9年度から全国主要都市において実施している。この調査・分析結果を踏まえ、10年末ごろを目途に、全国的な地上デジタル放送チャンネルプラン案を策定することとしている。

ウ 地上デジタル放送懇談会の開催
 郵政省では、地上デジタル放送の円滑な導入の在り方について検討を行うことを目的として、9年6月から「地上デジタル放送懇談会」を開催している。本懇談会では、 [1] 地上放送デジタル化の意義とサービスイメージ、 [2] 視聴者保護の在り方、 [3] 制度の在り方、 [4] 導入方策と支援の在り方等について検討を行っており、10年10月に最終報告が取りまとめられる予定である。

(2) BS放送のデジタル化に向けた取組
 放送衛星(BS)を利用した放送については、BS−3bとともに、9年8月から、BSAT−1aによるアナログ放送が提供されている。また、BS−4後発機については、9年5月に、電波監理審議会答申を受けた放送普及基本計画の一部変更により、「BS−4後発機の在り方」が決定された。その概要は、次のとおりである。
  [1]
デジタル放送技術が急速に進展していることから、西暦2000年を目途にBS−4後発機を利用したデジタル放送を開始する。
  [2]
従来のアナログ放送を円滑にデジタル方式に移行するため、後発機においては、ハイビジョン放送を含めたデジタル移行チャンネルを設置し、サイマル放送( 注5)を実施する。
  [3]
デジタル移行チャンネル以外については、デジタルHDTV放送を中心とする。
  [4]
衛星の円滑な調達及び参入の自由化によるBS放送市場の活性化確保のため、受託・委託放送制度を導入することが適当である。
 郵政省は、BS−4後発機による2000年のデジタル放送開始に向け、9年10月に委託放送業務への参入希望に関するヒアリングを行った。また、10年2月に電気通信技術審議会からの答申を受けてBS放送の放送方式を策定し、同月、電波監理審議会に放送普及基本計画の変更等の制度整備について諮問した。10年度には、これらを受け、放送事業者選定を行うこととしている。

(3) ケーブルテレビのデジタル化の推進
 ケーブルテレビのデジタル化は、アナログ方式に比べて、 [1] 画質・音質の向上が見込めること、 [2] 圧縮化技術を用いることによる多チャンネル化が可能であること、 [3] 他のメディアとの親和性があること、 [4] 多様なサービスの提供が可能であること、等の点で有利である。
 8年12月に、アナログ方式と共存が可能な、ケーブルテレビのデジタル伝送方式の技術基準が策定され、10年4月からケーブルテレビ事業者1社がデジタル放送サービスの開始を予定している。

(4) デジタル化に向けた各種の取組

ア 放送機器端末の規格化、共有化の推進

(ア) CSデジタル放送受信機の共用化
 放送受信機の共用化は、視聴者にとっては同一の受信機で異なる放送事業者のサービスを受けられるという利便性の向上に資する一方、放送事業者にとっても、衛星デジタル多チャンネル放送事業のマーケット全体の拡大によって、事業者の自主性、独創性を生かしたサービス提供が迅速に展開できるという効果がある。
 しかしながら、サービスの違いが結果として事業者個有の受信機を生みだし、視聴者の利便性が損なわれることになるので、このような事態を避けるために、9年10月、ARIBにおいて、共用受信機の業界標準が策定され、CSデジタル多チャンネル放送事業者3社及び製造業者は、早急に共用受信機を市場投入するよう準備を進めている。
(イ) BSデジタル放送と地上デジタル放送の受信機共用化への取組
 9年7月からARIBにおいて、BSデジタル放送と地上デジタル放送の受信機共用化のためのプラットフォーム機能及び受信機機能の検討を行っており、現在BSデジタル放送用受信機の規格化との連携も図りながら検討を進めている。
(ウ) デジタルケーブル端末機のオープン制の導入に向けた取組
 デジタルケーブルテレビシステムの円滑な導入と普及促進に資するため、郵政省では、9年12月から「デジタルCATV普及のための技術的支援に関する調査研究会」を開催している。本研究会においては、デジタルケーブル端末機のオープン制の導入に向けた標準化の在り方等に関して検討を行っており、11年3月を目途に報告を取りまとめる予定である。
(エ) 通信・放送融合時代に向けたマルチメディア・プラットフォームの在り方の検討
 9年12月、地上デジタル放送懇談会デジタル放送端末作業班を設置し、この中の検討事項の一つとして通信・放送を融合した端末の将来像を検討することとなった。特に、視聴者が、衛星・地上・ケーブルテレビ・インターネット等の伝送メディアや事業者の違いを意識せず、共通の受信機で、デジタル放送のメリットを生かした多種多様なサービスを容易に選択できるようにするため、同端末作業班では、各メディアの映像・音声フォーマットの共用化技術、電子番組情報案内(EPG)の共通化技術等のマルチメディア・プラットフォーム技術について検討を行っている。

イ 次世代高機能映像技術プロジェクト
 9年4月に電気通信技術審議会から答申を受けた「情報通信研究基本計画」の一つとして、次世代の放送サービス、マルチメディアのかなめとなる高度映像利用の実現のため、「次世代高機能映像技術プロジェクト」が10年度から実施されることとなった。
 本プロジェクトにおいては、立体・超高精細映像等の多彩な映像の処理・情報検索・加工・流通等が容易にできるシステムと端末の実現を図るため、17年度までの予定で高機能映像関連技術の研究開発を幅広く実施していくこととしている。



 

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