昭和53年版 通信白書

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3 画像通信の展望

 日ごとに複雑化,高度化する社会において,個人生活の分野でも,企業活動の分野でも,爆発する情報量の中から適切かつ有効な情報を選択し活用することが重要な課題となってきている。
 一方,今後の情報メディアとして期待されている画像通信は,多量の情報を瞬間的に理解させ得る唯一のメディアであり,複雑,高度な内容の効率的伝達に適しているため,次のような役割を果たすものと想定される。
[1] 生活情報入手の効率化,教養娯楽の多様化など個人生活の利便向上
[2] 地域格差の是正,資源エネルギーの節約,交通問題などの社会問題の解決
[3] 各種情報・資料の効率的管理,人的・物的輸送の一部代替など組織活動の効率化
 しかし,ファクシミリを除いては普及がはかばかしくないのが現状であり,わずかに交換網を通さずに利用者と用途を限定したCCTV(Closed Circuit Television)による画像情報システムに安定した利用がみられる程度である。
 これは,道路の交通状況,ダムの水位,工場内の機械等の監視,旅券の照合,デパートの買物案内等に利用されており,中でもホテル向けの映像情報システムが大規模で,ホテルの外国人宿泊者のための英語ニュースサービスや観光案内,自主番組などが提供されている。こうした個別専用システムの普及を図ることにより,画像通信の効用が認識されニーズも徐々に明確になっていくものと思われる。
 画像通信システムを魅力あるものにする手段として,コンピュータを中核とする大容量情報処理技術と結合することにより個別情報を検索する機能を持たせることが検討されている。
 こうしたシステムを一般家庭向けのシステムとして拡張するため二つのアプローチが行われている。一つは電波や電話網といった既存のメディアを有効に活用することにより経済性を有する個別情報提供システムを実現しようとする英国のテレテキスト,プレステルや我が国のテレビジョン文字多重放送,キャプテンシステム等である。もう一つはマスメディアでは充足しにくいロ-カル情報ないしはコミュニティ情報を,画像通信を利用した新しいコミュニティ・コミュニケーション情報システムとして提供することを通じて,実用化を進めていこうとするものである。具体的には同軸ケーブルを利用した多摩CCISのシステムや光ファイバケーブルを利用した東生駒Hi-OVISシステム等がある。
 これら二つのアプローチは,今後の画像通信システムの在り方と画像技術レベルの発展を促す点において大きな意味を持つものとして注目されている。
 以上のように画像通信は,個別多様化した国民のニーズにこたえる新しい情報メディアとして大いに期待されているが,今後,社会のニーズに適合した画像通信システムを開発し,国民生活の向上に役立てていくためには,経済化を中心とした技術開発を積極的に行うとともに,その基礎に立った各種実験システムの推進等を通じて社会的,経済的,文化的ニーズの動向を見極め,国民生活に身近な情報メディアとして育成していくことが必要であろう。

 

 

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