昭和53年版 通信白書

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6 その他の国際機関

(1) 国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)

 この委員会は,国連経済社会理事会(ECOSOC)の監督下にある地域経済委員会の一つで(1974年9月国際連合アジア極東経済委員会(ECAFE)から名称を変更),地域内各国の経済,社会開発のための協力をはじめ,これに関する調査,研究,情報収集等を行っている。現在の加盟国は,域内国28,域外国5,準加盟国8の計41か国で,我が国は1954年以来域内の加盟国として参加している。ESCAPにおける通信分野の討議は,常設委員会の一つとして海運・運輸通信委員会があるが,ここで域内の電気通信又は郵便の開発に関する技術及び経済関係の諸問題を討議し,その実施状況を検討するなどの諸活動を行っている。
 通信分野における最も大きなプロジェクトは,「アジア・太平洋電気通信共同体」の設立と域内の14か国を対象とする「アジア電気通信網」計画の実現である。アジア電気通信網計画については,現在,計画実現のための技術的,経済的諸問題に関して,ESCAP事務局と関係各国との間の調整会議が数次にわたって開催されており,これらの活動を強化するため我が国からも専門家をESCAP事務局に派遣して協力している。
 また,アジア・太平洋電気通信共同体は,地域内電気通信の開発と地域電気通信網の完成を推進することを目的として,地域内諸国により設立がかねてより検討されていたものであるが,数次にわたる同共同体設立憲章起草のための会合を経て1976年3月27日の第32回総会において「アジア・太平洋電気通信共同体憲章」が採択された。同憲章は,同年4月1日以降ESCAPの域内加盟国及び準加盟国に対し署名のため開放されており,7か国(本部の所在地であるタイを含む。)以上の加盟を条件として創立会合を開催することとしている。我が国は,ESCAP地域での電気通信分野における最大の先進国として,また,本地域における国際的連帯に果たすべき責務にかんがみ,これまでの諸会合においても積極的な役割を果たしてきたところであるので,1977年11月2日には同憲章を国会で承認するとともに,同月25日には,同憲章の受諾書を国際連合事務総長に寄託している。
 なお,現時点において署名を行っている国は,アフガニスタン,バングラデシュ,ビルマ,中国,インド,イラン,日本,ナウル,ネパール,パキスタン,パプア・ニューギニア,フィリピン,タイ,マレイシア,シンガポール,韓国及びオーストラリアの17か国並びに香港であり,このうち,タイ,イラン,パプア・ニューギニアを除く14か国及び香港が批准又は受諾を了している。

(2) 国際連合宇宙空間平和利用委員会

 宇宙空間の平和利用に関する法律問題,科学技術面の国際協力等を検討し,国連総会に検討の結果を報告することを任務としている国際連合宇宙空間平和利用委員会においては,下部機関として法律小委員会及び科学技術小委員会が設けられ,これらの問題について,それぞれ専門的に検討が行われている。
 宇宙空間の平和利用に関する法律面の審議を任務とする法律小委員会は,1977年3月18日から4月8日まで第16会期会合が開催され,「月条約案」,「衛星による直接テレビジョン放送を規律する原則案」,「衛星による地球の遠隔探査(リモートセンシング)の法的側面」及び「宇宙の定義」について検討が行われた。このうち,「衛星による直接テレビジョン放送を規律する原則案」については,未合意の4項目(「同意及び参加],「番組内容」,「不法な許されざる放送」及び「前文」)の中の「同意及び参加」並びに「前文」を中心に審議が行われた。前者の審議においては,暫定的に「国家間の協議及び協定」という表題の案文が提出され,これに従って検討が進められたが,合意には至らなかった。また後者については,今回初めて案文が提出され,実質的審議が行われた。
 なお,この2項目については,後日開催された宇宙空間平和利用委員会第20会期会合においても,特別な作業部会を設置して審議が行われたが,各国の基本的考え方の相違から,最終的合意には至らなかった。
 宇宙に関する科学技術面での国際協力等の審議を任務とする科学技術小委員会は1978年2月13日から3月2日まで第15会期会合が開催され,リモートセンシング,国連宇宙応用計画,国連宇宙会議の開催,静止軌道の技術的特性等について審議された。

(3) 国際連合教育科学文化機関(UNESCO)

 ユネスコは,国際連合の専門機関のーであり,教育,科学,文化及びコミュニケーションの各分野にわたって多様な活動を行っている。
 特に放送に関しては,ユネスコは,早くから放送の利用の側面に着目し,開発途上国における教育放送の役割など様々な内容について,セミナ,ワークショップの開催,研究の推進等を行ってきたが,近年では,放送における衛星の果たす役割にも関心を深め,これまでに,「情報の自由交流,教育の普及及び文化的交換の増大のための衛星放送の利用に関する指導原則宣言」(1972年)及び「衛星により送信される番組伝送信号の伝達に関する条約」(1974年)を採択している。そのほか1976年には,「ラジオ及びテレビジョンに関する統計の国際標準化に関する勧告」等も採択している。
 なお,1978年10〜11月の第20回ユネスコ総会ではマスメディア及び.コミュニケーションの役割に言及している「人種及び人種的偏見に関する宣言案」及び「平和及び国際理解の強化並びに戦争宣伝,人種差別主義及びアパルトヘイトとの戦いに対するマスメディアの貢献を律する基本原則宣言案」等を審議する予定である。

(4) 政府間海事協議機関(IMCO)

 近来,船舶の大型化,高速化,航行の増加,自動化等に伴い,海上移動通信においては,混雑の緩和,質及び速度の改善,遭難及び安全通信の改善,無線通信士の訓練及び資格についての世界的統一化等の問題について解決する必要性に迫られている。海上を航行する船舶の安全のための国際協力を図ることを目的としているIMCOにおいては,常設機関である海上安全委員会に無線通信小委員会,訓練当直基準小委員会等10の小委員会及び1の専門家グループを設けて,これらの問題について検討がなされてきた。52年度においては次のような諸活動が行われた。
ア. 「1977年の漁船に関するトレモリノス国際条約」採択会議
 この会議は,1977年3月7日から4月2日までスペインのトレモリノスにおいて,我が国を含め46か国,国際機関5の参加のもとに開催された。
 この条約は,漁船及びそれらの乗組員の安全に直結した漁船の構造及び設置(無線電信及び無線電話を含む。)に関する統一した原則及び規則を制定することを目的としたものである。
イ.無線通信小委員会
 海上における無線通信の全般的な問題を検討することを任務とする無線通信小委員会は,第18会期が開催され,主として海上遭難通信制度,非常用位値指示無線標識(EPIRBs)の運用要件,救命艇筏用無線装置の運用要件,船舶向け航行警報放送についての国際的調整,船舶用無線装置の運用基準,1979年 WARCの準備及び移動沖合掘削施設のための安全コード等について検討が行われた。
ウ.訓練当直基準小委員会
 船員の訓練及び資格に関する基準を確立することを任務とする訓練当直基準小委員会は,第10会期が開催され,1978年6月14日から7月7日までロンドンにおいて開催される条約(船員の訓練及び資格証明に関する国際条約)採択会議において審議される条約の最終草案の作成を行った。

(5) 国際民間航空機関(ICAO)

 現在,航空の分野では,通信にあるいは航行援助に各種の電波が駆使されている。
 この分野における電気通信の国際的課題は,電子技術を十分に活用して通信の自動化を図ること,VOR,ILS等の航行援助施設の性能を向上させること,宇宙通信技術を導入することなどである。
 国際民間航空が安全かつ整然と発達するように国際協力を図ることを目的とするICAOにおいては,航空委員会が常設されているほか,必要に応じて航空会議,地域航空会議等が開催され,これらの問題について専門的に検討している。

(6) 国際無線障害特別委員会(CISPR)

 国際無線障害特別委員会は,電気及び電子の技術分野における標準化等に関して国際協力を促進することを目的とする国際電気標準会議(IEC)の特別委員会として設立されたものである。
 目的は,各種電気機器の無線妨害に関する諸規格(許容値,測定器,測定法)を国際的に統一して国際貿易を促進するとともに,放送業務を含む一般無線通信業務を各種電気機器による電波雑音から保護するための国際協力を推進することにある。
 また,CISPRは,CCIRの要請に応じて,無線妨害に関する特別研究を引き受けるほか,会議にはオブザーバを相互に派遣するなど,緊密な協力関係を保っている。
 CISPRには,総会,運営委員会,6つの小委員会(妨害波測定器,工業・科学及び医事用機器からの妨害,電力線・電気鉄道からの妨害,自動車・内燃機関からの妨害,受信機の妨害特性,各種電気機器等からの妨害)及び各小委員会に所属する作業班並びに運営委員会に所属する作業班が設置されている。1977年の10月から11月にかけて各小委員会及び作業班がユーゴスラビアのドブロブニクで開催され21か国及びCCIR等の関係国際機関から150名が参加し,我が国からは代表8名が参加して会議の活動に寄与した。
 国内では,郵政省の附属機関である電波技術審議会において,CISPRに関する文書及び国際規格に対する意見等を審議している。
 本年度は223件の文書について審議を行い,「妨害波測定器規格」ほか2件について,文書による回答,意見を提出した。また,作業班に対しても10件の寄与文書を提出した。

(7) 経済協力開発機構(OECD)

 経済協力開発機構は,1961年,欧州経済協力機構を発展的に改組して発足した機構で,経済の成長,発展途上国援助,貿易の拡大への寄与を目的として,加盟国間の政策の調整,情報及び経験の交換,資料の作成,共同研究,人的交流等の活動を行っている。1978年3月現在加盟国は24か国で,我が国も1964年に加盟している。
 OECDの活動は,経済,社会の多くの分野に及んでおり,通信政策に関しても,科学技術政策委員会(CSTP)の下に情報・電算機・通信政策作業部会(ICCP)が置かれ,情報通信分野での近年の急速な進展に係る各種の問題について,多角的な側面から総合的に検討が行われている。具体的には,国際的なデータの流通とプライバシー保護,情報活動の経済分析,或いは政府と情報政策等の問題について,専門家会合,シンポジウムの開催,実態調査,報告書の作成等が活発になされている。
 1977年9月には,従来個人データの保護に関する問題を中心に研究を行ってきたデータバンクパネルの活動の一応の締めくくりとして,ウィーンにおいて,国際的なデータの流通とプライバシー保護に関するシンポジウムが開かれている。ICCPでは,同シンポジウムでの成果を基に,従来の活動対象に加えて,新たにデータネットワークの国際動向の研究をとり上げるとともに,データの保護の問題についてはデータバンクパネルに代わるものとして,新しい専門家会合を設け,非個人データの流通をも対象とした新たな段階の活動を行うこととしている。

 

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