昭和53年版 通信白書

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第1節 世界の情報化の進展

1 世界の情報化の動向

(1) 情報化の果たす役割

 近代的な国家の存立に不可欠の条件として通信網の完備,マスコミニュケーション・メディアの発展,教育水準の高度化などの情報流通基盤の整備がまず挙げられる。これは,質の高い情報の滞りない流通が経済の発展,社会の安定また国家の安全にとってどれだけ重要なものであるかの証左とも言えよう。
 第1-2-1図は地域別にみた電話機の普及状況である。南北アメリカとヨーロッパだけで81.1%と大部分を占めており,人口では世界のおよそ7割を占めるアジア・アフリカ地域はわずか16.9%(うち70%は日本)と極めて低い。また,第1-2-2図はやはり地域別にみたテレビ受像機の普及状況であり,ここでも全く同様に欧米地域とアジア・アフリカ地域との差は歴然としている。
 国中どこからでも電話がかけられるように通信網を整備するには巨額の投資,長期にわたる建設工事が必要であり,欧米あるいは我が国のような先進国においては数十年にもわたる通信網建設の歴史があってはじめて現在の便益を得ることができた。また,ラジオ,テレビの電波メディアについては,国民の間にこれらの受信機が普及するための十分な経済的基盤がなければならないという問題がある。
 しかし,現在これらのアジア・アフリカ諸国の間に工業化の波が押し寄せているように,近い将来,衛星通信等の新技術の応用や国際的な協力により現在我が国が経験しつつある情報化をこれらの諸国もより急激に経験せざるを得ないだろう。
 1976年現在,世界全体での電話機の対人口普及率は9.6%,テレビ受像機の普及率もまた9.6%である。この数値が,欧米諸国や我が国並みの30〜40%にまで引き上げられる時,世界はどのような姿を示すであろうか。コミュニケーションの発展が人類の相互理解を深め,社会の繁栄を約束するものである限り,世界の情報化は人類の幸福の実現のためには最も重要な要素の一つではないだろうか。

(2) 情報メディアの国際比較

 世界の中での情報化先進国としての我が国は,情報化の進展度の上で同じく世界の情報化をリードする欧米諸国に比して,どのような位置づけにあるのだろう。第1-2-3図は主要通信メディアの郵便及び電話の普及率について欧米諸国と我が国との国際比較を試みたものである。
 総数においても,対人口比においても圧倒的に大きい米国を除いた他の西欧諸国と我が国との大きな違いは,我が国の電話機普及率の高さと,相対的にみた郵便利用度数の低さであろう。つまり,我が国においては電話が西欧諸国における以上にビジネスと家庭生活に大きな役割を受け持つ通信メディアとして広く普及していることを示している。これは日本経済の急激な成長によるものであると同時に,その急成長を支える大きな原動力としての機能を電話が果たしたということと切り離して考えることはできない。
 第1-2-4図は,先進主要5か国におけるマス・メディアの普及状況を比較したものである。このグラフは,放送系メディアのテレビ受像機を一方の軸に,出版系メディアの書籍を他方の軸に,また,プリント系メディアの新聞をもう一方の軸にとり,最も普及した国の普及率を100とし,各国の普及率を指数化して表している。
 これをみると,新聞については我が国が,テレビ受像機については米国が,書籍については西独が最も普及しており,英国はバランスよく各メディアとも普及率が高いが,フランスはいずれのメディアも普及率が低く,特に出版系メディアについては他の4か国に比べて遅れが目立っている。
 日本,米国及び西独のメディア普及状況をみると,際立った対照をみせており,これは情報化の進展が必ずしも同一の方向へ進むものではなく,各国の社会状況や文化などにより異なった進展ぶりを示すものと考えられる。我が国の相対的に占める位置が,他の西欧諸国に比べて,テレビ,書籍といった面で予想外に低く,新聞の発行部数において最も高いという事実は,我が国の情報化における新聞というメディアの重要性について我々に再考を促す。あるいはまた,我が国と米国が書籍点数の面において西独及び英国に比べて遅れていることは,画一的な情報の流通においては先進的な立場にあると言えても,個別的な,あるいは個性的な情報の流通においてやや遅れているということを暗示するものであるかもしれない。
 第1-2-5図は情報化社会推進の上で大きな要素となるコンピュータ普及率の国際比較であるが,この面でも我が国はフランスと並んで世界で4番目の普及率を誇るに至っている。
 しかし,これらの発達した通信網,コンピュータ,マス・コミ情報網などを高度に利活用してはじめて情報化社会は成立するのであり,高度の利活用のためには,設備の拡充,技術開発等の努力のみならず,政策,法制,事業経営といった各方面における条件の整備が不可欠である。

第1-2-1図 地域別にみた世界の電話機台数(1976年1月1日現在)

第1-2-2図 地域別にみた世界のテレビ受像機台数(1976年)

第1-2-3図 主要通信メディアの国際比較(1976年度)

第1-2-4図 マス・メディア普及状況の国際比較

第1-2-5図 人口百万人当たりコンピュータ台数(ミニコンを除く)の国際比較 1976年末現在

 

 

 

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