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第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第3節 ICTによるイノベーションを推進する研究開発

1 イノベーション創出に向けた現状と課題

我が国では、「イノベーション」は長きに渡り、「技術革新」と訳されてきた1。しかしながら、イノベーションの提唱者であるシュンペーターによれば2、イノベーションとは、物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」を創造することにより、新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことである。

また、イノベーションは、大別すると、従来製品・サービスの改良による「持続的イノベーション」と、従来製品・サービスの価値を破壊する「破壊的イノベーション」との2種類に大別される3。同時に、イノベーションを起こす手法として、新製品の開発により差別化を実現する「プロダクトイノベーション」と、新たな方法の実施により差別化を実現する「プロセスイノベーション」とに大別できる。

我が国の経済発展は、いわゆる「カイゼン」を中心とするプロセスイノベーション型や、トランジスタラジオやヘッドフォンステレオの小型軽量化によるプロダクトイノベーション型の、先進国をキャッチアップし、より強い競争力を得る持続的イノベーションを中心に遂げられてきたと考えられる。

その一方、経済のグローバル化が進展し、さらに多くの技術がコモディティ化した。このため、例えばEMS4を活用することで最先端技術を用いた製品の開発が容易になり、また、クラウドサービスの登場により、高性能なサーバーが必要なインターネット上のサービス開発であっても誰でもできるようになるなど、最先端技術を用いた製品・サービス開発を行う敷居は大幅に下がった。このため、持続的イノベーションによる競争力は、容易に別の者にキャッチアップされる可能性が高まっている。実際にイノベーションにおける我が国の国際競争力は年々低下傾向にある(図表3-3-1-1)。

図表3-3-1-1 イノベーションに関する国際競争力ランキングの推移
(出典)産業競争力会議(第2回)山本大臣提出資料

このため、我が国が安定的に更なる経済成長を遂げるためには、我が国発の破壊的イノベーションの創出が求められているところであるが、近年、我が国発の破壊的イノベーションによる経済成長がなされてこなかった理由について、まとめることとしたい。



1 1958年の経済白書による紹介の際に「技術革新」と記載されたものが定着したとの説がある。

2 ヨーゼフ・シュンペーター「経済発展の理論」(1911年)

3 クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(1997年)

4 Electoronics Manufacturing Service:電子機器の受託生産サービス

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