平成16年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

2 電子署名・認証の普及促進

ネットワークを利用した社会経済活動の一層の促進のために

 近年のインターネットの急速な普及に伴い、電子商取引をはじめ、金融・教育・医療・福祉・行政等様々な社会経済活動がインターネット上でも行われるようになりつつある。インターネットはオープンなネットワークであるため、相手方と対面せずに誰とでも情報のやりとりができる便利な一面を持っているものの、相手方が本当に本人であるのか、やりとりしている情報の内容が途中で改ざんされていないかなどを確認することが必要となる。そのための有効な手段として、電子文書を作成した者を示すための措置である電子署名と、電子署名を行った者を証明する認証業務がある。電子署名には、用いる技術に応じて様々な方式があるが、公開鍵基盤(PKI:Public Key Infrastructure)に基づくものが、現在広く利用されている(図表[1])。また、電子署名・認証については、特定認証業務の認定、高度ネットワーク認証基盤に関する研究開発、電子政府推奨暗号リストの決定等の取組がなされている。

 
図表[1] 公開鍵基盤に基づく電子署名・認証業務のイメージ

図表[1] 公開鍵基盤に基づく電子署名・認証業務のイメージ

1 特定認証業務の認定

 総務省、法務省及び経済産業省の3省の共管により平成13年4月から施行されている「電子署名及び認証業務に関する法律」では、[1]本人が行った電子署名が付された電子文書等について手書き署名や押印が付された紙文書と同様の法的効力を認め、[2]特定認証業務(省令で定める安全基準に適合する電子署名について行われる認証業務)に関し、業務に用いる設備や利用者の真偽の確認方法等の業務の実施方法が一定の水準を満たすものについて国による任意的な認定制度を導入している。平成15年度末現在で、20件の特定認証業務が認定を受けている。
 総務省では、インターネットに関連する技術は進展が著しいこともあり、特定認証業務の認定に係る基準の見直しを適宜行い、電子署名の安全性や認証業務に係るセキュリティの確保に努めている。また、電子署名や認証業務に対する国民の理解を深めるため、電子署名が持つ法的効力や電子署名を行う際の注意事項等について、広報活動等を通じた普及啓発活動を行っている。
 さらに、グローバルな電子商取引を促進するためには、電子署名及び認証業務に係る制度の国際的な調和を図ることが重要であり、シンガポールとの間で、自国において認定を受けている認証事業者が相手国政府へ認証業務の認定を申請した場合には、両国で定める手続きに従って認定手続を簡素化することが可能となっている。

2 高度ネットワーク認証基盤に関する研究開発

 誰もが電子証明書を利用した厳格な認証機能を手軽に利用することが可能となり、ネットワークサービスを安心して提供・利用できるようにするため、総務省では、高度ネットワーク認証基盤に関する研究開発を平成16年度から実施している(図表[2])。従来の電子証明書を利用した通信では、電子証明書を受け取った側が自らその検証を行う必要があるが、本研究開発では、電子証明書の検証を行う機能をネットワーク自体に具備させることにより、誰もが簡便に利用できる高度な本人確認機能を有するネットワーク基盤の構築を目指している。

 
図表[2] 高度ネットワーク認証基盤に関する研究開発

図表[2] 高度ネットワーク認証基盤に関する研究開発

 また、民間における取組も活発となっており、平成15年12月に安心・安全インターネット推進協議会が設立され、平成15年度末現在で105の会員が参加し、通信相手を確実に特定する高度な認証やセキュリティが保証された通信を誰もが簡便に利用できるようなネットワーク環境を実現することを目的とした活動を推進している。

3 電子政府推奨暗号リストの決定

 ネットワークを利用した社会経済活動において不可欠な情報セキュリティを確保するためには、客観的にその安全性が評価され、実装性に優れた暗号技術を採用することが重要である。そこで、総務省及び経済産業省が開催する暗号技術検討会並びに通信・放送機構(現独立行政法人情報通信研究機構)及び情報処理振興事業協会(現独立行政法人情報処理推進機構)が開催する暗号技術評価委員会の両研究会による暗号評価プロジェクトCRYPTREC (Cryptography Research and Evaluation Committees)において、平成15年2月に電子政府における調達のための推奨すべき暗号のリスト(電子政府推奨暗号リスト)が決定された。これを踏まえ、各府省は情報システムの構築にあたり暗号を利用する場合には、可能な限り電子政府推奨暗号リストに掲載された暗号の利用に努めている。
 現在、暗号技術検討会及び暗号技術評価委員会を発展的に再編した暗号技術監視委員会において、暗号に対する攻撃技術の一層の高度化に対応し、電子政府推奨暗号リストに記載された暗号の安全性を維持するために、暗号に関する技術動向を収集するなどの監視活動等を行っている。

関連ページ:公的認証サービスについては、コラム2参照

 

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