昭和55年版 通信白書

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5 放送事業に関する動向

 英国の放送は,ラジオ,テレビとも公共放送と商業放送の二本立てで運営されており,公共放送は公共企業体の英国放送協会(BBC)が,また,商業放送は同じく公共企業体の独立放送協会(IBA)と,その監督下にある私設営利会社のラジオ,テレビ番組制作会社が運営している。なお,IBAと番組制作会社とを合わせた商業放送全体を,テレビはインデペンデント・テレビジョン(ITV),ラジオはインデペンデント・ローカル・ラジオ(ILR)と呼んでいる。
 このような体制の下で,英国では,BBC特許状や商業放送法の有効期間満了が近づくたびに政府任命の放送調査委員会がその後の放送の在り方を審議するのが慣例になっているが,1974年4月に任命されたアナン放送調査委員会は,1977年3月報告書を発表し,第4番目の新しいチャンネルを運営する機関として公共放送協会(OBA)を設立すること等の勧告を行った。当時の労働党政府は,この勧告に従ってOBAを新設する意向であったが,1979年5月の政権交代に伴い,保守党政府は,財政上の問題から,新協会の設立に代え既存のIBAを第4チャンネルの運営主体とすることとし,1980年2月,商業放送法改正法案を議会に提出した。
 この法案は,1981年末で切れるIBAの存続期間を1996年末まで15年間延伸するとともに,新チャンネルはITVの場合とは異なった形の子会社によってIBAが運営する旨規定している。この子会社は広告関係業務は行わず,放送番組の調達と編成に当たるが,その際,番組の相当部分は既存ITVの番組制作会社やその関係団体以外の組織や人々によって提供されることが条件とされている。また,番組の内容については,法案は,IBAに対し,既存ITVチャンネルではカバーされていない特定関心視聴者向けの内容や教育的な内容を持った番組を適当に盛り込むとともに,番組の形態及び内容において実験的な試みも行い,新機軸を編み出すように努め,新チャンネルに独特の性格を与えることを確保するよう要請している。政府は,この法案をこの7月までに成立させ,第4チャンネルを1982年秋までに発足させたいとしている。
 フランスの放送事業は,文化情報相の監督の下に運営されているが,政府は,1980年1月,ラジオとテレビジョンの放送網の管理運用等を行っているフランス送信担当公社(TDF)の監督権を郵電長官の手に移すことを決定した。この措置は,電気通信とテレビジョン放送に用いられる技術がますます同じようなものになってきたため必要になったものであり,今回の電気通信とテレビジョンに対する監督権の一元化は,衛星や文字情報放送システムなど新しい通信技術に関するフランスの研究開発力の増進とこの分野におけるフランスの技術や製品の輸出の進展に資するものとされている。

 

 

4 郵便・電気通信事業に関する動向 に戻る 第1部第2章第1節1 通信メディアの進展を支える技術革新 に進む