昭和55年版 通信白書

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16 ラス・レーダ

 郵政省電波研究所(RRL)では,新しい電波利用の計測システムの一つとして,ラス・レーダ(電波音波共用探査装置)を開発した。ラス・レーダは,音波の大気伝搬速度が気温の平方根に比例し,気圧に無関係という性質を利用して,鋭直上方に発射されたパルス音波の伝搬速度を電波のドプラレーダで測定して,気温プロフィルを求める隔測装置である。音波によって作られる気温の粗密は空気の誘電率の変化に対応し,反射係数は非常に小さいが,音波によって作られる波面に入射するレーダ電波の一部を反射する。この反射電波は,反射面の移動すなわち音速に相当するドプラ効果を受ける。反射波のドプラシフト周波数をパルス音波の送信時を起点として,時々刻々測定すれば気温高度分布が測定される。
 RRLラス・レーダは,送受信アンテナともに3mφパラボラを使用する445MHz,CWドプラレーダと遮音壁付き1.5mφパラボラ型音波アンテナをもつ1,000Hz帯パルス音波発射器とによって構成されている。音波アンテナの両側に送信アンテナ,受信アンテナを密着配置する運用で,夏季,常時200〜600m,ときに1,200mまでの気温高度分布測定が精度0.6℃で可能である。アンテナ配列を変えると,この探査高度範囲は変化する。
 54年度はラス・レーダ研究開発の最終年度に当たり,最終的な改造と性能の評価を行い,55年度はこの原理を応用し,上層風隔測装置の開発に着手する。

 

 

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