昭和55年版 通信白書

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6 郵便事業の財政

 郵便事業は,人件費が約70%を占め,更にこれに準ずる経費を加えると人件費的経費が約90%を占める労働集約性の高い事業であるため,本来賃金コストの上昇に弱い体質を持っている。近年における我が国の賃金水準は年々上昇を示し,このため経費が増大していく傾向は避けられず,郵便事業財政を圧迫してきた。最近における郵便事業の収支状況は第2-1-24表のとおりである。郵便事業収支は,48年の石油危機に端を発した人件費や諸物価の高騰により,49年度以降大幅な赤字に転じ,50年度(51年1月)に郵便料金の改定が行われたが,既に生じていた多額の累積赤字は,51年度に繰り越されることとなった。
 51年度及び52年度は,料金改定等により単年度で黒字となり,累積赤字も一時減少したものの,53年度には単年度で再び赤字が生じた。
 54年度は,郵便事業収入8,691億円に対し,支出8,915億円で,単年度で224億円の赤字となった。この結果,54年度末の累積欠損金は2,124億円に達し,事業財政は極めて窮迫した状況にある。
 このような事業財政悪化を背景として,54年10月16日郵政大臣から郵政審議会に対して「郵便事業財政を改善するための具体的方策」について諮問が行われた。郵政審議会においては,その特別の部会として「郵便事業経営問題特別委員会」を設置して審議を重ね,同年12月11日郵政大臣に次の4点を内容とする答申がなされた。
 ○事業収支の均衡を回復するため効率的経営に徹すること。
 ○郵便料金の改定を行うことはやむを得ない。料金は,第一種(封書)60円,第二種(葉書)40円を骨子とし,料金改定の実施期日は55年7月1日とする。
 ○料金改定方法の弾力化について速やかに検討を行うこと。
 ○安定した労使関係の確立と業務の正常運行の確保に努めること。
 そこで,政府としては,この答申の趣旨を尊重するとともに,物価や国民生活への配慮から,料金改定の実施期日を55年10月1日に延期するほか,第二種(葉書)の料金を55年度中は30円とすることとして,「郵便法等の一部を改正する法律案」を第91回通常国会に提出した。しかし,この法律案は5月19日審議未了廃案となったが,その後第92回特別国会に再提出され,継続審査案件となった。
 郵便事業財政は,前述のとおり極めてひっ迫した状況に立ち至っており,国民の理解と協力を得て今後できる限り早い時期に財政基盤の建て直しを図る必要に迫られている。

第2-1-24表 郵便事業の収支状況

 

 

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