昭和55年版 通信白書

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5 国際海事衛星機構(INMARSAT)

(1) インマルサットの発足
 国際海事衛星機構(インマルサット)は,海事通信を改善するために必要な宇宙部分の提供を目的とする組織として設立が構想され,3回にわたる政府間会議における審議を経て,1976年9月3日にインマルサットに関する条約と同運用協定が署名のために開放された。この条約と運用協定は自らの定めにより,締約国となった国の有する出資率の合計が当初出資率の95%を超えることを発効の条件としていたが,1979年5月17日にこの条件が満たされ,同年7月16日,発効期限まで1か月半を余すのみで条約及び運用協定が発効し,インマルサットは発足した。
 我が国は,条約については1977年3月22日に受諾を条件として署名を行い,第84回国会において承認を受けた後,同年11月25日に受諾書を寄託し,一方,運用協定については,1977年3月22日に,国際電電をこれに署名する事業体として指定し,同社は同年4月7日に署名を行っている。
 なお,1980年3月末現在のインマルサットの締約国と出資率は第2-8-7表のとおりである。
(2) インマルサットの組織構成
 インマルサットの組織は,インマルサットに関する条約の全締約国で構成する総会,出資率の大きさ又は地域配分により選定される署名当事者(及び署名当事者グループ)の代表で構成される理事会及びインマルサットを法的に代表する事務局長と専門スタッフで構成され,業務の管理,執行を担当する事務局の3者構成となっている。
(3) 総   会
 総会は,主権国としての締約国に関係する事項を決定し,またインマルサットの一般方針,長期目標などについて審議し,理事会に対して見解を表明し,勧告を行うことを主たる任務としている。その第1回総会は,1979年10月24日から26日まで,ロンドンで開催された。
 概要は次のとおりである。
ア.理事会代表の選出
 理事会代表のうち,総会は地域代表4名の選出を行い,その結果,アルジェリア,アルゼンティン,中国及びブルガリアの署名当事者が理事会代表となった。
イ.本部協定の承認
 インマルサットが本部所在国である英国政府と締結する,機構,事務局職員,締約国の代表などに対する特権及び免除に関する協定が承認された。一方,本部協定を締結した国以外の締約国における機構,職員などに対する特権及び免除に関する議定書についても検討を行い,議定書案を全締約国に照会するなど,必要な措置をとることを事務局長に要請した。
(4) 理 事 会
 理事会は,インマルサットの目的を達成するために必要な宇宙部分を提供する責任を持ち,この責任を果たすために宇宙部分の企画,開発,取得,運用等に関する方針など,すべての適当な任務を遂行する権限を有しており,インマルサット事業運営の中心的機関である。1980年3月末現在の理事会を構成する署名当事者は以下のとおりである。
 アルジェリア,アルゼンティン,オーストラリア,ブラジル,ブルガリア,カナダ,中国,デンマーク,フランス,西独,ギリシャ,インド,イタリア,日本,クウェイト,オランダ/ベルギー,ノールウェー,ポーランド,シンガポール,スペイン,スウェーデン/フィンランド,ソ連,英国,米国
(注)理事会は22名で構成されることとなっているが,このうち出資率に基づく代表で,同一の出資率を有するものが2以上ある場合は,22名を超えることが認められている。現在は,デンマーク,オーストラリア,インド,ブラジル,ポーランド,シンガポールの下位6か国が同一出資率である。
 1979年度においては,第1回から第3回までの理事会が開催されたが,その主要な活動は次のとおりである。
ア.理事会及び事務局に関係する事項
 出資率に基づく理事会構成メンバ,理事会手続規則,理事会会合で使用する用語の決定,理事会の議長,副議長の選出などを行うほか,理事会内に,技術・運用及び財務・市場計画の2諮問委員会を設置することを決定し,理事会の活動を補佐することとした。
 また,事務局の組織は,当面事務局長の下に法務室,総務・財務部,技術・運用部を置くこととした。
イ.宇宙部分を巡る動き
 現在,米国のマリサットシステムにより提供されている海事衛星通信サービスを中断なく継承するためのインマルサットの初期システムの計画については,インマルサット発足以前の準備委員会の段階から検討されてきた。その過程では,海事通信用部分をとう載したインテルサットV号系衛星3個及びヨーロッパ宇宙開発機関(ESA)が開発中のマレックス衛星3個の組合せによる方法が多くの国の支持するところであった。しかし,理事会においては,米国から,現用マリサット衛星は当初1981年と考えられていた設計寿命を上回って運用可能であるため,新たな観点から計画を再検討する必要があるとの意見が出された。このため理事会は,インサルテット,ESA及びマリサットシステムの運営体であるマリサット・ジョイント・ベンチャーから,更に必要な情報を得て検討を行うこととした。

第2-8-7表 インマルサットの締約国及びその署名当事者の出資率

 

 

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