昭和55年版 通信白書

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第4節 進展する現代通信と今後の課題

1 経済活動と新しい通信メディア

(1) 情報通信にかかわる産業分野の拡大
 現代通信は基幹メディアの成熟を踏まえて新しい通信メディアの開発・導入が急速に行われており,経済活動及び国民生活に及ぼす影響はますます大きくなってきている。
 また,これまで通信及び情報にかかわる分野は,郵便,電気通信,放送,情報処理等,個別に論じられることが多かったが,エレクトロニクス技術の進展,ニーズの高度化・多様化等を背景に,通信メディア間の重合,通信と情報処理の融合等の現象を起こしており,相互の関連はますます密接不可分なものとなりつつある。
 そこで,これらの情報通信にかかわる各産業の総体をひとつの産業としてとらえると,既存の産業分類のわく組みの中では製造業,運輸・通信業,サービス業の各産業にまたがっており,その生産額は10年間(44年〜53年)でほぼ3倍に伸びている。他の産業との比較では,自動車産業の伸びを若干下回るものの,鉄鋼,繊維を上回っている(第1-2-72表,第1-2-73図参照)。
 一方,我が国に比べ,情報通信に関する各種産業の発展が著しいアメリカでは,経済活動全体に対する情報通信関連分野の影響の広がりを考慮し,出版・教育等を含めて,すべての情報活動にかかわる産業を一まとめにした「情報産業」という新しい産業分類を提起し,それによる各種経済統計の再構成を試みている。それによると,「情報産業」は,生産面では国民所得の50%を超えるとともに,労働力の面においても,他産業と比較して最も大きなウェイトを占めるようになっている(第1-2-74図,第1-2-75図参照)。
(2) 情報通信にかかわる産業の構造変化と新しい通信メディア
 情報通信にかかわる産業は着実にその規模を拡大させる一方,新しい通信メディアの進展に伴い構造的な変化を起こしている。
 加入電話等の基幹メディアの伸びが鈍化する一方で,ファクシミリ,データ通信等は近年,急速な伸びを示しており,また,通信機器の生産額の内訳も大きく変化してきている(第1-2-76図参照)。
 通信機器生産の推移をみると,従来,最も一般的であった回転ダイヤル式電話機,クロスバ交換機等の生産が減少する反面,ビジネスホン・留守番電話等の電話応用装置,ファクシミリ,様々な新サービスに対応できる電子交換機等の生産が急増している(第1-2-77図参照)。
 一方,生産額の場合と同様に,情報通信にかかわる産業の事業所数,従業者数についても,近年構造的な変化がみられ,通信に附帯するサービス業(ポケットベル会社等),情報サービス業,電子機器及び通信機器用部品(LSI等)製造業等の伸びが著しく,この産業を取り巻く市場の高度化・多様化の動きを裏付けている(第1-2-78図参照)。
(3) 企業活動の効率化に寄与する新しい通信メディア
 今日,経済の安定成長軌道への移行が定着したことにより,企業にとっては従来のような事業規模の大幅な拡大は望み得ない状況となっている。こうした中で,企業は経営のより一層の合理化,システム化を目指しており通信に関する分野においても機能向上,効率化を目指す動きが急速に進みつつある(第1-2-79表,第1-2-80表,第1-2-81表参照)。
 また,さらに通信及び情報処理だけでなく,文書作成等も含めてオフィス作業全体の合理化・高度化を進めようとする,いわゆる“オフィス・オートメーション”の動きが近年盛んとなっており,企業には様々な情報関連機器が普及しつつある。
 進展の著しいファクシミリ及びデータ通信,さらに近年実用化の予定されているテレテックス等は,いわばこの“オフィス・オートメーション”の中心的なメディアと考えられ,将来的には,これらの様々なメディアが通信網によって結ばれ,総合的なネットワークを形成していくことが期待されている(第1-2-82図参照)。

第1-2-72表 情報通信にかかわる産業の範囲

第1-2-73図 産業別生産額の伸び

第1-2-74図 情報産業と国民所得

第1-2-75図 産業四部門分類でみたアメリカの労働力構成(1860〜1980年)

第1-2-76図 新しい通信メディアの伸び(年度末総数)

第1-2-77図 通信機器生産額の推移

第1-2-78図 情報通信にかかわる産業の伸び率(50年〜53年の伸び率)

第1-2-79表 テレックスから新しい通信メディア(ファクシミリ,データ通信)への移行の理由

第1-2-80表 PBXユーザの機種変更理由

第1-2-81表 電子計算機導入の効果順位

第1-2-82図 情報機器等の普及状況

 

 

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