昭和55年版 通信白書

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5 漏えい同軸ケーブル方式による新幹線の列車無線システム

 漏えい同軸ケーブル(Leaky Coaxial Cable。 以下「LCX」という。)方式は,従来,地下街等における消防活動をより円滑に行うための無線通信補助施設や,列車無線システムにおけるトンネル内の不感対策等陸上移動通信システムの一部に導入され,通信系を補完するため有効に利用されてきた。
 LCX方式による移動通信システムは,施設費が高いこと等の不利な点はあるが,
[1] 電波の放射がケーブルに沿ってほぼ一様であるため,地形等の影響を受けることなく,良好な回線品質を全区間にわたり一様に得ることができること。
[2] 従来の空中線を使用する方式の場合のように,必要としない地域にまでも電波を放射することはないこと。
[3] 電波の漏えい周波数帯域を広くすることができ,更に電界のレベルが一様なため相互変調が少なく,多くのチャンネルが一括して伝送できること。
[4] スロット(ケーブルの外部導体の,電波の放射又は受信用の窓)の形状により,電波の漏えい比率を加減することができること。
などの特徴があり,周波数の有効利用,高品質の通信の確保に優れた性質を有している。
 国鉄においては,このLCX方式の特徴に着目し,56年10月開業を目標として建設を進めている東北,上越新幹線の列車無線については,トンネル区間の多いことのほか,東京周辺部においては,電波がふくそうしていることなどから,全区間にLCX方式を採用することとしている。このため,まず栃木県小山市の43kmの試験線区に53年6月,実験局(基地局相当1局,移動局相当2局で,いずれも400MHz帯24チャンネル用)を開設し,LCX方式による新幹線列車無線システムの各種の確認試験が行われ,良好な結果が得られた。さらに,LCX方式による総合列車無線システムの実用化に備え,東北新幹線仙台―北上間の雪対策実車走行試験線区113.5kmにおいては,LCXの雪による影響等の調査が,また,上越新幹線長岡―新潟間62kmの雪害対策実車走行試験区間においては,消雪設備を付加することによるLCXの動作確認試験が行われる予定である。

 

 

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