昭和52年版 通信白書

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2 情報流通の特色

(1) 情報流通量と情報流通メディア
 我が国の情報流通は供給,消費の両面においてテレビジョン放送,ラジオ放送等の放送系マス・メディアによる情報流通がその大部分を占めている(第1-1-18図参照)。量的側面に限っていえば,我が国の情報流通はほとんど放送系メディア,特にテレビジョン放送の情報流通量の動向にかかっているといえよう。
 しかし,郵便,電話等のパーソナル系メディア,新聞,雑誌等の記録系マス・メディア,さらにデータ通信,有線テレビジョン放送,その他の既存の分類にあてはまらないさまざまな新しい情報流通メディアなどは,量的側面では放送系メディアと比較するとはるかに小さいが,各々の果たす機能の独自性,社会生活に与える影響の大きさは単なる量的比較の枠を越えるものがある。
 とりわけ,近年における電話の急速な普及ぶり,ファクシミリの発展,さらには爆発的な勢いで伸びつつあるデータ通信などの動向は我が国の情報化において極めて特徴的であり,これら各メディアの動向のは握は情報化社会の将来を考える上で大いに役立つことであろう。テレビジョン放送,ラジオ放送の放送系マス・メディアと新聞,雑誌,書籍の記録系マス・メディアをあわせたマス・メディア全体の51年度における情報流通量は45年度の1.58倍(供給量),1.35倍(消費量)となっている。また,メディアごとの割合には,供給,消費ともにほとんど変動がみられない(第1-1-19図参照)。
 個々のメディアについてみると,テレビジョン放送はこの期間にカラーテレビ受像機の普及がすすみ,NHKの受信契約も,45年度には普通契約数(白黒テレビ)約1,516万件,カラー契約数約766万件であったものが,51年度には普通契約数約375万件,カラー契約数約2,331万件となっており,この期間に,白黒テレビ時代から,カラーテレビ時代への移行がほぼ完了したといえよう。
 ラジオ放送では,FM放送が軌道に乗り,その音質の良さ,ステレオ放送などにより人気を得たこと,またモータリゼーションの進展にともなう,カーラジオの増加などで着実に情報流通量を伸ばしている。
 その他,新聞,雑誌等の記録系マス・メディアもそれぞれその情報流通量を増加させている。特に,書籍,雑誌等のメディアでは,放送系のメディアに比べて,情報消費率(消費情報量/供給情報量)が高いことが注目される(第1-1-20図参照)。
 つづいて,従来からあるパーソナル系メディア,郵便と電話についてその動向をみると,全体としての増加率は低く,メディア相互間の比率にも変動がみられない(第1-1-21図参照)。
 郵便(ダイレクト・メールを除く第一種及び第二種)は45年度41.4%から51年度33.3%と減少しているが,これは51年1月の料金改定による一時的な利用の落ち込みの影響があると思われる。
 電話は45年度58.6%から51年度66.7%となっており,伸び率こそあまり大きくないが,永年の課題であった積滞の解消も近く実現の見通しとなり,いまや国民の日常生活に密着したメディアとして,生活必需品といえる程となった。
 近年のコンピュータの著しい発達,普及にともない,オンライン化も急速に進み,情報流通の面でもデータ通信の占める位置が大きくクローズアップされてきた。48年度から51年度までのデータ通信情報流通量の伸びは第1-1-22図に示すとおりであり,併記したコンピュータ総台数,オンライン化コンピュータ台数の伸びと比しても非常に大きい。処理装置の小型化,高性能化,新しいソフトウェアの開発などによりデータ通信による情報流通量は今後も一層伸び,既存の各メディアにも大きな影響を与えることとなろう。
 このほか,全体に占める割合は低いが,有線テレビジョン放送,ファクシミリなどのような新しいメディアも徐々に実用化されはじめており,情報流通の分野に新しい可能性を切り開いて行くことであろう。
(2) 情報流通とコスト
 51年度における情報流通に要した総経費は主要流通メディア(テレビジョン,ラジオ,郵便,電話,新聞等)で約5兆円であり,これは51年度名目国民総生産の約3%に相当し,国民1人当たり,1日につき123円を情報流通のために出費していることになる。
 第1-1-23図は主な情報流通メディアについて縦軸に各メディアの情報流通量にその平均流通距離を乗じた情報流通距離量,横軸に各メディアによって情報を流通させるのに要したコストをそのメディアの情報流通距離量で除した単位流通コストをとり,45年度の値と51年度の値を同一グラフ上に記してその変化をみたものである。
 物価の大幅な上昇の影響と一般的な情報流通量の増加から,45年度より51年度のほうが情報流通距離量,単位コストともに増加したメディア,つまり,グラフ上で右斜め上方に矢印が向かうメディアが多いなかで,テレビジョン放送,ラジオ放送のように情報流通距離量が大きく,かつ単位コストが小さいマス・メディアだけは45年度より51年度のほうが単位コストが小さくなっている。反対に,公衆電気通信の代表である電話,電報といったメディアでは,電話の情報流通距離量は増加しているが,電報のそれはやや減を示しており,単位コストについては,ともに大きく増加している。
 その他では,自営データ通信が最も大きな情報流通距離量の伸びをみせているのが注目される。
 全体としてみると,単位コストの高いメディアはより一層高コストに,また単位コストの低いメディアはよりその情報流通距離量を伸ばす,というようにメディア相互間の差の拡大が一般的な傾向であるといえよう。

第1-1-18図 51年度の我が国の情報流通量

第1-1-19図 情報流通量の増加とメディア別比率(マス・メディア)

第1-1-20図 情報消費率(マス・メディア)

第1-1-21図 情報流通量の増加とメディア別比率(電話,郵便)

第1-1-22図 データ通信情報流通量,コンピュータ総台数及びオンライン化コンピュータ台数の推移

第1-1-23図 情報流通距離量と単位流通コスト
 

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