昭和52年版 通信白書

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2 有線電気通信

 有線電気通信設備の設置の態様は,単独設置,共同設置及び本邦外設置に分かれ,また,有線電気通信設備を設置した者がその設備を使用する態様は自己使用,他人の設備との接続及び他人使用とに分かれる。これらの態様別の設置状況を有線電気通信法に基づく届出,許可等の件数の面からみると以下のとおりである。
(1) 設置の状況
ア.単独設置
 51年度末における有線電気通信設備の届出件数は2万5,708件であり,前年度末に比べて2,278件増加している。
 その内訳は,有線テレビジョン放送施設1万7,191件(66.9%),有線ラジオ放送設備6,967件(27.1%)及び電話,ファクシミリ等の有線電気通信設備(以下「一般の有線電気通信設備」という。)1,550件(6.0%)である。各年度末における設備の届出件数は第2-3-4表のとおりである。
イ.共同設置
 51年度末における有線電気通信設備の共同設置の許可件数は8,775件であり,前年度末に比べて215件増加している。
 各年度末における共同設置の許可件数は第2-3-5表のとおりである。
ウ.本邦外設置
 本邦外にわたる有線電気通信設備の設置は,原則として,電電公社又は国際電電以外の者は設置できないが,特別の理由がある場合には郵政大臣の許可を得て設置できることとなっている。
 これにより許可を行った件数は,51年度末現在で5件であり,その内容は次のとおりである。
[1] 第一太平洋ケーブル
 日本(神奈川県・二宮町)―米国(ハワイ・マカハ)   9,890km
[2] 第二太平洋ケーブル
 日本(沖縄県・具志頭村)―米国( 〃 ・ 〃 )   9,390km
[3] 日本海ケーブル
 日本(新潟県・上越市)―ソ連(ナホトカ)         890km
[4] 日中ケーブル
 日本(熊本県・苓北町)―中国(上海市)          850km
[5] 沖縄・ルソン・香港ケーブル
 日本(沖縄県・具志頭村)―フィリピン(ルソン島)
             ―香港           2,220.5km
(2) 使用の状況
 有線電気通信設備の設置の自由の原則は,設置者がその設備を自己の通信に使用することを前提としているものであるが,その設備を他人の設置した設備と接続して使用したり,他人に使用させたりすることは原則として禁止されており,特別の事由がある場合に,郵政大臣の許可を得て行うことができることとなっている。
ア.接続の許可
 51年度末における許可件数は16件であり,前年度に比べて増減はない。これを許可事由別にみると次のとおりである。
[1] 共同業務(有線法第9条第5号) 0件(  0%)
[2] 緊密業務( 〃 第9条第6号)16〃(100〃)
[3] 特定地域( 〃 第9条第7号) 0〃(  0〃)
イ.他人使用の許可
 51年度末における許可件数は224件であり,前年度に比べて30件減少している。これを許可事由別にみると次のとおりである。
[1] 特定地域 (有線法第10条第 5号)  6件( 2.7%)
[2] 公共の利益( 〃 第10条第16号)218〃(97.3〃)
(参考 特定地域設備)
 有線電気通信法上,都市からの距離が遠く,電電公社が公衆電気通信役務を提供することが困難であると認められる地域(一の市町村の区域内にあって,電話加入区域外の地域)は,特定地域として扱われその地域に設置された有線電気通信設備は特定地域設備として位置づけられている。
 この特定地域設備は,前記(1)共同設置に係るもの42件と前記(2)他人使用に係るもの6件の合計48件であるが,前年度に比べて2件の減少となっている。これは,公社電話の普及に伴い特定地域設備の必要性がなくなり,廃止するためである。
(3) 事業別の利用状況
 有線電気通信設備は,設置主体の事業内容に応じた使用目的を持って設置されるものであるので,事業別に分類することができる。前述した設備について事業別に分類すると以下のとおりである。
ア.単独設置の設備
(ア) 一般の有線電気通信設備
 有線電気通信法上届出ることとなっている設備(以下「屈出設備」という。)のうち有線放送設備を除く一般の有線電気通信設備を事業別にみると,農林漁業407件(26.3%)が最も多く,以下製造業257件(16.6%),サービス業89件(5.7%),建設業77件(5.0%),運輸業71件(4.6%),卸・小売業60件(3.9%),ガス・水道事業21件(1.3%),その他これらの区分できない事業においても568件(36.6%)となっており,広範囲にわたって利用されている。
(注) 前述のとおり,届出設備の大部分は有線放送設備が占め,一般の有線電気通信設備はわずか10%未満であるが,実際にはこれ以外にも有線電気通信法上設置の届出義務が免除されている一般の有線電気通信設備(以下「届出免除設備」という。)が相当数ある。
(イ) 有線放送設備
 有線放送設備は,不特定多数の者(公衆)に一方的に番組を送信するための有線電気通信設備であり,一般の有線電気通信設備が両方向を前提としているのに比べ特殊の用途に限られたものといえる。
A 有線ラジオ放送設備
 51年度末における有線ラジオ放送設備は6,967であり,前年度に比べて28減少している。
 なお,告知放送業務のうち,有線音楽放送業務を行うものは518であり,その年度別の状況は第2-3-6表のとおりである。
B 有線テレビジョン放送施設
 51年度末における有線放送テレビジョン放送施設は1万7,371であり,前年度に比べて2,402増加している。
 なお,このうち,引込端子数が501以上の施設(許可施設)は181であり,前年度に比べて11増加している。
イ.共同設置の設備
 51年度末における共同設置の許可件数8,775について,これを事業別に分けると電気事業4,686件(53.4%),鉄道事業3,531件(40.2%,このうち国鉄が93.9%)となっており,この2事業で全体の93.6%を占めている。このほか製造業388件(4.4%),農林漁業49件(0.6%),サービス業20件(0.2%)その他101件(1.2%)となっている。
 なお,年度別の推移は第2-3-7表のとおりである。
(4) 有線電気通信設備の最近における利用形態
 最近,電気通信技術の進歩に伴い,有線電気通信においても新しい利用形態,特に住民生活に直接つながりをもつシステムが現われてきている。また,これらのシステムの中には,広範囲な地域にわたって設置する関係から,主たる伝送路として公衆電気通信設備を用い,これと自己の設置する私設有線電気通信設備を接続する例が多くみられる。
ア.監視制御システム
(ア) 自動車総合管制システム
 交通渋滞,自動車公害等都市の交通問題を解決するため,自動車の流れを総合的にコントロールするシステムが,工業技術院により開発されつつあリ,近くパイロットシステムによる実験が予定されている。
 このシステムは,コンピュータを備えた中央処理装置,路上装置及び車載装置の各部により構成され,車載装置から収集したデータを中央装置で処理し,路上装置を介して再び車載装置へフィードバックすることにより,最適進路指示,交通規制,緊急情報等を車内伝達するほか,車載装置を積載しない自動車に対しても路側に設置される可変情報板から情報を提供したり,公共性の強い自動車に対して有利な交通信号制御を行うシステムとなっている。
 このシステムの機器構成は第2-3-8図のとおりである。
(イ) 公害監視システム
 大気汚染,水質汚濁,騒音等の公害防止のため,広地域に設置した測定器からのデータを通信回線で収集する集中監視システムが多く設置されている。
 公害監視システムの一例を示せば,第2-3-9図のとおりである。
(ウ) テレビ視聴率調査システム
 テレビ視聴率の調査を従来の調査員が出向く方式に替え,オンライン方式により自動的に収集するシステムが出現している。
 このシステムは,標本世帯のテレビジョンに,記憶機能をもつ視聴記憶装置を設置し,この装置内に蓄積された視聴情報を集計センターのコンピュータが公衆通信回線を通じて自動的に収集し,データ処理を行うもので,従来の調査員方式に比べ,情報の収集及び処理時間が大幅に短縮されている。
 テレビ視聴率調査システムの一例を示せば第2-3-10図のとおりである。
(エ) 熱供給システム
 最近,建設される団地の中には,資源の有効利用を図る見地から,団地で排出されるゴミの焼却余熱を利用して,団地内に熱供給を行うシステムが出現しているが,このシステムの運用に当たって必要となる熱需給調整打合せ,熱供給設備の計測管理,保安等に関する通信を行う有線電気通信設備が設置されている。
 省資源,生活廃棄物処理の省力化,都市の美化及び都市衛生の向上等の必要性が叫ばれている今日,同種のシステムの普及が予想される。
 熱供給システムの一例を示せば第2-3-11図のとおりである。
(オ) 地震観測システム
 過去多くの大地震の洗礼を受けてきた火山国日本にとって,地震予知技術の実現は国民の悲願となっており,この予知を目指して気象庁により「海底地震常時観測システム」の開発が進められている。
 このシステムは,高信頼性の地震計センサー・津波計センサー及び信号伝送機器などを耐圧容器内に収納した数個の中間点観測装置と1個の先端装置を海底同軸ケーブルで結び,水深約3,000メートルの海底に敷設,これと海岸中継所(測候所)及び地震活動検測センター(オペレーション室)との間で信号の送受信,データ処理を行い地震予知の前進を図ろうとするものである。
 地震観測システムの一例を示せば第2-3-12図のとおりである。
 その他の監視制御(テレメータ・テレコントロ-ル)システムの適用対象例としては,第2-3-13表のようなものがある。
イ.光通信システム
 同軸ケーブルに続く新しいケーブル用伝送媒体として光ファイバを用いるファイバケーブル伝送の研究が活発に行われている。
 光ファイバケーブルによる通信は,[1]極めて低損失,[2]大容量伝送が可能,[3]外部誘導を受けない,[4]軽量である,[5]材料が無尽蔵,等の特徴を有しているため将来の回線需要,線路工事の困難性,経済性,資源問題等を考慮すれば,従来から期待されていた既存の伝送媒体では実現できない超大容量,長距離伝送への適用のみならず,電気通信網のあらゆる分野,すなわち,従来のペアケーブルから同軸ケーブルに至る各種ケーブルにとって替わる可能性を秘めている。
 現在までの研究は,ファイバ心線,ケーブル化技術,接続技術,電気―光変換素子,光―電気変換素子等の基礎的研究に主力が注がれてきたが,最近,各種の伝送システムによる実験段階に至り実用化方式の開発へと着実に歩みを始めている。
 ファイバケーブル伝送方式の一例を示せば第2-3-14図のとおりである。

第2-3-4表 有線電気通信設備の年度別届出件数(年度末現在)

第2-3-5表 有線電気通信設備共同設置の年度別許可件数(年度末現在)

第2-3-6表 年度別有線音楽放送設備数

第2-3-7表 事業別共同設置の許可状況

第2-3-8図 自動車総合管制システムの例

第2-3-9図 公害監視システムの例

第2-3-10図 テレビ視聴率調査システムの例

第2-3-11図 熱供給システムの例

第2-3-12図 海底地震常時観測システムの例

第2-3-13表 テレメータ・テレコントロールの適用対象の例(1)

第2-3-13表 テレメータ・テレコントロールの適用対象の例(2)

第2-3-13表 テレメータ・テレコントロールの適用対象の例(3)

第2-3-14図 ファイバケーブル伝送方式の例
 

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