昭和52年版 通信白書

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2 監理の現状と新たな対応

(1) 宇宙関係無線局の免許等
 人工衛星が軌道上で通信,放送はもとより,気象観測,資源探査,科学観測等の活動を行うためには,電波の利用が不可欠であり,このため,人工衛星上には各業務目的のための無線局を開設し,地上側でもそれらに対応する無線局を開設することが必要である。また,人工衛星を打ち上げるためのロケットの正常な作動のためにも無線局の開設が不可欠である。このような我が国の宇宙関係無線局の免許,監督等は,他の一般無線局と同様電波法に基づいて行われている。
 52年3月末現在における衛星上に開設される無線局数は,東京大学の科学研究分野の衛星関係が9局,郵政省,宇宙開発事業団及び気象庁の実利用分野の衛星関係が6局である。
 宇宙無線通信を行う無線局は,一般の地上系無線局と異なり軌道の要素が加わること,衛星上に開設されていること等の特殊性を有している。したがって,その免許に際しては,衛星の軌道位置は周波数と密接不可分の技術的要素であることから,軌道位置を周波数と同じく監理の対象とすること,回線の特性を衛星通信網として総合的に評価すること,及び電波監理上必要な衛星の機能に関する諸元を申請書に記載させることなど関連規則の改正を行った。しかし,技術的進歩が著しく,広範な宇宙通信の規律については国内法令はもとより国際的にも今後とも多くの点で,整備を行う必要がある。
(2) 周波数及び静止衛星軌道に関する国際調整
 人工衛星に使用できる周波数帯と静止衛星の軌道位置は,物理的に有限であり,近年各国の衛星打上げ計画の増加が著しいことから,それらの調整を行うことが宇宙通信の監理上重要な業務となっている。
 ITUは,1971年宇宙通信のための世界無線通信主管庁会議(WARC-ST)において,国際電気通信条約付属無線通信規則の改正を行い,宇宙通信系の周波数,電力,軌道位置等に関する国際的な調整手続を定めた。それによれば,新たに衛星の打上げを計画した場合は,その国の通信主管庁は,衛星通信系に関する技術諸元の情報をITUの国際周波数登録委員会(IFRB)を通じて各国に事前公表し,干渉問題を未然に解決するために関係国通信主管庁との間で調整を行い,国際的承認が得られてから,周波数割当をIFRBに通告し,国際原簿に登録されることになっている。
 この規定が48年1月1日に発効してから51年度末現在まで第1-2-10表に示すように100の衛星通信網が公表されている。最近,各国から公表されている中には,周波数,軌道について我が国の計画と競合するものが多くなってきており,第1-2-11表に示すように各国とそれぞれ調整を行っている。
 このようなITUの制度による国際調整も,近年各国から多数の衛星打上げ計画が出現し始めたために,現在の調整技術基準では必ずしも効率的な調整が行われない場合が多くなってきた。ITUとしても,CCIRを中心に技術基準の改正の検討が始められており,1979年に開催される一般問題に関する世界無線通信主管庁会議(WARC-G)では,関係規定の改正が議論されると思われる。我が国としても,国際協調を基盤としながら静止衛星軌道を含む我が国の電波権益確保の観点から,この問題に関する対応策の検討を進めているところである。
 放送衛星業務に関しては,1977年1月から2月にかけて開催されたWARC-BSにおいて,同業務に最適の周波数帯である12GHz帯のチャンネル及び静止衛星軌道位置が各国に割り当てられ,我が国は,当初の要求どおり軌道位置東径110度に8チャンネルを獲得した。また,同会議では,テレビジョン方式,混信保護比,受信機及び受信アンテナの特性,送信アンテナの特性,地表面における電力束密度等の技術基準並びに地上業務との共用基準,監理規定等が審議され決定された。

第1-2-10表 衛星の事前公表状況(51年度末現在)

第1-2-11表 我が国の衛星の事前公表―覧表(51年度末現在)
 

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